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復讐計画
6復讐計画
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昨日の今日だ。もういつもの永井くんだと思って接するのは難しい。
変な胸の高鳴りで、舌がうまく回らない。
「この商品のモニターアンケートって集計済みですか?」
そう言いながら、永井くんは新商品の写真を見せてくる。
冷静で、少しぶっきらぼうな雰囲気。
仕事はできるけど、みんなからちょっとだけ距離を置かれている印象のある永井くん。
それでももちろん仕事はできるし、必要なコミュニケーションはきちんと取るし、会社にはなくてなならない存在だ。
「ちょ、ちょうど今それやってるから、あとで送るね。急ぎ?」
「午後の営業先に行く前には確認したいです」
「じゃあ、11時までには集計終わらせるよ」
「お願いします」
話を終えてデスクの方に向き直す。
あーーーー!! びっくりした。
抱かれたのなんか嘘のようにいつも通り。
それがよけいにドキドキする。
いやいやいや、仕事中だよ。
何考えてるんだろう。集中しなくちゃ。
大きく息をついて、パソコンにむかう。
ガツガツとアンケート集計をこなして、社内チャットに添付して永井くんに送信した。
そっと視線を上げて、少し向こうの営業部のシマにいる永井くんに目を遣る。
外に出ていることが多いので、座っているのは珍しい。
きれいな顔だな。
ちょうど見える永井くんの顔は、相変わらず端正で美しい。
こちらの視線に気がついたのか、パソコンを見ていた永井くんの目がすっとこちらを向く。
あわてて目を逸らして、すぐ仕事の続きを始めた。なんか変に意識してドキドキが止まらない。
だめだな、これは。
ちょっとお手洗いにでも行って気持ちを何とかしよう。
席を立ち上がって、廊下に出たところでかちんと固まった。
「藤原さん、お疲れ様です」
すっとしてきれいな声。抜群のプロポーションにエキゾチックな雰囲気。
大学時代はアナウンサーを目指していたと風の噂で聞いたことがある。
入社してすぐ秘書課の花形に躍り出たのも頷ける。
「……お疲れ様です」
「風見さんに、ちょっとお聞きしたいことがあって。いま居ますか?」
フロアへの出入りは自由だ。
わざわざ聞いてくるのも、嫌がらせなんだろうか。
たいした会話でもないのに、イラッとする自分が情けなく思う。
「はい、いますよ」
「ありがとうございます」
颯爽とフロアへ向かう燎子の背中は自信に満ち溢れているように感じた。
秘書課の人が、商品企画課に用事でくることなどほぼない。
内線を使えば済むことなのに。これはきっと当てつけだ。
私が一体何をしたというのだろう。
むしろわかりやすく、意地悪されたり、悪口を言われるほうがよっぽどかマシなようにも思う。
復讐なんて本当にできるのかな。
側から見れば、私たちのことはただの男女の恋愛のもつれにすぎない。
彼氏が心変わりして、他の人と付き合った。ただそれだけのことだ。
過去のことまで知る人は社内にはいないし、そういうこともあるよね、で終わりだ。
なんだかこれ以上関わりたくないような気さえして、足早にトイレに向かった。
ざっと手を洗って気分を整え、フロアに戻る。斜め前のデスクにいる元カレ。
その横でパソコンの画面を覗き込む燎子の姿が嫌でも目に入った。
「わざわざありがとう」
「いえ、お急ぎだと思ったので。お役に立てて嬉しいです」
にこにこ見つめ合うふたりは、なんとも幸せそうだ。
その笑顔は、ほんの少し前は私に向けられていたのに。
そう思っても仕方ない。
姿勢を正して続きの仕事をはじめると、「失礼しました」と彼女は告げてフロアを出て行った。
年度末に向けて、仕事が立て込んでいる。
なんとか気分を切り替えて仕事を進め、必死にこなしているうちに時間が過ぎて終業になる。
女性社員も積極的に雇用しているので、社内は残業をする雰囲気ではない。
それでもできる人は残業をして 仕事をまわさないといけないのが現状だ。
やれるひとがやっていけばいいと思うけれど、独身組からは不公平だという意見を聞くこともある。
子育て世代を応援し、お互いを慮っていくことが必要であるのは理解できるし、私だって当事者になればそうしたいと思う。
正直ちょっと疲れた。
このまま結婚して時短勤務をしながらゆっくり子育てを楽しみたい。
そんな思いもほんの少しあったけれど、今はそれどころではない。
終業とともに多くの人が帰っていき、フロアがだんだん静かになっていく。
もう少しやっていこう。
そう思ったところで背中の方で元気な声が聞こえた。
「花音! きょうご飯食べに行かない? 新しくできたイタリアン」
声をかけてきたのは黒川彩月。
同期入社で、新人研修以来の友人だ。
「あー、でもこの資料作っておきたくて」
