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君は隣で強くなる
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私は昔から体が弱かった。その為、君にはいつも助けられていた。からかわれた時も魔物に襲われたときも、そして今もだ。
「はや…くっ!」
歯を食いしばりながら、自身より大きな力を持つ魔物の攻撃を一本の剣と自分の力で受け止めている。
「何をしてるっ!?早く逃げろ!!!」
こんな時ですら、私のことを考えて身体を動かしている。彼の声が聞こえない。全身が恐怖と自身の弱さで震えている。私は何一つ彼の為に動けない。
「くっっっそっ!!!野朗っ!!!」
彼は叫び、力を込めて押し返すと同時に魔物に斬りつける。返り血を浴びた彼は息を荒げて、私の方を向いた。
まただ。また彼は強くなった。安堵した顔で私に近付き抱き締める。良かったと嬉しそうに囁く。
そして、私はまた弱くなった。
「…?なん…で!?」
彼の抱き締める身体はいつもより温かい。私は血を浴びたことはない。彼はこんなにも温かいモノを浴びていたのだ。
「どうして…」
彼の問いには何一つ答えない。いや、答えられない。最後の力で誰かの名前を言っていたが、それは私ではない。その名の者は彼の死と同時に死んだのだから。
彼はいつも彼女の名を借りて強くなった。自分が主人公と錯覚しているかの様に成長する。
笑い、怒り、泣いて、一人だけ強くなった。
「貴方は強くなりすぎたの」
護身用の小刀を彼から離して、先程まで動けなかった体は立ち上がった。
主人公の私はやっと強くなれる。
「はや…くっ!」
歯を食いしばりながら、自身より大きな力を持つ魔物の攻撃を一本の剣と自分の力で受け止めている。
「何をしてるっ!?早く逃げろ!!!」
こんな時ですら、私のことを考えて身体を動かしている。彼の声が聞こえない。全身が恐怖と自身の弱さで震えている。私は何一つ彼の為に動けない。
「くっっっそっ!!!野朗っ!!!」
彼は叫び、力を込めて押し返すと同時に魔物に斬りつける。返り血を浴びた彼は息を荒げて、私の方を向いた。
まただ。また彼は強くなった。安堵した顔で私に近付き抱き締める。良かったと嬉しそうに囁く。
そして、私はまた弱くなった。
「…?なん…で!?」
彼の抱き締める身体はいつもより温かい。私は血を浴びたことはない。彼はこんなにも温かいモノを浴びていたのだ。
「どうして…」
彼の問いには何一つ答えない。いや、答えられない。最後の力で誰かの名前を言っていたが、それは私ではない。その名の者は彼の死と同時に死んだのだから。
彼はいつも彼女の名を借りて強くなった。自分が主人公と錯覚しているかの様に成長する。
笑い、怒り、泣いて、一人だけ強くなった。
「貴方は強くなりすぎたの」
護身用の小刀を彼から離して、先程まで動けなかった体は立ち上がった。
主人公の私はやっと強くなれる。
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