ファンタジアストーリーズ

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1550系電車異世界へ行く

会議

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 アーク(天空)郊外、神楽耶(かぐら)村には『オームラ鉄道』の車庫があった。
 レンガ張りの大きな車庫には蒸気機関車『ウィリー号』の他にも旧型木造客車などが多数留置されている。
 蒸気機関車『ウィリー号』の2号機は、謎の鉄道車両を牽引し、車庫へと収納した。
 鉄道技師150名に加え、『アラド王国』からの応援300名の総勢450名を動員、さらには他国からの視察が50人前後と誰もが謎の鉄道車両に興味を持っていた。
 約2か月、ハンツマン主導で不審車両を分解し、調査することになった。
 車体、台車、モーター、細かな部品まで分解した。
 誰もが声を失った。
 どこの国でも見たことのない仕組みの車両で、分解にはかなり苦労したようだ。
 複雑な配線、見ず知らずの部品の数々、ハンツマンをはじめとする技術者たちは誰もが驚き、誰もが分解に苦労したようだ。
 蒸気機関車や客車とは違う設計で、謎だらけであった。
 車両の調査は2か月で終了する。
 分解した部品を元に戻すのはかなり大変だったようで、床下の艤装は特に難航したようだ。
 ジルは2か月後、ハンツマンら鉄道技師や役員を里の集会所に集めて臨時会議を開催、里長のカカシもオブサーバーとして加わることになった。
 ハンツマンの調査の結果、『オームラ』や『アラド』の技術の車両ではなく、信じられないことではあるが別世界の人間が製造した車両であるという結論が出され、車両の名称も1550系であることが判明する。
 当初のハンツマンの見立て通り、電気で動く自走可能の車両であることが判明した。
 ハンツマンの調査によると屋根のパンタグラフとかいう装置から電気を取り入れ、取り入れた電気をインバーター制御装置を通じモーターを回して列車を走行させる仕組みらしい。
 推測であるが、別世界では電線のような物を張り巡らせて、その電線から電気を取り入れているのではないかという結論に落ち着く。
 幹部役人は驚きを連発させた。
 「蒸気機関なしで電気で動く車両とは・・・・・・」
 「すごいではないか!」
 ハンツマンはひたすら説明を続ける。
 屋根上の白い物体は、ヒミコの見立て通り、クーラーとかいう装置で機械的に冷風・温風を使える仕組みの装置で、温暖地や寒冷地での使用を想定しているのではないかと推測する。
 あの車両は、車内設備も旧型客車とは比べ物にならないくらい快適であった。
 さらに木目調の内装、謎の装置、座り心地のいい座席、赤いタンクのような装置もあり、調べたところ、消火器と呼ばれている装置らしく、火災事故があった時に炎を鎮火させる装置らしい。
 幹部役員は鉄道車両だけでなく、文明的にも我々は遅れているかもしれないと認識させられた。
 錆がまったくないシルバーメタリックの車体、錬金術師を世界中から呼び出して調査もしたところ、どうやら『ステンレス』とかいう金属で、鉄に一定量のクロムを含んだ金属で、調査したところ信じられないことに骨組みまで金属でできており、劣化が全く見られなかったという。
 更に調べたところ、1550系電車は製造されてから30年程度使用されているが、全くの劣化がない。
 カカシもこの技術には驚いていた。
 「里も色々な金属、鉄を研究してきたが、しかしここまで最高の技術を持って車両を作れる別世界の国、恐ろしい工業力だ」
 ハンツマンの説明は一通り終わった。
 「ハンツマン、この車両のような新しい車両は作れそうか?!この技術、無駄にはできまい!」
 「この技術、鉄道以外にも応用できる!我が『オームラ鉄道』はあの『アラド王国』よりも先進的な技術を導入できるかもしれない!」
 「いや、この技術は鉄道以外にも生かせそうですな。『アラド王国』の国王陛下にもこの車両の技術を開示すれば、かなりの便宜を図れますな」
 幹部役員たちが騒めきだすとジルは手を叩く。
 「皆さん、確かにあの1550系車両とかいう不明の車両には色々な可能性がある。ですが、あれは『オームラ鉄道』の持ち物ではない。それに、もう少し調査は必要です」
 冷静なジルに対して幹部役員たちは顔を曇らせた。
 「しかし、ジル社長もご存じですが、我が『オームラ鉄道』は財政も厳しく、旧型客車の置き換えも必須だろう」
 「社長、今こそこの車両を活用しましょう!」
 幹部役員たちに対し「あの車両は『パンドラの箱』です!」と声を大きくしたら、誰もが静まった。
 「確かに技術的にもすごい。私もあの車両を一日でも我が国に導入したいところだ。しかしまだ我々はあの未知の技術を知らない。それにあの車両が別世界の技術でないとしたら、もう少し調査も必要がある」
 カカシも頷く。
 「確かにあの車両、『アラド』の人間も興味を持っていた。しかし、あの車両をどう活かすにしても、もう少し様子を見たほうがいいだろう。それからでも遅くはない」
 会議中、忍者の一人がカカシの前に現れた。
 忍者はカカシの耳元で何か囁いた。
 「何だと?」
 カカシの表情が険しくなる。
 「皆さん、たった今、里の人間がその車両のいた別世界へと飛ばされたようだ」
 カカシの発表に幹部役員とジルは驚く。
 「里の民によれば、それと同じ車両が複数、それも数分単位に行き来するとの情報も入っているようだ」
 「なんだって!」
 集会所の役員もハンツマンも驚いた。
 あの車両と同じような車両がそれも数分起きに行き来するなんて、どういうことだ。
 「まさか、線路が2つあるということか!」
 「数分単位で行き来するなんて!他国でも実現できなかったことなのだぞ!どういうことなんだ!」
 カカシは忍者の報告を聴く。
 「えーと、里の物によれば、その国は『日本』とか言う国らしい。街が我が国よりも大きく、信じられないことだが、場所によってはガラス張りの建物もある先進国らしい」
 幹部役員たちは言葉を失った。
 入ってくる情報がとにかく刺激的であった。
 『日本』
 鉄道をそこまで発展させた先進的な国、カカシでさえユートピアではないかとさえ思う。
 誰もが1550系電車や『日本』の技術に興味が尽きなかった。
 カカシは席を外し、里の民の元へと向かう。
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