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私の趣味。

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「…私が木登りするのを、知っていたんですか?」

結婚前の旦那様に木登り姿を見られていたなんて… 

「恥ずかしい姿を見せてしまい、申し訳ありません。」

「いえ、僕は貴方を知るきっかけになりましたし…見られて良かったと思います。」

…旦那様は私の羞恥を煽るのが得意なようだ。
それに何だか今の旦那様、とっても楽しそう。

まさか、ね。

「…木登りは、幼い頃からの趣味なんです。」

ーーーーーーーーーーーーーー

幼い頃から、読書に夢中になり過ぎて部屋に籠り気味だった。
それを心配したお父様は1日1時間、私を庭で遊ばせるルールを作った。

庭で遊ぶ時間。
走ることも、散策することも好きではない私はとても退屈だと思った。

でも…外で読書することは禁止されてないよね?と自室から本を持ってくることにした。

けれど庭で本を開くと、太陽の陽射しが邪魔で文字が見えないことに気付いた。
どうしたものかと辺りを見渡すと、大きな木を発見した。

木の下なら影ができて読めるはずと考え、そこに移動することにした。
木の下は予想通り影ができて読めた。
でも景観が悪かった。
地面に近くなるので、せっかくの庭園風景を眺められない。
私は、木の上からなら景観も完璧では…と閃いた。

そして何とか木に登った。
木の枝は、景観がとても良く、風も心地よかった。
意外と枝の上は安定していて、読書にも支障はない。
むしろ快適な場所だった。

それからは毎日、木に登って読書をするようになった。
勿論、その姿を見たお父様とお母様、姉様は最初とても驚いた。

はしたない、と注意を受けたが、最終的に私が部屋に籠りきりになるよりはマ…と家の庭以外ではやらないという条件付きで諦めてくれた。

しかし私は、1度だけそれを破ってしまった。

あの日私は、パーティーの挨拶周りで疲れていた。
壁の端で休んでいた時、ふと横に目を向けると飾り用の本棚があった。
興味が沸いて本棚を覗くと、ずっと読みたくて手に入らなかった本があることに気付いた。
私は、読みたくて読みたくて堪らない衝動に駆られた。

飾り用の本棚だから誰にも気付かれないだろうと思い、本と共にこっそりパーティーを抜け出し、人気のない庭に出た。
そして、もし人が来ても見つからない木の上に登ることにした。
慣れない木で登るのに手間取ったが、木の枝に上がることができた。

そして私は、パーティーが終わる夕方まで熟読したのだった。

ーーーーーーーーーーーー

「木登りはもう、しないのですか?
結婚前、庭に貴方が登りやすい木を植えたのに…」

公爵家の庭には、大木がある。
確かに、登りやすそう…とは思った。
本当に登ったことは1度もない。

さっきらから思っていたのだが…

「旦那様…もしかして私のこと面白がってます?」
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