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五章 侵略者と戦争 

第63話 戦争

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 一樹たちの宇宙船が上空に飛び、見えなくなるまでコスモはずっと見続けた。べスリジアの軍隊がもうそこまで近づいてきている。
 大砲やら槍やらが空から飛んでくる。地面に落ちると、真っ赤な砂が水しぶきのように舞った。


「コスモ、準備はいい?」
 背後からスターが話しかけてきた。軍隊の怒声が響きわたってて、スターの明るい声がかき消される。


 コスモは黙って首を頷いた。スターの手には弓矢を持っていた。湾曲に描いた弓が背丈と見合わない。十数本の矢を背中の籠に入れている。 
「これね、武器がほしい、てダスクに言ったら召喚してくれたの。すごいでしょ」
 まるで自分の事のように喜ぶ。戦争が始まっているというのに、生き生きとした表情。大砲やら槍が飛んできても、バリアを貼っているので当たらない。地面に落ちては、大きな砂埃が舞う。


 一樹たちが乗った宇宙船が帰ってくれば、ガーディアン機関も帰るつもりだ。戦争に勃発するなら、ガーディアン機関がここにいる必要はない。むしろ、地球にいる宇宙人たちが暴れ回るのが危険だ。


 宇宙船が帰ってくるまで、ガーディアン機関たちと連携してべスリジアの勢力を減らす。戦争の鐘が鳴り、周囲はもう荒れていた。自分たちの星の土地なのに容赦ない。


 迫ってくる軍隊に、スターは矢を放った。放った矢が軍隊の真ん中に刺さり、列が少しだけ乱れた。すぐに倍返しが飛んできた。様々な方角から爆弾のついた矢が飛んできた。 


 地面に落ちる前に爆発して、花火のように光り輝き、バチバチと炎の飛沫が数mまで吹っ飛んでく。


「きゃあ!」
 目の前でまばゆい閃光が放ち、とてつもない爆風が襲う。焼かれるように熱くて、肌がピリピリする。
「コメット!」
「目がっ……!」 
 目を抑えるコメットのそばに、ソレイユが寄る。爆弾が飛んできたとき、近くにいたソレイユの目を庇うように前に出て。
「ソレイユは、目、大丈夫?」
「自分のことは庇わなくていいのに!」
「そんなこと……」  
 コメットは、顔をあげた。幸い、火傷はしていない。

 怪我を負っても、それでも激化する。


 コスモたちがどんなにバリアを貼っても、突き抜ける爆弾を飛ばしてくる。
「そういえば、非科学的なもの作っている、て噂があったの本当だったのね」
 ダスクがタブレットから何個も手榴弾をボトボト落として、軍隊の中に放り投げる。
 

 攻撃しても倒しても湧いてくる。最初見たときと、今じゃ、人数が多くなっていると感じるのは気のせいか。


 コスモたちが向かっているのは、べスリジア星の北。都がある場所だ。唯一の宇宙船を飛行しながら、進んでいる。宇宙船の中は怪我をしたコメットが休んでいる。
「千枝ちゃんは大丈夫なの?」
「自分なら問題ない。あと千枝ちゃんと呼ぶな」
 ソレイユの力は目が武器だ。その目を守ってくれたコメットのため、再び戦場に戻る。その背中には、コスモがついた。


 戦場に戻ると、相変わらず槍や大砲が飛んできて空気中に砂が混じって、風が吹くと肌がチクチク痛い。


 前線で戦っている白夜と千斗とウォーターの所に向かう。二千万の軍隊に対して、三人だけで保っている。その時間も、そう長く保たない。
「自分の力で敵を無力化する!」
 前線に向かい、ソレイユの目がカッと見開いた。それと同時に、赤い大地がいきなり盛り上がった。


 押し寄せた軍隊が突然大地に飲み込まれ、遠くのほうに巻き込まれていく。大地がまるで、波のようだった。動かしたのはコスモ。
「邪魔くさい。面倒だから、まとめて消す!」
 コスモの両手がゆっくり胸の前まで上がる。それと同じように大地が波のように大きく立つ。  


 大きく立ち上がり、壁のように。
 胸の前まであげた腕を次第にパーにして、広げた。途端、壁の砂が押し寄せて軍隊たちを後退させていく。


 前線にいたソレイユたちが呆気にとらわれる。すぐに状況を判断した白夜は、影を使ってまだ前線にいる敵部隊の動きを封じる。
「動きを封じた。敵の気力が失いかけている今、都に行ける! さぁ、行け!」
 ソレイユとコスモは前線から退き、宇宙船に乗る。前線に残ったのは、千斗とウォーター。
「なんで行かなかったのかな?」
「友を置き去りに行くわけないだろう」
 千斗が普段見せない真面目な表情で言ったのを聞いて、白夜はほくそ笑む。
「ふっ、千斗らしい。ウォーター、君は行ったほうがいい。最前線で戦える君があの子たちのそばにいないと」
「お言葉ですが、あんな生ぬるい連中と一緒にいたくありません。それに、生ぬるい連中は生ぬるい連中同士背中でも守れるでしょう」
 ウォーターの冷たく言った言葉を聞いて、白夜も千斗も目を白黒させる。白夜はふっと笑った。
「良かった。僕と千斗でもこの数切り抜けられない。君が残って良かったよ。これが本音さ」
 余裕そうに見えた顔にツゥと大粒の汗が滴り落ちる。そろそろ影を操るのにも時間がきて、立っていて封じているだけで、全身が汗だく。


