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部屋に入ると突然私の側に歩み寄りリリーは私の頬を平手打ちをして激しく叫び出した。
「どういう事よ!あなたみたいな愛人の娘がジェイコブを従者にするなんて、身分を考えなさい!仕方なく城においてやってるのに何様のつもりなの!お父様に何を言ったの!
ジェイコブが私の元から去っていったじゃない!!
ジェイコブを失うのが嫌だからって、何をしたのよ!!」
このままいけば怒りのあまり私を処刑するかもしれない。今は彼女の怒りを抑えなければ。
「お言葉ですがリリー様!誰からの情報か分かりませんが、それは事実では御座いません!
リリー様の意見を無視して、私の意見が通った事など今の一度も御座いませんし、これからもそのような事はあり得ません。もし王様が私に同情してその様な事態になったとしても、リリー様のお母様である女王陛下がそのような事を許すとお思いですか?それに私は本来ならば処刑されてもよい身分。しかし心の広い女王陛下、そしてリリー様の配慮によって生かされております。その様な私が命の恩人を裏切るわけございません。私は何かの手違いだと今も思っております。」
そのまま私は深くお辞儀をすると彼女の怒りが収まってきたが、今度は泣きそうになりながら話し始めた。
「お父様が突然従者の交換を取り止めるように命令したのよ!
だからお姉様が頼んだのかと思ったわ。でも冷静に考えれば貴方より私を愛してるお父様が、貴方の言うことなんか聞くはずないわよね。私にはジェイコブが必要なのよ!!
なんでこんな事になるの!」
彼女は後半は泣き叫びながらそう私に訴えてきた。
落ち着かせる為に彼女の喜ぶ答えを見つけなければ。
「これは個人的な考えですが、もしかしたら王様はジェイコブをリリー様の婚約者にお考えなのかもしれません。主従関係の場合、婚約者にする事は法律で禁止されています。王様はジェイコブを次期王として望んでいるからこそ、主従関係の解消を命令されたのかも。それなら合点がいきます。」
これを聞いたリリーは今まで泣いていたのが嘘の様に笑顔になり、私はやっとその場を解放された。
でもなぜ王は突然その様な命令をしたのだろうか。
今までリリーの言いなりだったのに。もしかしたら本当に婚約者としてお考えなのかもしれない。それならこんな喜ばしい事はない。私にとっても彼女にとっても。
自室に戻るとジェイコブが待っていた。
私の顔を見るや否や近づいて来て、叩かれて赤くなった頬を手で包み込んだ。
「リリーに殴られたのですね。許せないあの女は・・。」
小さな声でジェイコブが何か囁いたが私は聞き取れなかった。
「さっき転んだのよ。大丈夫だから心配しなくても良いわ。
それよりお茶会に遅れるから急いで馬車を用意して頂戴。」
朝のお茶会は私にとって唯一の楽しみだ。
私は愛人の娘という事で女王陛下が主催するお茶会には参加できない。しかしそれが余りにも可哀想だと、亡き母と親交のあった貴族の女性リンが私の為に気心の知れた友人を数名招待して毎週開いてくれる。
その上、男性はこのお茶会に参加できないのでジェイコブとも距離をおけるし、これが私の今の心の支えだ。
お茶会の席に着きすぐリンが口を開いた。
「聞いたわよ。従者を交換したのにまた元に戻ったんですって。物凄く短い期間だったわよね。リリーはジェイコブに首ったけなのにこんなに早く元どおりになるなんて思わなかったわ!」
お茶会に参加していたリンの従兄弟もそれに反応して
「噂によると王の命令らしいわよ。今まで彼女の我儘はなんでも聞いてきたのに今回はどうしたのかしら。不思議よね。
それよりも貴方たちにとっては良かったんじゃない。
正直二人はお似合いよ。ジェイコブが優しい顔を見せるのはハナだけだもの。私もあんなたくましい従者が欲しいわ」
確かにジェイコブは素敵な男性だ。私の事を気遣い、いつも1番に考えてくれる。でも何というか怖いのだ。彼の行動が余りにも出来過ぎていて。私への執着も尋常じゃないような気もする。そして彼には私の従者という立場で終わってほしくない。あの時は咄嗟に嘘をついたがリリーと結婚して王になるのもありだと今は思っている。
「そういえばもうすぐハナは十六歳よね。どうするの?」
16歳になると王の正妻の子供以外、例えば妾の子や従兄弟などは城から出て自由を選択する事ができる。その代わり貴族の特権も奪われるので、国が面倒を見てくれることは無い。
「私は独り立ちするには、まだ難しいわ。早くここから出たくて薬草の勉強をしてるけど、住む場所も店の資金も高額でまだ用意出来てないの」
私の亡き母は元々薬剤師としてこの城で働いていた。私もいづれ母と同じ仕事で店を持ちたいと思っている。
すると今日初めてこのお茶会に参加した母の古くからの友人ジェンが口を開いた。
「私達家族が使っていない店があるの。二階は居住スペースになっているから良かったら安く売るわよ。ただ隣街だから遠く離れているけど。」
「ほ、本当ですか!店を持つならこの街から離れた場所にと考えていました。安く譲って頂けるならお願いします!」
今日は散々な日だと思っていたけど、こんな良い知らせが最後にあるなんて!!
