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第二章:明らかになっていく真実
第27話 罠
しおりを挟むサトルたちはイスタ王国からの依頼を達成するため、未知の遺跡を捜索している。そしてある程度進んだときに突然現れた謎の黒い塊。警戒しつつ近づき、その塊が目視できるところまで接近した瞬間!
「これは、魔法陣か!みんな離れ…」
突如発生した魔法陣が4人を包み込み鮮やかに光ると、その場には誰もいなかった。
一瞬の間をおいてその空間にマサノリが暗闇から姿を現す。
「うまく引っかかってくれたな。これで5日は稼げるだろう。
まぁ悪く思うな。特別にプレゼントも用意しているからさ。ちゃんと見つけられるかな?」
マサノリはニヤリを笑うと、転移魔法を使ってその場から消えた。
「みんな大丈夫か?近くにいるか?」
サトルは声を潜めながら3人に声をかける。が、数秒たっても返事はなかった。
サトルは冷静さを取り戻し周囲を観察する。薄暗い部屋だが真っ暗ではなく、周囲に魔物やトラップの気配はない。
(俺のミスだな。警戒が足りなかった。どうやら4人別々に転移させられたようだが、ここはどのあたりだろうか)
「ボン。出てこられるか?」
召喚獣のボンがサトルの魔力から飛び出してきた。
“サトルさま。どうやら転移によって遺跡のどこかに飛ばされたようです。ほかの3人と連絡を取りますラ?”
召喚獣は念話によって離れていても会話ができる。ここでできるかはわからないが、もし可能ならそれは大きい。
「あぁ試してみてくれ」
サトルの了解を得てボンが他の召喚獣に連絡を取るが、答えはすぐに出た。
“大丈夫のようですラ。3人とも無事で皆様も同じような状況のようです。どうしますラ?”
サトルの探索では3人は感じられない。つまり少なくとも上下一階層や同じフロアにはいないということ。ただし探索ではこの空間の先に一本の道があり、その先にはぼんやりと明かりが感じられる。
(みんな同じような状況だということは、道も含めた構造が似ている可能性が大きいな。ならばまずはあの明かりの場所まで行くのが得策か)
「よし。3人に伝えてくれ。今いる場所からまっすぐ進むと、一本の道が出てくるはず。その先に明かりがあると思うから、そこに向かってくれと」
“わかりましたラ”
「それと、もしそういう状況でなかった場合、あるいは別の状況になった場合、その場を動かず連絡をくれということと、もし魔物が出たら、お前たち(召喚獣)がしっかり守れと」
“了解でございますラ”
ボンは他の3体にサトルの説明を伝え、それぞれから了承の返事をもらったと報告する。
「よし、俺たちも行くか」
サトルはその報告を確認し、先に向かって歩き始めた。
転移させられてもっとも動揺したのがワカナだ。初めは震えが止まらなかったが、召喚獣のクロミが励まし、サトルからの連絡を聞いて落ち着いた。
マッキーもエリも同様で、4人はそれぞれ先を目指して歩いている。
薄暗い中、エリが転移された場所から200mほど歩くと、サトルの説明通り一本の道が現れ、その先にうっすらと明かりが見えた。不気味な状況ではあったが、召喚獣のミーナは恐れもせずその先を目指して歩きだすので、エリも無言で付いていく。
「サトルに伝えてちょうだい。光に向かっていくけど、大丈夫かと」
“了解でございますワ”
召喚獣のミーナが元気よく答える。この状況を楽しんでいるかのようにも思えるくらいだ。
“サトル様からの返事です。100mぐらいまで近づいたら一度止まってくれと。先に自分で中を確認するようですワ”
サトルはすでに明かりがある空間まで到達し内部を調査している。その空間はおよそ12畳ほどの広さで、中には扉のようなものが4つある。
部屋は空調管理がされているのか温度も湿度も快適だが、明かりの正体は高い天井の先にある窓のようなものからの採光に見えた。
ただその広さは狭く、人や召喚獣が通れる構造ではない。
(扉は、開かないか。ただ扉の先に空間があるのは探索で把握した)
「明かりの中は安全だと伝えてくれ。それからこの部屋の構造も説明し、みんなと同じか確認してくれ」
“わかりましたラ”
ボンはほかの3体と連絡を取り状況をサトルに説明、やはり他の3か所も同じ状況だった。
(みんなにテントを持たせておいて良かったな。時間も遅いので今日は各自で野宿、明日なんとか扉を開けて、この先を調査しよう)
サトルはその予定を3人に伝えると、収入からテントを出し食事の準備を始めた。
その頃、エリもワカナもマッキーもそれぞれ謎の部屋に到着。
「この扉はいかにも怪しいわね。今日は午後から遺跡に入ってるから、外はもう夜ね。この明かりは星明かりみたいなものかしら。とにかく今日は疲れたわ。ここで無理することはないし、今日は寂しいけどミーナと二人だけね」
“たまにはよろしいんじゃないですワ”
「そうね。念のため魔よけの花崗石を使っておくわ」
エリは一人でいることに不安を隠せないが、疲労がその不安を覆いつくし深い眠りへと追いやった。
マッキーはすでに持ち込んだ酒でひとり盛り上がっている。
「こういう場所だと4人でいると飲めないからな。今日は一人だし遠慮なく飲めるぜ。ほれ、ラックも飲め」
“いいですなぁ。遠慮なくいただきますヨ”
しかしワカナだけは震えていた。
「一人は嫌だよ…サトルさん、エリさん…」
昨晩のトラウマを乗り越えていないこともあり、ワカナは不安を取り除けずにいる。すると召喚獣のクロミにサトルから伝言があると言われた。
“サトル様によると、ここは安全地帯だから安心していいとのことですレ。
大丈夫ですよ。何かあっても私がいますから”
クロミの言葉を聞いてワカナは元気を取り戻す。
「うん、頑張る…」
少女のような笑みを浮かべ、クロミを抱きしめながら眠りについた
「遺跡2日目とお宝」へつづく
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