上 下
28 / 70
第二章:明らかになっていく真実

第27話 罠

しおりを挟む

 サトルたちはイスタ王国からの依頼を達成するため、未知の遺跡を捜索している。そしてある程度進んだときに突然現れた謎の黒い塊。警戒しつつ近づき、その塊が目視できるところまで接近した瞬間!

「これは、魔法陣か!みんな離れ…」

 突如発生した魔法陣が4人を包み込み鮮やかに光ると、その場には誰もいなかった。

 一瞬の間をおいてその空間にマサノリが暗闇から姿を現す。


「うまく引っかかってくれたな。これで5日は稼げるだろう。

まぁ悪く思うな。特別にプレゼントも用意しているからさ。ちゃんと見つけられるかな?」

 マサノリはニヤリを笑うと、転移魔法を使ってその場から消えた。



「みんな大丈夫か?近くにいるか?」

 サトルは声を潜めながら3人に声をかける。が、数秒たっても返事はなかった。

 サトルは冷静さを取り戻し周囲を観察する。薄暗い部屋だが真っ暗ではなく、周囲に魔物やトラップの気配はない。

(俺のミスだな。警戒が足りなかった。どうやら4人別々に転移させられたようだが、ここはどのあたりだろうか)


「ボン。出てこられるか?」

召喚獣のボンがサトルの魔力から飛び出してきた。

“サトルさま。どうやら転移によって遺跡のどこかに飛ばされたようです。ほかの3人と連絡を取りますラ?”

 召喚獣は念話によって離れていても会話ができる。ここでできるかはわからないが、もし可能ならそれは大きい。

「あぁ試してみてくれ」

 サトルの了解を得てボンが他の召喚獣に連絡を取るが、答えはすぐに出た。

“大丈夫のようですラ。3人とも無事で皆様も同じような状況のようです。どうしますラ?”

 サトルの探索では3人は感じられない。つまり少なくとも上下一階層や同じフロアにはいないということ。ただし探索ではこの空間の先に一本の道があり、その先にはぼんやりと明かりが感じられる。

(みんな同じような状況だということは、道も含めた構造が似ている可能性が大きいな。ならばまずはあの明かりの場所まで行くのが得策か)


「よし。3人に伝えてくれ。今いる場所からまっすぐ進むと、一本の道が出てくるはず。その先に明かりがあると思うから、そこに向かってくれと」

“わかりましたラ”

「それと、もしそういう状況でなかった場合、あるいは別の状況になった場合、その場を動かず連絡をくれということと、もし魔物が出たら、お前たち(召喚獣)がしっかり守れと」

“了解でございますラ”

 ボンは他の3体にサトルの説明を伝え、それぞれから了承の返事をもらったと報告する。

「よし、俺たちも行くか」

 サトルはその報告を確認し、先に向かって歩き始めた。



 転移させられてもっとも動揺したのがワカナだ。初めは震えが止まらなかったが、召喚獣のクロミが励まし、サトルからの連絡を聞いて落ち着いた。

 マッキーもエリも同様で、4人はそれぞれ先を目指して歩いている。


 薄暗い中、エリが転移された場所から200mほど歩くと、サトルの説明通り一本の道が現れ、その先にうっすらと明かりが見えた。不気味な状況ではあったが、召喚獣のミーナは恐れもせずその先を目指して歩きだすので、エリも無言で付いていく。

「サトルに伝えてちょうだい。光に向かっていくけど、大丈夫かと」

“了解でございますワ”

 召喚獣のミーナが元気よく答える。この状況を楽しんでいるかのようにも思えるくらいだ。

“サトル様からの返事です。100mぐらいまで近づいたら一度止まってくれと。先に自分で中を確認するようですワ”



 サトルはすでに明かりがある空間まで到達し内部を調査している。その空間はおよそ12畳ほどの広さで、中には扉のようなものが4つある。

 部屋は空調管理がされているのか温度も湿度も快適だが、明かりの正体は高い天井の先にある窓のようなものからの採光に見えた。

 ただその広さは狭く、人や召喚獣が通れる構造ではない。

(扉は、開かないか。ただ扉の先に空間があるのは探索で把握した)

「明かりの中は安全だと伝えてくれ。それからこの部屋の構造も説明し、みんなと同じか確認してくれ」

“わかりましたラ”


 ボンはほかの3体と連絡を取り状況をサトルに説明、やはり他の3か所も同じ状況だった。

(みんなにテントを持たせておいて良かったな。時間も遅いので今日は各自で野宿、明日なんとか扉を開けて、この先を調査しよう)

 サトルはその予定を3人に伝えると、収入からテントを出し食事の準備を始めた。

 その頃、エリもワカナもマッキーもそれぞれ謎の部屋に到着。

「この扉はいかにも怪しいわね。今日は午後から遺跡に入ってるから、外はもう夜ね。この明かりは星明かりみたいなものかしら。とにかく今日は疲れたわ。ここで無理することはないし、今日は寂しいけどミーナと二人だけね」

“たまにはよろしいんじゃないですワ”

「そうね。念のため魔よけの花崗石を使っておくわ」

 エリは一人でいることに不安を隠せないが、疲労がその不安を覆いつくし深い眠りへと追いやった。


 マッキーはすでに持ち込んだ酒でひとり盛り上がっている。

「こういう場所だと4人でいると飲めないからな。今日は一人だし遠慮なく飲めるぜ。ほれ、ラックも飲め」

“いいですなぁ。遠慮なくいただきますヨ”


 しかしワカナだけは震えていた。

「一人は嫌だよ…サトルさん、エリさん…」

 昨晩のトラウマを乗り越えていないこともあり、ワカナは不安を取り除けずにいる。すると召喚獣のクロミにサトルから伝言があると言われた。

“サトル様によると、ここは安全地帯だから安心していいとのことですレ。

大丈夫ですよ。何かあっても私がいますから”

 クロミの言葉を聞いてワカナは元気を取り戻す。

「うん、頑張る…」

 少女のような笑みを浮かべ、クロミを抱きしめながら眠りについた


「遺跡2日目とお宝」へつづく
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす

こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

処理中です...