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第4章:地球での戦い
第67話 4人の決断
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サトルとサクラ、そしてマサノリたちがそれぞれの時間を過ごしていた頃。サトルとともにエヌから日本へ戻ったパーティーメンバーの3人も、それぞれの決断を下していた。
日本では独立して広告代理店を経営し、エヌでは戦士として素質を開花させたマッキーは、当初から考えていた通りに地球での決戦に参加することを決意。すでに政府の担当者にもその旨は伝えてあり、しかも決戦の後にはちゃっかりと政府系の仕事を受注する話まで通していたのだから、さすが商売人といえよう。
「俺を見捨てた同僚も家族も、これまで見下してきた奴らを見返すチャンス。絶対にモノにしてやる」
マッキーは強く決意したのである。
魔法使いとしてサトルたちメンバーを支え、またサトルに密かな想いを寄せていた一時の母エリは、娘との大切な時間を過ごしていた。シングルマザーであることからも、一人娘を思って当初は地球での決戦に参加することを躊躇していた。
しかし、自らが参加することで、地球の平和だけでなく、娘の将来、さらには恒久的に安定した生活環境が確保できるということから、最終的にはこの戦いへの参加を決断。
「確かにリスクはあるけど、成功した時のメリットが半端じゃないわよね。それにサトルもいるし、なんとかなるでしょう。大丈夫。娘のためにも絶対に負けられないわ」
エリの決意は固かった。しかし、娘がサトルから与えられた召喚獣が封印されたアクセサリーの価値には、まだ気付いていない。自らを大きく上回るレベル300の小犬(のような生き物)に関しても、その力にまったく気づいていなかったのである。
3人の中で最後まで迷ったのが僧侶のワカナだろう。昔からおとなしい性格であり、学校でも周囲になじめず浮いた存在であった。そんな自分を成長させたエヌでの時間は、本人にとって得難いものであり、失えば二度と体験できるものではないことを理解している。
だが、この戦いに参加しなければ、エヌで得た経験も能力も、そしてサトル達との思い出もすべてなくなってしまう。その方がワカナにとってはどんな敵よりも怖かった。だから勇気を振り絞って地球での決戦に参加することを選ぶ。
「ソーマジックサーガを始めて、そしてエヌに行って私は変わった。だけど、自分をもっと強くするためにも、この戦いは参加しなくちゃダメだ」
こうしてサトル達4人は、地球での決戦に身を投じることを決断する。それが、それぞれの人生にどんな影響を与えるかはまだわからない。だが、これまでとは異なり、辛く厳しく、そして想像を絶する戦いが待っているだろう。
そして4日が経ち、4人はさらなるレベルを上げるため、エヌに戻って黒き島に渡ることになる。
宇宙の彼方…
地球から遠く離れた、この宇宙のどこかにある惑星エヌ。そのエヌからさらに遠く離れた宇宙の彼方に存在するのが、デュベリスが住む星。当然のことながら、その正確な場所は誰も知ることがなく、彼らの生態も規模も何もわからない。
デュベリスは大きく4つの種類に分けられる。
手足が複数あり、狼のような、あるいは猿のような、さらには鷲のような特徴を持つ魔物。複数の手脚や尾があり、地球上では考えられないような異形の生物だ。これらはデュベリスの中でも末端の兵隊で、知性はほとんどない。レベル換算で10から300と幅広く、先日地球のグランドキャニオンに現れたのもこの魔物たちだ。
さらにそれら兵隊を指揮する立場と思われる部隊長クラスの魔物がおり、これらのレベルは最大で1000ほど。
そして全体を統括する指揮官クラスのデュベリス。かつてマサノリたちが苦戦し多くの仲間を葬った強敵だ。マサノリ達からレベルの上限は見えない。単体でマサノリたちを上回るレベルにあると推測されている。
さらにその指揮官をも統括する王クラスのデュベリスもいるが、これはデュベリスの星におり、マサノリ達はその存在を知らない。
そのデュベリスが彼らの星でどのように誕生し、どのような生活を送っているのか、当然のことながら誰も知る由がない。だが残虐で暴力的であること、他の種族は餌としか認識していないこと、そして上のクラスになればなるほど知性が増すことがわかっている。
さらには上位のレベルにあるデュベリスは特殊な力があり、エヌでいうデイルやスキル、魔法のような能力も見受けられる。それも未知の能力があるやもしれず、かなりの警戒が必要だろう。
もちろんエヌや地球の人たちがこのデュベリスと分かり合えることはない。デュベリスにとって自分たち以外の生物はすべて餌であり、そこに慈悲をかけることはないからだ。
デュベリスがどのような方法で他の星に侵略しているのか、その正確な手法も判明していない。ただし現在までの調査によって、その手法に近いであろう考え方は固まっている。
その根拠となるのは、先日シーナとマサノリがグランドキャニオンでデュベリスを発見した時に発見した魔法陣のようなもの。そしてそこに落ちていた魔力のような残滓を残した隕石の欠片だ。
マサノリたちの推測では、転移魔法陣を施した隕石のようなものを宇宙に飛ばし、落下した星に最下級のデュベリスを転移させ、侵略可能と判断した場合、本体を送り込むというもの。そしてその星のどこかに拠点を置き、そこを橋頭保にその星を攻め滅ぼすという見方である。もちろん推測の域は出ていないが、現時点ではそれがもっとも現実に近いと考えられている。
これまで地球にどれほどの隕石が落下したのか。そしてデュベリスの魔法陣が描かれた隕石はどれほどの数なのか。それをすべて探し出すことは困難だろう。
