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第一章:はじまりの物語
第13話 ミナ
しおりを挟む「本当に倒せたのね」
「うん。大丈夫だ。モンスターは消えたし、アイテムもドロップされている。
見事な連携だったよ。相手の強さが上がっていたのは、4人でこの部屋に入ったからだろう。自分が単独で来た時より、間違いなく強かったと思う」
部屋に来る人数によって相手のレベルが変わるというのは、どういう仕掛けなんだろうか。
サトルは疑問に感じながらも、考えても答えが出ないことに気付いて意識の外に追いやった。それよりも今はドロップしたアイテムの方が気になる。
「まずはドロップアイテムを見てみよう。4つということは、一人一つという意味だろうけど」
アイテムに近づくと、アイテムは4つに分かれそれぞれ布でくるまっていた。
「まずこれは、鑑定で見ると無双の薙刀と出ている。攻撃時のスピードと威力がかなり高い戦士用の武器。これは戦士のマッキー向けだね。
もう一つは赤龍の杖。火系の魔力アップに効果がある魔法使い用の武器なはず。これは魔法使いのエリに。
これは世界樹の杖だね。回復力のアップと維持ができる、なかなかの代物。僧侶のワカナしか使えないものだ。
最後にこれは悠遠の指輪だな。魔法戦士用のアイテムで、魔力増強と魔力贈与が可能になるアイテム。
なんだかんだ言って、ソロで攻略するより質がいいな」
すべてソーマジック・サーガでお馴染みのアイテムだ。ただ、ここまで忠実に再現していることに驚きを隠せない。
疑問に感じながらも、みんなにそれぞれ渡していく。
「私がもらっていいのかしら」
エリが申し訳なさそうに語っているが、自分たちの力だけで倒せなかった自責の念もあるのだろう。
「当然だよ。4人で倒したんだから、それぞれが持つべき。自分もいいものを手に入れたし、これなら下の階層に行ってもかなり楽になる」
そうだ。まだここは10階層、全員がレベル10に達しただけである。目標の100までの道のりはまだまだ長いのだ。
“レベルが10になったのでスキルをチェックするですワ”
魔法使いエリの召喚獣ミーナがひょっこり出てきた。
この召喚獣は必要に応じて出てくるが、戦闘に参加しないときなどは本人の魔力の中に潜んでいるという。だから今回の戦闘には参加していない。
戦闘も多少はできるとあの王女は言っていたが、果たしてどの程度の強さなのか。本人に話をしても、
“必要になったら戦いますかラ”
と流されていて、その力は良くわからない。ただ見た目は癒し系動物だし、武器もなければ魔力もほとんど感じない。あまり期待しない方が得策だろう。
「俺は空断斬撃と身体強化のスキルを覚えた。空断斬撃はいちおう飛び道具だな。身体強化は10分間の制限と魔力の制限がある」
「私は雷撃一閃と幻想空域ね。雷魔法と幻惑魔法といったところかしら」
「私は幻惑解除と空気の壁です。幻惑解除は罠や幻を解除する魔法で、空気の壁は空間を作って魔法や毒から守るものですね」
3人それぞれ無事に新たなスキルを取得したようだ。しかもかなり期待できるもの。この辺りはソーマジック・サーガと同じで、序盤に効果的なスキルを多く獲得できるということか。
10階層とレベルの10の壁。
まずは最初の目標をクリアしたサトルたち。しかし彼らの旅はまだ始まったばかりである。
~~
ある日のマサノリ。
「ミナちゃ~ん、遊びに来たぞ~」
「わ~い!おじちゃんが来た。今日は何して遊ぶ?ミナね、またトカゲさんに乗って空を飛びたいな」
今日は定期的に遊び相手をしている「友人」の娘さんと遊ぶ日だ。
この子のママは仕事で長期出張中ということになっている。ママが不在の間は政府管理の保育所と祖母の家を行き来しているが、たまにマサノリが遊び相手をしているのだ。
「トカゲさんは今日はいないから、そうだ山に行こう。凄い景色のいいところがあるんだ。そこには珍しいウサギもいるみたいだよ」
「そうする~。行こう!早く行こう!」
女の子がマサノリにしがみつくと、マサノリは「転移」とつぶやいた。その瞬間二人は部屋から消え、ほぼ同時刻、日本の裏側にあるロッキー山脈の中腹に立った。
「なんか山の上の方に雪があるね。でも寒くないんだね、ここは。ウサギさんに会いたいな~どこかな~」
この時期のロッキー山脈は10度を下回ることもあり、晴れてはいても肌寒い。しかしTシャツ短パンの二人はそんな環境に影響されず歩き回っている。
(空気防御と身体強化と身体補助と意識結界で大丈夫だな。6歳でも身体強化Sなら動きはオリンピック級になるんだな。ちょっと参考になったよ)
「おじちゃ~ん、ウサギさんじゃなくて、なんか大きなクマさんがいるんだけど」
「あれはグリズリーだね。2mくらいか、大きいな。主かな、この山の。こっちに来るなよ~」
しかしグリズリーにとって6歳の女の子とマサノリは、餌にしか見えなかったのだろう。何のためらいもなく歩み寄ってきた。
しかしマサノリが張った意識結界に触れると、その表情は一変する。ゆっくり後ずさりしながら、一目散に駆け出して行った。
「バイバイしちゃった。どうしたのかな、クマさん」
「用事を思い出したんじゃないかな。それよりも、あっちの方に行こう。きれいな川があって、その先の景色がいいんだ。ウサギさんもそこにいると思うよ」
「は~い」
何事もなかったように二人は歩き出す。
「自衛隊特殊部隊の帰還」へつづく
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