三世町には絶対に住むな!

ハコニワ

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第1話 三世町

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 今年の春、田舎から都会に上京した。上京した理由は、ずっと都会に憧れていたから。そして、都会で一人暮らしをしたかった。
「ここが都会……!」
 電車から降りて、都会のアスファルトを踏んだ。

 同じ空の下なのに、景色が違う。畑や田んぼばかりだった田舎景色と違って、都会はキラキラ輝いていた。

 見上げてみれば、高層ビルばかり。空があんなに遠い。わたしは宇井春 日菜ういはる ひな。今日から都会で一人暮らしです。

 都会から割と離れた場所で、三世町みよまちという場所。大学から近いからここを選んだ。アパートにはもう荷物が届いているはずだ。

「今年から引っ越してきました。宇井春日菜です。よろしくお願いします」
「あら、よろしく」
「よろしく」
「何かあったら、言ってね。同じアパートの住民同士、助け合おう」
 ここのアパートの住民は優しい人たちばかりだ。良かった。知らない土地で一人暮らしは少し不安があったけど、これなら大丈夫だ。

 明日から大学生だ。
 楽しい学生ライフが送れるといいな。

 自分の部屋に戻り、段ボールから荷物をある程度片付けた。ふと、気になったものがある。リビングに一つの絵が飾られている。前の住民が忘れていったのだろう。前の住民はもしかして、有名な画家だったかもしれない。

 鬼ごっこをしている子供たちの絵だ。全体が赤く血塗られているのは、黄昏時を連想させる。

 全体的に赤く塗られた絵を見て、不気味に感じた。部屋の中は私一人なのに、一人じゃない感じがする。周囲から視線を感じる。
「この絵邪魔だな。取ってみよう」
 額縁を傾いた。

 結構大きいから両手で支える。額縁を取って、床面に置いた。これ売ったらどれだけするんだろう。

 もう何年も飾られていたのだろう。額縁を取り除くと、真っ白い壁が目の当たりに。他は黄ばみが出来ているのに、額縁のあとがくっきりついている。

 ふと、真っ白い壁をじっと眺めていると壁に文字がある。

 黒鉛筆で小さく。目を細めてそれを凝視した。


「助けて」と書いてあった。


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