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災い転じて福となす

災い転じて福となす①

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借家との別れは突然だった──

未央は亮介と仕事終わりに待ち合わせをして、晩ごはんの買い出しに商店街の肉屋に寄った。

豚バラが大特価!! きょうは冷蔵庫に野菜もあるし、豚バラ肉の野菜巻きにしよう。
コロッケも買おうとか、いやメンチカツにしようとか話していると、消防車のけたたましいサイレンが聞こえ、それがだんだん近づいてきた。

商店街もにわかにさわがしくなる。
何だろうと思っていると、商店街の店主らしきおじさんたちが騒ぎ始めた。

「火事だって!!」
「高台の三軒続きの借家だそうだよ」
「あそこ、おばあさんいたよね?」
「大変じゃねーか、早く行くぞ!」

おじさんたちは慌てて自転車やら、原付で出ていった。

「未央、先に行くから」

何が何だかわからないと思っているうちに、亮介も自転車で走り去った。
火事……、うちが? サクラ……、サクラ!?

未央も亮介を追って、自転車を全速力でこいで家へ向かった。未央が家に着いたときには、もう火は消えていた。

全速力でこいできた自転車を道端に放り投げて、野次馬の中をかきわけ最前列まで泳いだ。

心臓が苦しい。鼻を突き刺すような焼け焦げたにおい、消防隊と思しき人の声、足元に流れ出した大量の水。ボヤで済んだのだろうか、見た目にはそれほど焼けた様子はない。

亮介は? サクラは? 大家さんは? はぁはぁと息も絶え絶えにやっと最前列までやってくると、大家の林の姿があった。

「大家さん!!」

「あぁ、篠田さん、ごめんなさい私の不注意なの、ヤカンをかけたまま外出してしまって……」

「ご無事で何よりです、亮介……あ、郡司さんは──」

「未央!!」

斜め後ろから亮介の声がした。人をかき分けてそっちに向かう。

「亮介! サクラ……サクラは?」

「大丈夫だよ、ほら」

目を落とすと、亮介の腕にすっぽり包まれたサクラの姿があった。

「あーーっ、よかった!!無事だったんだね」

未央はサクラをぎゅっと抱きしめた。

「ここの住人の方ですか? 少しお話が」

消防隊の人に呼ばれて話を聞いた。
初期消化がはやく、燃えたのは大家の部屋のみで、未央と亮介の部屋は無事だったということ。

亮介が消防隊の人に、サクラがまだ中にいることを伝えてくれて、ドアをこじ開けたところ中から飛び出してきたのだそうだ。

とにかくみんな無事でよかった。火災原因調査も終わり、部屋に入れたのは夜中に近かった。

電気もダメになったので、真っ暗。
スマホの懐中電灯の灯りが頼りだ。
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