短き者達

雨彩 色時

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冷たい手

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 僕は彼女と手を繋いだことがない。


「付き合って下さい!」

 セミの鳴き声に掻き消されないようにはっきりと想いを声に乗せて伝えた。僕は手を突き出して、応えを待つ。
 時が止まるような感覚なのに心臓の鼓動は速くなるばかりだ。


「私で…よければ」

 彼女は僕の手で応えはしなかったが、返事は答えてくれた。僕はそんなことは気にも止めず、その手に拳をつくってガッツポーズをする。
 放課後は一緒に帰ることになったが、まだ付き合い始めたばかりもあって手を握ることは恥ずかしいと感じる年頃で、周りの生徒の目もある。それでも僕はこの時間が幸福に感じて浮かれていた。

 夏休みは色んな所に遊び歩いた。一度、手を握ろうとするが、彼女は手汗が恥ずかしいと顔を赤らめる。
 秋になると夏休みに遊んだ分を取り返すようにお互い勉強に励んだ。同じ高校に行こうと決め、嫌いな勉強もさほど苦でもない。

 クリスマスが近付き、一日だけ勉強を忘れてデートをすることになった。待ち合わせ場所に向かう途中、人集りが遠目から見えたが僕は気にせず歩く。

 寒い。彼女は遅刻なんて一度もしなかった。電話にも出ない。頭や肩に少し雪が積もってきた時、彼女から電話が来た。やっと連絡が来て安堵する。
 

「珍しく寝坊…っ?」

 言い終わる前に女性の泣き声が聞こえて言葉が詰まる。泣くのを必死に抑えようとする女性に僕は困惑しか出来ない。


「娘が…うっ」

 彼女の母親とやっと理解したが、状況は理解出来ない。何度か彼女の家へ迎えに行ったことがあり、母親の声はもっと穏やかで優しい印象だ。一呼吸置いて言う。


「落ち着いて下さい。どうしたんですか?」
 僕も内心は落ち着かない。
「車にね…。はね「どこですか!?」

 母親の言葉を遮り、もう足が動いていた。白い息を何度も吐きながら僕は彼女のいるところへ向かった。

 彼女がいる部屋に着いた。彼女の母親は泣き顔を僕に向け、父親は母親の背に手を置き俯いていた。じゃあ、僕はどうすればいいのだろう。立ち尽くしたらダメだ。

 足が動かない。そう言えばずっと外にいて手が寒い。彼女の手は温かいはずだ。冷え切った僕の手できっとびっくりするだろう。今思えば、手を握るのはこれが初めてだ。
 目的が出来てやっと足が彼女へと動き、手を握る。
 嗚呼、綺麗な手だ。心の底からそう思う。そして、どうしてだろうか。
 どうして、僕の手より冷たいんだ。


 訂正するところがあった。
 彼女の手の温かさを僕は
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