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三章 侵略者とガーディアン

第38話 スターとコメット

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 コスモたちと別れて、スターはコメットといた。女子中学生とは思えない体格。特にセーラー服を破けそうなたわわなおっぱい。ちらりと見える湾曲のくびれ、突き出たお尻。
 スターはその体格を見てから、ずっとイライラしていた。女として体格に恵まれているから。
「そのおっぱいで中学生は詐欺しているでしょ!」
 手をワキワキとし、グイグイと詰め寄る。コメットは腕でおっぱいを隠した。
「どこ見てんの!」
「ぶべっ」 
 何かが飛んできて「あ」と避ける前に鋭い痛みがかけめぐった。顔面が熱油を浴びたように熱い。首から額まで皮が剥がれていた。
 反応できなかった。気づいたときには食らっていた。恐る恐る振り向くと、コメットの手には長い剣を持っていた。

 リボンのようにヒラヒラしていて、ほんとにあんなので斬ったのか分からないほどの薄さ。
「油断していると、その卑猥な頭ごと斬られるわよ」
 コメットがクスリと笑った。
 余裕の笑み。
 スターの顔面の皮はすぐに回復し、パズルみたいに繋ぎ合わせる。回復はしたけれど痛みがまだ残っている。痛みはすぐに消えてくれない。体がじんじん残っている。
「やってくれたわね。牛女」 
 スターは再び立ち上がると、鞭のように刃が飛んできた。今度は目で追える速さ。
 シュ、と飛んでくる刃を避けて少しずつ近付いていく。が、どう攻撃すれば当たるかを計算づくしているコメットからすれば、考え通りに動くスターは、ずっと刃に当たっている。

 コメットは勝利の笑みを絶やさなかった。目の前の相手は、鋭い刃に貫かれ続けているのだから。勝ったも同然。
 この刃は見た目薄いが、どんな物でも分厚いものでも簡単に斬れる。それに、しなやかに動くので、何処に振ってくるか分からない。
 近付いてくるスターの顔や手、足にはピッと線が入る。何度もそこにあたれば、肉が抉りとられる。

 コメットの一mの範囲内に入った。スターはずっと俯いて歩み寄っていたため、どんな表情か分からなかった。でも、範囲内に入った途端に顔を上げ誇らしげに笑った。
「コスモほどじゃないけど、わたしでもやれるのよ!」
 コメットの背後にあった大岩が地面から抜き出し、気づいたときには頭上にあった。鞭のように刃を振り回したが、とき既に遅し。

 スターが浮遊を解除すると大岩は、反応できないスピードで落ちてきた。

 ドォン、と雷鳴が落ちたきたかのような音が響き渡る。土埃が舞う。パサパサと小さな砂が顔面に当たってくるのをバリアで塞いだ。

 風が吹き、だんだん土埃が消えていく。土埃の中、大きな岩だけが認識できる。やがて、薄っすらだったシルエットが本物になっていく。
 大きな岩が真っ二つになっていた。真っ二つになった隙間に遠くの景色が見えている。コメットの姿はない。押し潰されて下敷きになっているのかと思いきや、何処にもいない。

 生命体の反応はある。
 まだ近くにいて、耳をすませば、鼓動がはっきりと聞こえた。人間の通常時の心拍数より速い。けどちゃんと生きている。何処かに隠れている。
 〈探索〉に長けたスターにとって何処隠れているのかすぐに分かった。触角を左右に振ると、右方向から風が流れた。
「そこっ!」
 地面にある小さな小石を浮かせて投げた。遠くのほうできゃ、と小さな悲鳴が。辺りが薄暗くなっているので、姿は見えない。けど確実にいるのは分かっている。 
 傷の回復はできた。
 けど、あの大きな岩を持ち上げるためにエネルギーを使いすぎた。あのとき、近付いたのは岩を持ち上げるために少しでも念を放出したかった。コスモなら、あれくらい余裕なのに。

 今は小さな小石だけで充分だ。

 暗闇の中から不気味な笑い声が。薄気味悪くて、頭の中に妙にまとわりついて離れない声。コメットは頬に小さな傷があるだけで、ほぼ無傷だった。スターの必死な力を使ったものを軽症で済ませた。
「どうやらエネルギーを使いすぎたようねん。んふふ。それじゃあ、次はわたしのターンね」
 コメットがニヤリと笑うと、あんな遠くにいるのに刃が飛んできた。刃の先端が両目の眼球をピッを斬った。
 目の回復は他の部位より遅い。そのことを気づいている。

 眼球がぽろりと出てきそうなのを慌てて抑えた。さっきから乳女のほうが優勢だ。圧されている。なんとかしないと。回復にも限界がある。
 すると、足元で動物の鳴き声が聞こえた。「キュキュ」と甲高い声。荒野で相手の殺気しか感じないこの空気の中で、動物の声は異様だ。
 驚いて足元を見ると、そこにいたのはハムスター。いつぞやの我が宇宙人の配下になったハムスターだ。