「どれどれ? えー、これまだ先のことでしょ? 残業しなくてもいいじゃん」
「もう、彩月は仕事早いから……」
変な胸の高鳴りで、舌がうまく回らない。
「この商品のモニターアンケートって集計済みですか?」
そう言いながら、永井くんは新商品の写真を見せてくる。
冷静で、少しぶっきらぼうな雰囲気。
仕事はできるけど、みんなからちょっとだけ距離を置かれている印象のある永井くん。
それでももちろん仕事はできるし、必要なコミュニケーションはきちんと取るし、会社にはなくてなならない存在だ。
「ちょ、ちょうど今それやってるから、あとで送るね。急ぎ?」
「午後の営業先に行く前には確認したいです」
「じゃあ、11時までには集計終わらせるよ」
「お願いします」
話を終えてデスクの方に向き直す。
あーーーー!! びっくりした。
抱かれたのなんか嘘のようにいつも通り。
それがよけいにドキドキする。
いやいやいや、仕事中だよ。
何考えてるんだろう。集中しなくちゃ。
大きく息をついて、パソコンにむかう。
ガツガツとアンケート集計をこなして、社内チャットに添付して永井くんに送信した。
そっと視線を上げて、少し向こうの営業部のシマにいる永井くんに目を遣る。
外に出ていることが多いので、座っているのは珍しい。
きれいな顔だな。
ちょうど見える永井くんの顔は、相変わらず端正で美しい。
こちらの視線に気がついたのか、パソコンを見ていた永井くんの目がすっとこちらを向く。
あわてて目を逸らして、すぐ仕事の続きを始めた。なんか変に意識してドキドキが止まらない。
だめだな、これは。
ちょっとお手洗いにでも行って気持ちを何とかしよう。
席を立ち上がって、廊下に出たところでかちんと固まった。
「藤原さん、お疲れ様です」
すっとしてきれいな声。抜群のプロポーションにエキゾチックな雰囲気。
大学時代はアナウンサーを目指していたと風の噂で聞いたことがある。
入社してすぐ秘書課の花形に躍り出たのも頷ける。
「……お疲れ様です」
「風見さんに、ちょっとお聞きしたいことがあって。いま居ますか?」
フロアへの出入りは自由だ。
わざわざ聞いてくるのも、嫌がらせなんだろうか。
たいした会話でもないのに、イラッとする自分が情けなく思う。
「はい、いますよ」
「ありがとうございます」
颯爽とフロアへ向かう燎子の背中は自信に満ち溢れているように感じた。
秘書課の人が、商品企画課に用事でくることなどほぼない。
内線を使えば済むことなのに。これはきっと当てつけだ。
私が一体何をしたというのだろう。
むしろわかりやすく、意地悪されたり、悪口を言われるほうがよっぽどかマシなようにも思う。
復讐なんて本当にできるのかな。
側から見れば、私たちのことはただの男女の恋愛のもつれにすぎない。
彼氏が心変わりして、他の人と付き合った。ただそれだけのことだ。
過去のことまで知る人は社内にはいないし、そういうこともあるよね、で終わりだ。
なんだかこれ以上関わりたくないような気さえして、足早にトイレに向かった。
ざっと手を洗って気分を整え、フロアに戻る。斜め前のデスクにいる元カレ。
その横でパソコンの画面を覗き込む燎子の姿が嫌でも目に入った。
「わざわざありがとう」
「いえ、お急ぎだと思ったので。お役に立てて嬉しいです」
にこにこ見つめ合うふたりは、なんとも幸せそうだ。
その笑顔は、ほんの少し前は私に向けられていたのに。
そう思っても仕方ない。
姿勢を正して続きの仕事をはじめると、「失礼しました」と彼女は告げてフロアを出て行った。
年度末に向けて、仕事が立て込んでいる。
なんとか気分を切り替えて仕事を進め、必死にこなしているうちに時間が過ぎて終業になる。
女性社員も積極的に雇用しているので、社内は残業をする雰囲気ではない。
それでもできる人は残業をして 仕事をまわさないといけないのが現状だ。
やれるひとがやっていけばいいと思うけれど、独身組からは不公平だという意見を聞くこともある。
子育て世代を応援し、お互いを慮っていくことが必要であるのは理解できるし、私だって当事者になればそうしたいと思う。
正直ちょっと疲れた。
このまま結婚して時短勤務をしながらゆっくり子育てを楽しみたい。
そんな思いもほんの少しあったけれど、今はそれどころではない。
終業とともに多くの人が帰っていき、フロアがだんだん静かになっていく。
もう少しやっていこう。
そう思ったところで背中の方で元気な声が聞こえた。
「花音! きょうご飯食べに行かない? 新しくできたイタリアン」
声をかけてきたのは黒川彩月。
同期入社で、新人研修以来の友人だ。
「あー、でもこの資料作っておきたくて」
「どれどれ? えー、これまだ先のことでしょ? 残業しなくてもいいじゃん」
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