ゆえにいずれ地球を襲撃するデュベリスをいかにして撃退するのか、それが地球を守る手段なのである。
「黒き島の引率者」へつづく
日本では独立して広告代理店を経営し、エヌでは戦士として素質を開花させたマッキーは、当初から考えていた通りに地球での決戦に参加することを決意。すでに政府の担当者にもその旨は伝えてあり、しかも決戦の後にはちゃっかりと政府系の仕事を受注する話まで通していたのだから、さすが商売人といえよう。
「俺を見捨てた同僚も家族も、これまで見下してきた奴らを見返すチャンス。絶対にモノにしてやる」
マッキーは強く決意したのである。
魔法使いとしてサトルたちメンバーを支え、またサトルに密かな想いを寄せていた一時の母エリは、娘との大切な時間を過ごしていた。シングルマザーであることからも、一人娘を思って当初は地球での決戦に参加することを躊躇していた。
しかし、自らが参加することで、地球の平和だけでなく、娘の将来、さらには恒久的に安定した生活環境が確保できるということから、最終的にはこの戦いへの参加を決断。
「確かにリスクはあるけど、成功した時のメリットが半端じゃないわよね。それにサトルもいるし、なんとかなるでしょう。大丈夫。娘のためにも絶対に負けられないわ」
エリの決意は固かった。しかし、娘がサトルから与えられた召喚獣が封印されたアクセサリーの価値には、まだ気付いていない。自らを大きく上回るレベル300の小犬(のような生き物)に関しても、その力にまったく気づいていなかったのである。
3人の中で最後まで迷ったのが僧侶のワカナだろう。昔からおとなしい性格であり、学校でも周囲になじめず浮いた存在であった。そんな自分を成長させたエヌでの時間は、本人にとって得難いものであり、失えば二度と体験できるものではないことを理解している。
だが、この戦いに参加しなければ、エヌで得た経験も能力も、そしてサトル達との思い出もすべてなくなってしまう。その方がワカナにとってはどんな敵よりも怖かった。だから勇気を振り絞って地球での決戦に参加することを選ぶ。
「ソーマジックサーガを始めて、そしてエヌに行って私は変わった。だけど、自分をもっと強くするためにも、この戦いは参加しなくちゃダメだ」
こうしてサトル達4人は、地球での決戦に身を投じることを決断する。それが、それぞれの人生にどんな影響を与えるかはまだわからない。だが、これまでとは異なり、辛く厳しく、そして想像を絶する戦いが待っているだろう。
そして4日が経ち、4人はさらなるレベルを上げるため、エヌに戻って黒き島に渡ることになる。
宇宙の彼方…
地球から遠く離れた、この宇宙のどこかにある惑星エヌ。そのエヌからさらに遠く離れた宇宙の彼方に存在するのが、デュベリスが住む星。当然のことながら、その正確な場所は誰も知ることがなく、彼らの生態も規模も何もわからない。
デュベリスは大きく4つの種類に分けられる。
手足が複数あり、狼のような、あるいは猿のような、さらには鷲のような特徴を持つ魔物。複数の手脚や尾があり、地球上では考えられないような異形の生物だ。これらはデュベリスの中でも末端の兵隊で、知性はほとんどない。レベル換算で10から300と幅広く、先日地球のグランドキャニオンに現れたのもこの魔物たちだ。
さらにそれら兵隊を指揮する立場と思われる部隊長クラスの魔物がおり、これらのレベルは最大で1000ほど。
そして全体を統括する指揮官クラスのデュベリス。かつてマサノリたちが苦戦し多くの仲間を葬った強敵だ。マサノリ達からレベルの上限は見えない。単体でマサノリたちを上回るレベルにあると推測されている。
さらにその指揮官をも統括する王クラスのデュベリスもいるが、これはデュベリスの星におり、マサノリ達はその存在を知らない。
そのデュベリスが彼らの星でどのように誕生し、どのような生活を送っているのか、当然のことながら誰も知る由がない。だが残虐で暴力的であること、他の種族は餌としか認識していないこと、そして上のクラスになればなるほど知性が増すことがわかっている。
さらには上位のレベルにあるデュベリスは特殊な力があり、エヌでいうデイルやスキル、魔法のような能力も見受けられる。それも未知の能力があるやもしれず、かなりの警戒が必要だろう。
もちろんエヌや地球の人たちがこのデュベリスと分かり合えることはない。デュベリスにとって自分たち以外の生物はすべて餌であり、そこに慈悲をかけることはないからだ。
デュベリスがどのような方法で他の星に侵略しているのか、その正確な手法も判明していない。ただし現在までの調査によって、その手法に近いであろう考え方は固まっている。
その根拠となるのは、先日シーナとマサノリがグランドキャニオンでデュベリスを発見した時に発見した魔法陣のようなもの。そしてそこに落ちていた魔力のような残滓を残した隕石の欠片だ。
マサノリたちの推測では、転移魔法陣を施した隕石のようなものを宇宙に飛ばし、落下した星に最下級のデュベリスを転移させ、侵略可能と判断した場合、本体を送り込むというもの。そしてその星のどこかに拠点を置き、そこを橋頭保にその星を攻め滅ぼすという見方である。もちろん推測の域は出ていないが、現時点ではそれがもっとも現実に近いと考えられている。
これまで地球にどれほどの隕石が落下したのか。そしてデュベリスの魔法陣が描かれた隕石はどれほどの数なのか。それをすべて探し出すことは困難だろう。
ゆえにいずれ地球を襲撃するデュベリスをいかにして撃退するのか、それが地球を守る手段なのである。
「黒き島の引率者」へつづく
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