短き者達

雨彩 色時

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一刀多魂

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 目の前にあるモノは戦友達を奪った。私達の誇りを踏みにじった。歴史は大きく変わる。それを間近に見た私だけでも変わらない決意をした。

「未だにそんなモン腰にぶら下げてるのか?」
「そのオモチャとこの刀、試しても構わんよ」


 この刀に対する悪態だけは許せない。私達はそのオモチャに居場所も命も奪われた。それを斬らずして私達の先は無いだろう。最初は私以外にもこの意思を強く持つ者たちが多くいたのだ。


_______________________
_________
_



 刀を私の目の前で納める者。刀を振って死ぬ者。刀で自害する者。同じ意思を持つ者達は私に託す様に目の前から去って行く。

「家族が出来たんだ。すまない」
「なぁ、俺達は間違えちゃいないよな? 俺が死んでもお前は否定しないでくれ」


 その言葉達は私の意思をより強くする。

「自分の技に自惚れて死んでいった奴は沢山見たぜ?」
「私もこの刀で斬られる者は沢山見てきたよ」


 銃口を私に向けて、余裕の口振りでそう言った。彼の銃はたったの五発だ。撃ち終わったら、逃げるか装填しないといけない。

「一発で当てろよ? じゃないと斬り捨てるぞ」
「一発で楽になりたいなら、ちゃんとジッとしてろよ?」


 彼は撃つ。火薬の匂いは慣れない。この煙が消えると同時に同志の命も消えたからだ。だが、私は消えない。彼らの命が教えてくれたからである。

「おいおいおいおい。マジかよ。弾を斬るとかありえないよな普通!? 面白いよアンタ。もう一回、見せてくれないか?」
「ちゃんと間合いを読みながら、撃ってくるな。斬り損ねるなんて初めてだ」


 殺気なんてものは飾りに過ぎない。内側のもっと奥底にあるモノに比べれば可愛いものだ。お互い死ぬことなんて二の次である。相手を殺すことが最優先。

「ほら、アンタの間合いに入ったぞ? ここなら俺を斬れるか?」
「近寄るな。火薬の匂いは嫌いなんだ」
「俺も鉄を振り回す奴が大嫌いなんだ」


 刀は服だけ触れて斬り裂く。銃弾は足に当たる。では、ダメなのだ。彼らの言葉を私は命に刻んでいるのだ。私が死ねば彼らも死ぬも同義である。

「楽しかったぜ。じゃーな」


 私は撃たれた右足を大きく前に出して斬り込んだ。彼の指よりも速く。そう言い終えた彼の血が私を染める。彼らの言葉を私はまた生かすことが出来た。そして、この誇りに私はあと何度血を付ければいいのか……私には分からない。

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