折々再々

ハコニワ

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創造Ⅱ

第18話 大蛇

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 何が起きたのかヤミ自身すらも分からなかった。目の前が真っ黒闇に染まり、体がボロボロとこぼれ落ち、漆黒の海へ身を投げる。ドボンと体が沈んでいく。深くふかく。左右みても真っ暗闇で何があるのかわからない。体が動かない。そのまま沈んでいく。
 大蛇が体中を這い、全てを飲み込んでいく。

 もう何も見えない。
 何も聞こえない。
 何も感じない。

 これから何に成る。


 その日、突如として黒い空が神界や人間界にも覆った。太陽の光は一切届かない。風は冷たく吸ってしまうと肺が壊死して神でさえも死んでしまう。そして地上には大きな黒い蛇が這っていた。
 木々を投げ倒し緑を黒く灰にさせ自然を崩壊していく。逃げ惑う人間を丸呑みし、数分足らずで食べた人間の数はおよそ千にも等しい。

 大地の女神が大蛇を粘土で固めるも効かず、風神雷神が風で押し込んでも雷を落としても効かず、そしてついには太陽神さえも立ち上がる。厚い雲に覆われた空から太陽を垣間見せ、その一筋の光を大蛇に当てるとたちまち、大蛇は宇宙にまで届く絶叫をあげた。
 叫んで、暴れて、その体が徐々に小さくなっていく。地球の半分を覆うほど巨大な体の大蛇から姿を見せたのは、プスプスと焼けたナニかだった。

 やがてそれは、ヤミだと分かった。
 ヤミの体は半分透けていてプスプスと煙のように散っていた。何者かも分からないほど。自然が崩壊され人間もいなくなり、ヤミには裁きが下された。

 鏡の女神により、特製の鏡に閉じ込めその姿を然りと映した。鏡の中でもその姿は透けていて、体がプスプスと燃えて灰になっていた。
「これは大事ですぞ! 直ちにこの者を処せよ!」
 時空の男神が怒鳴った。
「お待ちください。まず何がいけなかったのか検討しないといけません」
 大地の女神が荒ぶる神々を静止した。
「そもそもまず最初とは、何処から最初なのでしょう?」
 血の神が疑問符を投げかけた。大きな水溜まりに大きな岩が落ちてきてたかのように、その衝撃は大きく波紋が広がった。神々でさえも「最初は?」と問われたらその最初が分からなかった。

 あれだろう、これだろう、とそれぞれの意見を言い合うがどれもピンと来ない。主神たちが束ねてみても、食い違いが生じる。これでは一体どうするのやら。「最初」というものは〝物事の始まりや誕生〟ではなく〝全ては宇宙が創造した瞬間〟だとまとめられた。
 そうなると全ての始まりであるその発端は、全てのものとは――ソレから始まった。しかし、誰もソレを責めるきはない。全ての宇宙の創造主であるアレを責める神などいるものか。

 話は戻った。敢えて「最初」というのを考えない。ここは〝物事の始まり〟を考えよう。人間が戦争をしたせいで神々は滅ぼした。これが一回目。再び戦争をしたせいで滅びの一歩手前。そして大蛇が人間を飲み干し自然を崩壊させた。事の発端はまず一回目である、太陽神が岩に隠れて世界が闇に飲まれたせい。
 しかし、その責任はもう取った。太陽神の一部をもぎ取ってね。

 ヤミがどうしてこうなったのかヒカリでさえも分からない。
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