ファンタジアストーリーズ

たくp

文字の大きさ
上 下
2 / 20
1550系電車異世界へ行く

オームラ

しおりを挟む
 地球とは別世界にある東洋の里、『オームラ』では、『オームラ鉄道』の車両置き換え計画に悩まされていた。
 『オームラ鉄道』は首都アーク(天空)からマハロ山までを結ぶ全長10km弱の鉄道で、蒸気機関車『ウィリー号』を大国から購入して、大国から譲り受けた旧型木造客車で、旅客輸送を行っていた。
 しかし車両はすでに60年以上経過した車両で、木造のため、老朽化が著しく、いつ車体が壊れるかさえ不明だった。
 オームラ鉄道社長のジルは頭を悩ませていた。
 鉄道会社は開業にかかった資金の返済で手一杯で、とても新車を購入する予算はなかった。
 里長のカカシは社長のジルに新車導入を直談判した。
 「この里の鉄道経営が苦しいのは分かる。しかし、何とか新車を導入できないだろうか」
 ジルは苦い表情を浮かべた。
 「当社はやっとの想いで開業した会社です。いつかは新車を購入しなければと考えていますが、今の今すぐには難しいでしょう」
 しかしカカシは譲れなかった。
 「我が里は、他国に比べれば大赤字だ。しかし、今年の金の収穫とコメの豊作が実現すれば、里の懐事情もどうにかなろう」
 「ええ、我々も里の事情を踏まえてとは思っているのですが、やはり財政の厳しい時にというのも苦しい願いでして・・・・・・。おまけに他国で客車の掘り出し物がない分、自前での製造か延命しか選択はないのです」
 「うーん。確かにお互い厳しいのは分かる。しかし、厳しい状況に甘んじては前に進むことも叶わない。お互い里の民を思う気持ちは一緒のはず」
 「ええ、とはいえ今後の投資のことを考えると、車両の置き換えはタイミングが肝心でして・・・・・・」
 「しかし、それでは民の快適な輸送サービスはもっと遠くなる」
 「ええ、我々も何とかしたい限りです」
 ジルもカカシもお互い忖度しながら意見をぶつけ合ったが、平行線だった。
 『オームラ鉄道』は歴史の浅い新興の鉄道会社だ。
 そのため、開業から浅い年月しか経っていない。
 資金調達は困難を極め、他国からの借入金なども投入して、『オームラ鉄道』は開業まで漕ぎつけた。
 しかし、それは苦難の歴史だった。
 他国からの借入金返済で苦労し、経営はいつも赤字だった。
 そのため、導入した車両は全て他国からの払い下げばかりで、新車を購入する予算はないほど、経営はギリギリだった。
 『オームラ』の里も例外ではなかった。
 弱小の村として常に大国の侵略に怯えながらも、大国に守られ、今日里としての経営をうまくできている。
 しかし財政事情は厳しかった。
 里の民の衣食住はなんとか担保できるレベルだが、『オームラ鉄道』に捻出する補助金は出し渋っている状況だ。
 お互い厳しい状況であった。
 財政は無限ではない。
 しかしお互い現状のまま満足はしたくなかった。
 ジルは早く旧型客車を置き換えたいと考え、カカシも里長として鉄道の快適な輸送の実現に努めてほしいと考えていた。
 すでに交渉は数か月以上続いており、議論は平行線の状態が続いた。
 しかし、お互い財政の壁に悩み、議論が進まないのだ。
 「ジル社長!里長!大変です!」
 秘書の一人が駆けつける。
 「どうした?」
 ジルが尋ねると「アーク(天空)の郊外の側線で、不審な列車を発見しました!」という奇妙な報告だった。
 ジルは奇妙な報告を疑う。
 「見間違えでは?」
 「そうではないんです!銀色の車体に何やら色々装備している列車のようで・・・・・・」
 ジルとカカシはキョトンとした。
 「とにかく現地へ!里の民も興味関心を持っているようです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

美咲の初体験

廣瀬純一
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

ループn回目の妹は兄に成りすまし、貴族だらけの学園へ通うことになりました

gari
ファンタジー
────すべては未来を変えるため。  転生者である平民のルミエラは、一家離散→巻き戻りを繰り返していた。  心が折れかけのn回目の今回、新たな展開を迎える。それは、双子の兄ルミエールに成りすまして学園に通うことだった。  開き直って、これまでと違い学園生活を楽しもうと学園の研究会『奉仕活動研究会』への入会を決めたルミエラだが、この件がきっかけで次々と貴族たちの面倒ごとに巻き込まれていくことになる。  子爵家令嬢の友人との再会。初めて出会う、苦労人な侯爵家子息や気さくな伯爵家子息との交流。間接的に一家離散エンドに絡む第二王子殿下からの寵愛?など。  次々と襲いかかるフラグをなぎ倒し、平穏とはかけ離れた三か月間の学園生活を無事に乗り切り、今度こそバッドエンドを回避できるのか。

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

付与術師の異世界ライフ

畑の神様
ファンタジー
 特殊な家に生まれ、”付与術”という特殊な能力を持つ鬼道(きどう)彰(あきら)は ある日罰として行っていた蔵の掃除の最中に変なお札を見つける。  それは手に取ると突然輝きだし、光に包まれる彰。  そして光が収まり、気がつくと彼は見知らぬ森の中に立っていた―――――― これは突然異世界に飛ばされた特殊な能力”付与術”を持つ少年が 異世界で何を思い、何をなすことができるのか?という物語である。 ※小説家になろう様の方でも投稿させていただいております。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

処理中です...