雲の羽衣をキミへ

月夜 雪姫

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現実

うつ伏せ

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 息が苦しくなって目を覚ました。

 どうやらうつ伏せで寝ていたみたいだ。
 あわてて、少し固い枕を顔から離す。
 大きく深呼吸をする。


 最近、仰向けだと目を閉じてもなかなか眠れないときがある。
 なぜか、安心できないのだ。

 動く時計の秒針、

 外で不規則に走る車、

 それら全ての音が、うるさいほどに耳に入ってきてしまう。

 うつ伏せになって枕に顔をうずめる。

 そして初めて、周りをシャットアウトしたような気になる。

 別に耳を塞いだわけでもないのに、暗闇の中に閉じ込められたように何も聞こえなくなる。

 そのまま眠りについて、起きるといつも呼吸が荒くなる。

 そんなことがここ最近で一気に多くなったのだった。




 仰向けになって天井を見上げる。
 少し目を閉じてみる。


 僕は夢を見ていた。
 夢の中には玲那がいた。
 それ以外のことは正直覚えていない。
 ほんと、夢って曖昧だ。


 そんなことを思いながら目をそっと開けて横を見ると、玲那がいた。

「おはよ。」

 玲那は少し怪訝そうな顔をして言った。
 きっと、さっき呼吸が荒くなっていたのを見られたのだろう。
 まぁ、別に大したことじゃない。

「おはよ。」

 僕は何ごともなかったかのようにそう返した。

「春くん、休めた、、、?」

 すると、結城先生がこちらを見て心配でもするように問いかけてきた。

 どうしたのだろう?

 と思いながらも、僕は先生に何も聞かなかった。

「あ、はい。休ませていただきありがとうございました。」

 そう一言言い残して、僕は保健室を出た。

 僕を心配そうな顔で見つめながら手を振る玲那が見えた。



 このとき、僕はまだ自分の身に何が起きていたのかに気付かなかった。
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