この城から出れる日が現実的になってきたわ。
これでリリーからも周りの目からもジェイコブからも解放される!
「どういう事よ!あなたみたいな愛人の娘がジェイコブを従者にするなんて、身分を考えなさい!仕方なく城においてやってるのに何様のつもりなの!お父様に何を言ったの!
ジェイコブが私の元から去っていったじゃない!!
ジェイコブを失うのが嫌だからって、何をしたのよ!!」
このままいけば怒りのあまり私を処刑するかもしれない。今は彼女の怒りを抑えなければ。
「お言葉ですがリリー様!誰からの情報か分かりませんが、それは事実では御座いません!
リリー様の意見を無視して、私の意見が通った事など今の一度も御座いませんし、これからもそのような事はあり得ません。もし王様が私に同情してその様な事態になったとしても、リリー様のお母様である女王陛下がそのような事を許すとお思いですか?それに私は本来ならば処刑されてもよい身分。しかし心の広い女王陛下、そしてリリー様の配慮によって生かされております。その様な私が命の恩人を裏切るわけございません。私は何かの手違いだと今も思っております。」
そのまま私は深くお辞儀をすると彼女の怒りが収まってきたが、今度は泣きそうになりながら話し始めた。
「お父様が突然従者の交換を取り止めるように命令したのよ!
だからお姉様が頼んだのかと思ったわ。でも冷静に考えれば貴方より私を愛してるお父様が、貴方の言うことなんか聞くはずないわよね。私にはジェイコブが必要なのよ!!
なんでこんな事になるの!」
彼女は後半は泣き叫びながらそう私に訴えてきた。
落ち着かせる為に彼女の喜ぶ答えを見つけなければ。
「これは個人的な考えですが、もしかしたら王様はジェイコブをリリー様の婚約者にお考えなのかもしれません。主従関係の場合、婚約者にする事は法律で禁止されています。王様はジェイコブを次期王として望んでいるからこそ、主従関係の解消を命令されたのかも。それなら合点がいきます。」
これを聞いたリリーは今まで泣いていたのが嘘の様に笑顔になり、私はやっとその場を解放された。
でもなぜ王は突然その様な命令をしたのだろうか。
今までリリーの言いなりだったのに。もしかしたら本当に婚約者としてお考えなのかもしれない。それならこんな喜ばしい事はない。私にとっても彼女にとっても。
自室に戻るとジェイコブが待っていた。
私の顔を見るや否や近づいて来て、叩かれて赤くなった頬を手で包み込んだ。
「リリーに殴られたのですね。許せないあの女は・・。」
小さな声でジェイコブが何か囁いたが私は聞き取れなかった。
「さっき転んだのよ。大丈夫だから心配しなくても良いわ。
それよりお茶会に遅れるから急いで馬車を用意して頂戴。」
朝のお茶会は私にとって唯一の楽しみだ。
私は愛人の娘という事で女王陛下が主催するお茶会には参加できない。しかしそれが余りにも可哀想だと、亡き母と親交のあった貴族の女性リンが私の為に気心の知れた友人を数名招待して毎週開いてくれる。
その上、男性はこのお茶会に参加できないのでジェイコブとも距離をおけるし、これが私の今の心の支えだ。
お茶会の席に着きすぐリンが口を開いた。
「聞いたわよ。従者を交換したのにまた元に戻ったんですって。物凄く短い期間だったわよね。リリーはジェイコブに首ったけなのにこんなに早く元どおりになるなんて思わなかったわ!」
お茶会に参加していたリンの従兄弟もそれに反応して
「噂によると王の命令らしいわよ。今まで彼女の我儘はなんでも聞いてきたのに今回はどうしたのかしら。不思議よね。
それよりも貴方たちにとっては良かったんじゃない。
正直二人はお似合いよ。ジェイコブが優しい顔を見せるのはハナだけだもの。私もあんなたくましい従者が欲しいわ」
確かにジェイコブは素敵な男性だ。私の事を気遣い、いつも1番に考えてくれる。でも何というか怖いのだ。彼の行動が余りにも出来過ぎていて。私への執着も尋常じゃないような気もする。そして彼には私の従者という立場で終わってほしくない。あの時は咄嗟に嘘をついたがリリーと結婚して王になるのもありだと今は思っている。
「そういえばもうすぐハナは十六歳よね。どうするの?」
16歳になると王の正妻の子供以外、例えば妾の子や従兄弟などは城から出て自由を選択する事ができる。その代わり貴族の特権も奪われるので、国が面倒を見てくれることは無い。
「私は独り立ちするには、まだ難しいわ。早くここから出たくて薬草の勉強をしてるけど、住む場所も店の資金も高額でまだ用意出来てないの」
私の亡き母は元々薬剤師としてこの城で働いていた。私もいづれ母と同じ仕事で店を持ちたいと思っている。
すると今日初めてこのお茶会に参加した母の古くからの友人ジェンが口を開いた。
「私達家族が使っていない店があるの。二階は居住スペースになっているから良かったら安く売るわよ。ただ隣街だから遠く離れているけど。」
「ほ、本当ですか!店を持つならこの街から離れた場所にと考えていました。安く譲って頂けるならお願いします!」
今日は散々な日だと思っていたけど、こんな良い知らせが最後にあるなんて!!
この城から出れる日が現実的になってきたわ。
これでリリーからも周りの目からもジェイコブからも解放される!
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