29 / 57
弱さの先
しおりを挟む
俺は目の前の人に敵わない。自画自賛だけど勝てる自信があった。だが、実体験して自信を失う。最初は侮ったせいと思って次は構えた。本気で構えた。そのつもりだった。
「強くないな」
「もう一戦…お願いします」
「無理だ。これ以上やっても意味がない」
意固地になっていた。自身のプライドを最小限に抑える為に次は勝つ気で挑む。何戦しても彼には勝てない。それがとてつもなく敗北感として自分にのしかかる。自惚れていたのだろう。
「クソッ! 何で…何で勝てないんだ」
「ここが戦場ならお前は死んでるぞ。悩む暇なんて無い。さっさと立て」
容赦が無い言葉だった。真実だからこそ、俺は歯を噛みしめながら立つ。頭が整理出来てないから動きが後手に回る。そんな隙をまた彼につけ込まれる。絶対的な力を思い知った。彼と俺では比べる事すら、間違っていたのだ。
「早く立て」
「もう分かりましたよ…。俺はアンタに勝てない。降参です」
俺は立ち上がってもないのに顔面を殴られる。手酷い扱いにさすがの俺も彼を睨みつけた。そんな彼は真顔で俺の目を見返す。
「私は降参しろとは命令していない。早く立てと言ったはずだ。命令を無視するな」
どうやら弱者を嬲る事が彼の楽しみか。俺はこんな奴に負けない為に強くなったはずだ。でも、完膚なきまで負けている。もう自分自身の限界を感じていた。本当に彼は気に食わない奴だ。俺は何度も立ち上がった。彼の命令通り何度も。
「強いな」
「はっ? …よくもまぁ、こんなに嬲ってそんな事が言えた」
「戦闘技術を言ってる訳じゃ無い。心の強さだ。普通の奴なら、もう立ってない。負けると分かって何故立つ?」
「お前が大嫌いだからだよ」
俺は口に血が溜まっていた。随分と威勢を張ったと思う。彼は手加減をして、俺が立ち上がる力を残しながら戦ったんだ。どんな理由であれ、それでも俺がまだ彼の目の前に立っている事には変わりない。お情けだろうとお遊びだろうとだ。
「大嫌いか。そうか。そんな奴はやっぱり倒したいか?」
「ああ、倒したいね。何年、何十年、生涯かけてもいい」
「その為には他の奴も倒さないといけない。私が君の目の前にいるのは本来なら有り得ないのだから」
彼はしゃがんで俺の視線に合わせて言う。俺はギリギリの力を振り絞ろうと立ち上がる。やっと彼を見下ろせた。
「次に会うのが楽しみだ」
彼は見上げて笑う。
「強くないな」
「もう一戦…お願いします」
「無理だ。これ以上やっても意味がない」
意固地になっていた。自身のプライドを最小限に抑える為に次は勝つ気で挑む。何戦しても彼には勝てない。それがとてつもなく敗北感として自分にのしかかる。自惚れていたのだろう。
「クソッ! 何で…何で勝てないんだ」
「ここが戦場ならお前は死んでるぞ。悩む暇なんて無い。さっさと立て」
容赦が無い言葉だった。真実だからこそ、俺は歯を噛みしめながら立つ。頭が整理出来てないから動きが後手に回る。そんな隙をまた彼につけ込まれる。絶対的な力を思い知った。彼と俺では比べる事すら、間違っていたのだ。
「早く立て」
「もう分かりましたよ…。俺はアンタに勝てない。降参です」
俺は立ち上がってもないのに顔面を殴られる。手酷い扱いにさすがの俺も彼を睨みつけた。そんな彼は真顔で俺の目を見返す。
「私は降参しろとは命令していない。早く立てと言ったはずだ。命令を無視するな」
どうやら弱者を嬲る事が彼の楽しみか。俺はこんな奴に負けない為に強くなったはずだ。でも、完膚なきまで負けている。もう自分自身の限界を感じていた。本当に彼は気に食わない奴だ。俺は何度も立ち上がった。彼の命令通り何度も。
「強いな」
「はっ? …よくもまぁ、こんなに嬲ってそんな事が言えた」
「戦闘技術を言ってる訳じゃ無い。心の強さだ。普通の奴なら、もう立ってない。負けると分かって何故立つ?」
「お前が大嫌いだからだよ」
俺は口に血が溜まっていた。随分と威勢を張ったと思う。彼は手加減をして、俺が立ち上がる力を残しながら戦ったんだ。どんな理由であれ、それでも俺がまだ彼の目の前に立っている事には変わりない。お情けだろうとお遊びだろうとだ。
「大嫌いか。そうか。そんな奴はやっぱり倒したいか?」
「ああ、倒したいね。何年、何十年、生涯かけてもいい」
「その為には他の奴も倒さないといけない。私が君の目の前にいるのは本来なら有り得ないのだから」
彼はしゃがんで俺の視線に合わせて言う。俺はギリギリの力を振り絞ろうと立ち上がる。やっと彼を見下ろせた。
「次に会うのが楽しみだ」
彼は見上げて笑う。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
お漏らし・おしがま短編小説集 ~私立朝原女学園の日常~
赤髪命
大衆娯楽
小学校から高校までの一貫校、私立朝原女学園。この学校に集う女の子たちの中にはいろいろな個性を持った女の子がいます。そして、そんな中にはトイレの悩みを持った子たちも多いのです。そんな女の子たちの学校生活を覗いてみましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる