8 / 11
第8話 誰
しおりを挟む
出て行ったときちゃんと鍵を閉めたはずなのに、帰るときには開いていてもしや、泥棒が入ったのかもしれないと警戒しても、家の中は荒らされていないし何も取られていない。そんなのが続く。最初は不快だったけどだんだんと慣れていくうちに日常茶飯事となった。
そんなある日、アパートの大家さんから苦情がきた。
「いつも彼氏と遊んでいるようだけど、大学は大丈夫なの? お金は? 仕送りしてもらっているの?」
と。わけのわからないことを言ってきた。わたしには彼氏など持っていなければ、お家に招いたこともない。佐江ちゃんでさえもまだなのに。佐江ちゃんは怖がるから来てくれない。
大家さんはきっと、わたしと誰かを間違えているんだ。きっと。深く考えずに過ごすとまた、お隣さんの若い人からも。
「ほら、こないだ食べたいって言ってたクリームシチュー。作ったわよ。食べて食べて。味には自信があるから!」
「はぁ、ありがとうございます」
受け取ったクリームシチューを食べてみるとうん。美味しい。さすが主婦。料理全然できないから見習わねば。
それよりもわたし、お隣さんにクリームシチュー頼んだ覚えがない。というより、お隣さんとは今日初めて話した。初対面な素振りも見せずにまるで、親しい間柄のように話してかけてきてびっくり。わたし人見知りだから、グイグイこられると遠慮がちになる。その翌朝、またしても。
生ゴミを外に捨てると、大家さんが叫んだ。鬼のような形相で。
「こらこら! 今日は生ゴミの日じゃないよ! 回覧板見たろ⁉」
「え? 見てません」
おずおず答えると大家さんは、はぁ⁉ みたいな顔で睨みつけてきた。大家さんは1回自分の家に戻って再びこちらに戻ってきた。手にはアパート住民のための回覧板が。
これ見てみろ、と言いだけに回覧板を開いてこれ見ましたよ、という印の印鑑が押してある場所に、自分の印鑑が押してあった。
「ほら! 回覧板を見てんじゃないかい、何いってんだい! さっさとそのゴミ戻しな」
大家さんはふん、とふんぞり返って去っていった。わたしは虚無にあてられ呆然としていた。わたし印鑑押していない。そんなの見たことない。
わたしじゃない誰かがわたしだと偽装している。一体誰か。考えてもまとまらないので、ゴミを手に持って部屋に帰宅。
「おかえり」
そこにはもう一人のわたしが立っていた。
そんなある日、アパートの大家さんから苦情がきた。
「いつも彼氏と遊んでいるようだけど、大学は大丈夫なの? お金は? 仕送りしてもらっているの?」
と。わけのわからないことを言ってきた。わたしには彼氏など持っていなければ、お家に招いたこともない。佐江ちゃんでさえもまだなのに。佐江ちゃんは怖がるから来てくれない。
大家さんはきっと、わたしと誰かを間違えているんだ。きっと。深く考えずに過ごすとまた、お隣さんの若い人からも。
「ほら、こないだ食べたいって言ってたクリームシチュー。作ったわよ。食べて食べて。味には自信があるから!」
「はぁ、ありがとうございます」
受け取ったクリームシチューを食べてみるとうん。美味しい。さすが主婦。料理全然できないから見習わねば。
それよりもわたし、お隣さんにクリームシチュー頼んだ覚えがない。というより、お隣さんとは今日初めて話した。初対面な素振りも見せずにまるで、親しい間柄のように話してかけてきてびっくり。わたし人見知りだから、グイグイこられると遠慮がちになる。その翌朝、またしても。
生ゴミを外に捨てると、大家さんが叫んだ。鬼のような形相で。
「こらこら! 今日は生ゴミの日じゃないよ! 回覧板見たろ⁉」
「え? 見てません」
おずおず答えると大家さんは、はぁ⁉ みたいな顔で睨みつけてきた。大家さんは1回自分の家に戻って再びこちらに戻ってきた。手にはアパート住民のための回覧板が。
これ見てみろ、と言いだけに回覧板を開いてこれ見ましたよ、という印の印鑑が押してある場所に、自分の印鑑が押してあった。
「ほら! 回覧板を見てんじゃないかい、何いってんだい! さっさとそのゴミ戻しな」
大家さんはふん、とふんぞり返って去っていった。わたしは虚無にあてられ呆然としていた。わたし印鑑押していない。そんなの見たことない。
わたしじゃない誰かがわたしだと偽装している。一体誰か。考えてもまとまらないので、ゴミを手に持って部屋に帰宅。
「おかえり」
そこにはもう一人のわたしが立っていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
『ゴーゴン(仮題)』
名前も知らない兵士
ホラー
高校卒業後にモデルを目指して上京した私は、芸能事務所が借り上げた1LDKのマンションに居住していた。すでに契約を結び若年で不自由ない住処があるのは恵まれていた。何とか生活が落ち着いて、一年が過ぎた頃だろうか……またアイツがやってきた……
その日、私は頭部にかすかな蠢き(うごめき)を覚えて目を覚ました。
「……やっぱり何か頭の方で動いてる」
モデル業を営む私ことカンダは、頭部に居住する二頭の蛇と生きている。
成長した蛇は私を蝕み、彼らが起きている時、私はどうしようもない衝動に駆られてしまう。
生活に限界を感じ始めた頃、私は同級生と再会する。
同級生の彼は、小学生の時、ソレを見てしまった人だった。
私は今の生活がおびやかされると思い、彼を蛇の餌食にすることに決める。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
朧《おぼろ》怪談【恐怖体験見聞録】
その子四十路
ホラー
しょっちゅう死にかけているせいか、作者はときどき、奇妙な体験をする。
幽霊・妖怪・オカルト・ヒトコワ・不思議な話……
日常に潜む、胸をざわめかせる怪異──
作者の実体験と、体験者から取材した実話をもとに執筆した怪談短編集。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/3/15:『きんこ』の章を追加。2025/3/22の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/14:『かげぼうし』の章を追加。2025/3/21の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/13:『かゆみ』の章を追加。2025/3/20の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/12:『あくむをみるへや』の章を追加。2025/3/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。

終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる