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毒を喰らわば貴方まで
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私は知ってる。貴方が人を殺めたことを知っている。それがどんな理由なのかも知っている。
そんな貴方を知っている上で、私は貴方を愛している。
「じゃあ、仕事にいってくるね」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
「大好きだよ」
「ああ、俺も大好きだよ」
愛を確かめる度に貴方の罪が色濃く感じてしまう。そんな貴方を無条件に今日も私は愛してる。これは罪になるのだろうか。
どうして人を殺めたらダメなのか?を時々、考えてしまう自分がいる。法律がある限り、あの人は罪を犯しているのだ。ただ一時的に彼は一般人なだけで、捕まれば罪人。
どうして人を殺めたら手が汚れるのか?を時々、考えてしまう自分がいる。彼の手は優しく温かい。私はそんな彼の手を自分から握り締めてしまう程に愛おしい。しかし、世間では穢れているのだろう。
「俺と結婚して下さい」
「はい、喜んで」
この時から、私は知ってる。私の左手を持ち、結婚指輪を薬指に着けてくれた。人を殺めたその手で、薬指に着けてくれた。何度も血を浴びたその手で、薬指に着けてくれた。
左手の薬指は心臓とつながる大切な血管と考えられる。心の臓を…愛の静脈を彼はその手で触れたのだ。
「君の人生を必ず幸せにする」
人の人生を殺めた彼の口から、その言葉は言われた。私は私だから、彼は幸せにしてくれるのだろう。私の人生の為に後何人が犠牲になるのだろう。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「君はどこまで知っているかな?」
私にカバンを預けて、一緒にリビングへ歩きながら問いかける。目も合わず、私より前を歩いて、彼は問いかける。
「なんのこと?」
「そうか」
立ち止まって、彼は振り向いた。私の肩を抱いて、唇を奪う。舌が絡み合う中で、小さな固形物を飲み込まされた。唇をゆっくり離して彼は言う。
「君が幸せのまま終わる為だ」
「こんな事になくても…私はそれでも貴方を愛してた」
何か小さなカプセルが、私の喉を通った。力が抜けて崩れ落ちる私を彼は抱き締めた。私の頭は彼の手で優しく撫でられ、髪は彼の指間を通る。頬に彼の涙が落ちる。
彼は彼自身が生み出した毒で、ずっと苦しんでいたのだろう。そして、私もこれから彼の毒として生きるのだ。嗚呼、なんて幸せなことか。
そんな貴方を知っている上で、私は貴方を愛している。
「じゃあ、仕事にいってくるね」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
「大好きだよ」
「ああ、俺も大好きだよ」
愛を確かめる度に貴方の罪が色濃く感じてしまう。そんな貴方を無条件に今日も私は愛してる。これは罪になるのだろうか。
どうして人を殺めたらダメなのか?を時々、考えてしまう自分がいる。法律がある限り、あの人は罪を犯しているのだ。ただ一時的に彼は一般人なだけで、捕まれば罪人。
どうして人を殺めたら手が汚れるのか?を時々、考えてしまう自分がいる。彼の手は優しく温かい。私はそんな彼の手を自分から握り締めてしまう程に愛おしい。しかし、世間では穢れているのだろう。
「俺と結婚して下さい」
「はい、喜んで」
この時から、私は知ってる。私の左手を持ち、結婚指輪を薬指に着けてくれた。人を殺めたその手で、薬指に着けてくれた。何度も血を浴びたその手で、薬指に着けてくれた。
左手の薬指は心臓とつながる大切な血管と考えられる。心の臓を…愛の静脈を彼はその手で触れたのだ。
「君の人生を必ず幸せにする」
人の人生を殺めた彼の口から、その言葉は言われた。私は私だから、彼は幸せにしてくれるのだろう。私の人生の為に後何人が犠牲になるのだろう。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「君はどこまで知っているかな?」
私にカバンを預けて、一緒にリビングへ歩きながら問いかける。目も合わず、私より前を歩いて、彼は問いかける。
「なんのこと?」
「そうか」
立ち止まって、彼は振り向いた。私の肩を抱いて、唇を奪う。舌が絡み合う中で、小さな固形物を飲み込まされた。唇をゆっくり離して彼は言う。
「君が幸せのまま終わる為だ」
「こんな事になくても…私はそれでも貴方を愛してた」
何か小さなカプセルが、私の喉を通った。力が抜けて崩れ落ちる私を彼は抱き締めた。私の頭は彼の手で優しく撫でられ、髪は彼の指間を通る。頬に彼の涙が落ちる。
彼は彼自身が生み出した毒で、ずっと苦しんでいたのだろう。そして、私もこれから彼の毒として生きるのだ。嗚呼、なんて幸せなことか。
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