 動きを封じた敵の中に、千斗とウォーターが駆け抜ける。血しぶきが飛び、もはや誰の血なのか分からない。真っ赤な地面が爆弾によりボコボコになり、それに加わり、砂が盛っている場所まで行くと、砂があるせいで足が重くて動けない。



 一方最前線を退き、コスモたちは都へと向かっている。スピードアップを何回も繰り返している。都までそんな遠くない。けど、見慣れすぎた赤い大地が周りにありすぎて、方向感覚が失う。  
「まだなの!?」
「スピードアップを繰り返して、この船もダウンしている」
 ダスクが大きな舌打ちをする。
 外は激しい爆発音と閃光暗が。軍隊よりも恐ろしい戦車を使って、襲ってきた。


 宇宙船のように宙に浮いている。戦車から顔を出して、バズーカ砲を乱射。スターが天井に登って、弓で戦車に乗っている星人を仕留める。でも次から次へと戦車が湧いてきて、ついにこっちまで迫ってきた。矢では戦車に敵わない。

 
 コスモが再び地面を浮かせようとするも、浮いているのでそもそも無駄。地面を使って攻撃しても、戦車から水が出てきて地面をぬかるみさせる。


 これじゃあ、近づいてくるのをじわじわと恐怖に怯えるしか。その時、鋭い刃が戦車を真っ二つに斬った。
 コメットのしなやかな剣だ。
「どうやら、私の出番ね」
 休んでいたコメットが天井に立っていて、怪しげにくすりと笑った。
「乳女、まだ寝てたほうがいいんじゃない?」
「貧乳ちゃん。役立たずは帰って無駄よ」
「あん?」
 スターとコメットがバチバチと火花を散らしている中、大砲が飛んできた。二人のど真ん中に。コメットがそれを真っ二つに斬る。


 鞭のように長くて生きているかのように動くそれは、もはや、コメットの一部と同じだ。


 コメットが戦車を真っ二つに斬り続けていく。それでもその攻撃を躱し、近づいてくる輩がいる。戦車からこの宇宙船まで飛んでくる軍人も。
「きゃああああ! 襲われちゃう! ぐちゃぐちゃに犯されちゃう!」
 軍人に足を捕まれ、スターはずるずる引っ張られる。コスモがすかさず、掴まれている腕と、首を吹っ飛ばせた。軍人はゴロゴロと地面に転がっていく。
「犯されなかった……」
「なんでテンション低めなの?」
 助けたと思ったのに、コスモが肩をがっくりさせた。


 ダスクがべスリジア星人しか行けない都に不法アクセスした。都は厳重に警備、監視がついていて顔認証、指認証、血液認証までついてある。それをすべて全うしないと、都には一歩も踏み入れない。


 顔認証も指認証も血液認証も全て違うので、厳重警備している塔の情報を全てオフにし、ダウンさせた。
「ふふん。このあたしとサイバーテロ競争するって? いい度胸じゃない」
 ダスクは妖艶に笑い、パソコンのキーを高速で押しながら、べスリジアの情報をロックオンしていく。


 キーボードを弾く指先は、高速で指が見えない。べスリジアの情報は全てこちら側に。べスリジアからもサイバー攻撃してくるが、ダスクは指先一つでそれを躱していく。ふふふと笑いながら。もはや狂気の様。 

 
 やがて戦車全てを斬り通し、残ったのはすん、と香る焦げ臭さと砂埃。赤い雲が辺りを覆う。やがて、風が吹くと掻き消えていく。消えたとき、ついに顔を出したのはべスリジアの都の大きな門。


 厳重な警備も監視も外れ、コスモたちはゲートを通れる。案の定、コスモたちが来るとゲートが一人でに開き迎え入れてくれる。


 都に行って、もう一度王と交渉する。戦争の鐘は鳴った。でもまだ引き戻せるはずだ。交渉をしないと、狙うのはコスモたちの惑星ではなく地球。


 ゲートを難なく入ったコスモたちは安堵。しかし、ゲートを通る直前、ゲートの前に一人の男が立ちはだかった。華奢で体の線が細かったから、最初女の子かと思われたが、近づくにつれてそれが、男性だと気づく。


 眉間にシワを寄せためちゃくちゃ不機嫌な、男性。
 
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