 あの日通ったペットショップ以来。
 ハムスターは甲高い声で「キュキュ」と鳴いた。まるで、僕も戦うよと言っているような。
「あんた……」
 ハムスターはキュキュと鳴いて、嬉しそうにスターの回りを一周した。
「わたしと一緒に戦って、くれるの?」
「キュキュキュ!」
 ハムスターに腕を伸ばすとハムスターは、手の中にトン、と飛んだ。片方の目は薄っすらぼやけている。もう一方は眼球が溢れて出てきそう。

 視力が回復するのは遅い。でも、一人じゃない。ハムスターもいる。
「いい? ハム、あいつの隙をみてあいつの懐に入りなさい。その後はわたしがやるから」
 ハムスターの命名、ハム。ハムは凛々しい表情で「キュ」と返事する。

 一方でコメットのほうは、暗闇に逃げ込んでいた。余裕綽々の表情はどこへやら。青白い顔して逃げている。
「何処に行くのかしら」
 スターはコメットの前に立ちはだかる。目は見えずとも得意の〈探索〉で位置がわかる。コメットはスターの肩に乗せたハムを見て、ひっと小さな悲鳴を漏らす。
「べ、別に、逃げてなんかない。ただ、動物は少し、怖くて……」
「はは~ん。さては動物苦手ね?」
 思わぬところでコメットの弱点を知り、スターはニタニタ笑う。かぁと赤くするコメット。余裕綽々としていた分、初めてみる表情だ。コメットはジリジリ逃げた。     

 相手に弱点を知られて、冷たい汗がツウと流れる。スターはニヤリと笑い、
「さぁ今よ、ハム! 飛びかかりなさい!」
 スターが合図を送ると、ハムは大ジャンプしてコメットに飛びかかった。コメットから、今まで聞いたことのない悲鳴が。

 ハムに驚いて地面に倒れた。その隙にコメットの服の中に入り込む。
「ぎゃああああ!! 服服の中に毛むくじゃらがああああああ!!」
 足をばたつかせ、転げまわった。服の中に入ったハムを取ろうと、手探りで探すも、ハムは服の中で縦横無尽に駆け回っているので捕まえられない。
 暴れ回るコメットを見て、スターはたわわなおっぱいを凝視した。動くたびにタプンタプンに揺れる。しかも、腰をひねっているので、態勢的にエロい。
 何もやっていないのに、何故か顔を赤らめる。
「さぁ観念なさい!」 
 そう言うと、コメットに睨まれた。目に涙をため潤っていたけど、まだ力強い。全然屈していない。
「誰がっ……ここで勝たないと、ガーディアンの面子が崩れるでしょう。わたしたちは勝たないと。あの人たちより優れているて言われたいの」
 コメットがあの人たち、と誰かを指した。あの人たちとは、旧ガーディアンたちのことだ。スターは、ハムに合図を送るとハムは服の中からひょっこり出てきた。

 ぴょん、と肩にのる。解放されたコメットは荒れた息遣いで地面に横になっている。
「わたしは、あんたたちのこと知らないけど、あんたと戦ってアポロたちより強いのは分かったよ。だからそんな、必死にならなくても良くない?」
 スターがすっと手を差し伸ばした。優しく。
 コメットはその手をじっと見る。濡れた目で見上げてくる。
 
 すると、大きな爆発音が聞こえその直後、大地が大きく揺れた。コスモのいる場所からだ。土煙がこっちまで飛んできた。

 バリアを張って、吹き飛ばされずに済んだ。が、あの牛女がいない。あの風に便乗して雲隠れしたか、吹き飛ばされたか。生命体の反応はある。近くに。鼓動は通常。

 何処かに隠れているのが高い。
 隠れんぼに敵うわけないでしょ。触角をピクピク動かせばやつの居場所をすぐに突き止めた。
「こんの牛女!!」 
 コメットはすぐ近くにいて、まだ震える体を起こして立っている。コメットのたわわなおっぱいを鷲掴みにした。指の隙間から溢れ出る大きさ。
「きゃあ!」
「一体何人の男に揉まれたらこんなになるのかしら。さぁ、降参なさい」
 にっと笑う。コメットは、きっと睨んだ。
「さっきから……牛女とか、わたしの名前はコメット! いい加減覚えてこの、この、単細胞!」
 スターの手を振り払って、剣を持っている腕を高く上げた。鞭のように刃が飛んでくる。範囲内に近付きすぎた。

 スターは後ろに後退するも、刃が顔面やら足首に飛んできて、また負傷する。圧していると思ったのに、また形勢逆転された。

 負傷したところは深く抉られて、回復のダメージがでかい。服の中から「キュキュ」と鳴き声が。まるで僕に任せて、と言っているような。
 ハムは内ポケットから凛々しい表情で見つめていた。
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