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夜のサブスク契約

7夜のサブスク契約

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「あっあぅっ……ああんんんっ!!!」

「はぁ……はぁ……」

 体のぶつかる音が、部屋に響くのが聞こえるだけで、耳が熱くなる。

 彼が覆いかぶさってきて上半身が密着すると背中に手を伸ばして、ぎゅっと力をこめて抱きつき快感に震えた。

「だめだめっ!! いっちゃぅ!!」

 果てても果てても、彼は抽送をやめない。

 いつの間にか四つん這いにされて、後ろから攻められていた。
 
 ベッドに顔を突っ伏して目を瞑り、快感を身体中で感じると、意識が飛びそうになる。
 
「やばい、出そう……」

「い、いいよ、イッて?」

 ガクガクと目の前が揺れる。
 揺さぶられながら、胸の頂をいじられて何度も何度も快感の波が自分をさらっていく。

「こっち向いて?」

 くるんとむきを変えられて、パチンと視線が絡む。

 気持ちよさそうな彼の顔、腰を振るその間をみれば、いやらしく蜜壺から出入りしているのが見える。

「どうですか、相性……?」

「う、うん……ああっ!!」

「ちゃんと言って?」

 ますます抽送が早まり、ぐちゃぐちゃと水音が激しくなる。

 両手を掴まれ、のけぞっていやいやと首を振った。

「あああっ、き、気持ちいいっ!! だめっ、またいっくぅーー……!!!」
 彼の小さな呻きを聞きながら、目の前がチカチカしてだんだん白くなる。
 
 力が抜けていくのを感じながら、そのまま意識を手放した。



 すっと目を覚ますと、彼の寝顔が目の前に見えた。

 長いまつ毛に整った顔。子犬のようにかわいい彼の顔に釘付けになる。
 
 窓の外は少し明るくなり始めていた。

 今日は土曜日。
 会社は休みだし、ゆっくりしても問題はない。

 休日出勤して仕事を終わらせようと思っていたけれど、この様子じゃたぶん難しそう。

 一度、家に帰ろう。
 あ、シャワー浴びてないし、体べとべと……。

 どうしよう。
 やっぱりそのまま帰ろうか。でも、ここからだと電車に乗らないと帰れないし。

 名駅めいえきでタクシー拾おうか。

 布団の中でもんもんと考えていると、んんっと彼が私を抱きしめてくる。

 ぼんっと顔から火が出るかと思ったけれど、すぐに安心感が押し寄せてきた。

 なんか、すごく安心する。
 
 これから復讐で手を組もうとしている相手に抱く感情にしては、ずいぶん穏やかだ。
 
 彼の胸に顔を埋めれば、もう少しこうしていたいような気持ちになる。

「……ふじわら、さん?」
 
 顔を上げると、すぐそこに彼の顔があって、思わず体を引いた。

「あ、あの、ご、ごめ、えっと」

「ねぇ、もうちょっと……寝よ?」

 ほぼ寝ぼけているであろう永井くんが、猫なで声で誘ってくる。

 されるがまま、もう一度彼の胸に顔を埋める。
 
 すーすーと彼のかわいらしい寝息が聞こえて、心臓の音がトクトクとなっている。

 ぬくもりを感じていたら、いつの間にか眠りに落ちていた。

 もう一度目を覚まして体を起こすと、彼の姿は部屋の中にはなかった。
 
 ベッドの下でくしゃくしゃになっていた服や下着を取ろうと手を伸ばしていると、ガチャッとドアの開く音がする。

「あ、起きてた」

「お、お、おはよ」

 すっかり身なりを整えた永井くん。
リラックスしたファッションも可愛らしい。

「朝メシ、食べますか?」

「へ!? あ、朝メシ?」

 シーツにサッと身体を隠す。
 昨日全て見られたけれど、こうも明るいとさすがに恥ずかしい。

「はい、これバスタオル。そのままじゃまた襲いそうなんで、それ巻いて」

「お、お、襲……」

「シャワー浴びますか?」

 コクコクと首を縦に振り、彼がリビングに戻ってからバスタオルを巻いてドアを開けた。

 清潔な空間に息をつく。
 
 きれいに片付いているリビングの真ん中に置かれたソファ。

 右側にカウンターキッチンがあり彼が手元を動かしている。

「朝メシ、用意しとくんで。シャワーどうぞ、玄関に向かって右側です」

「あ、ありがとう……」

 パウダールームで自分の体を見れば、胸元にひとつ紅い痕が残る。

 ちゃんと見えないところにつけてあるのだなと変に感心してシャワーを浴びた。

 彼と同じボディソープ。メンズ用のスーッとした香りが心臓をバクバクとさせた。

 リビングに戻ると、コーヒーのいい香りがたちこめる。
 彼に促されて、ソファにすとんと腰かけた。

「簡単ですけど」

「わー!!!」

 おしゃれな木製のカッティングボードをお皿がわりに、きれいに盛り付けられたキウイとバナナとオレンジ。

 焼きたてのトーストは厚切りで食べやすいように半分にしてくれてある。

「お店みたい」

「まあ、たまには」

 いただきます、とパチンと手を合わせた彼と一緒に、自分もいただきますをして食べ始める。あれ、なんか。幸せ?

「藤原さん」

 彼の低い声はとてもセクシーだ。会社でそう思ったことは一度もなかったのに。
 コーヒーカップを持ったまま動きを止めてすっと目を遣ると、パチンと視線が絡まった。

「……なに?」

「どうでしたか、セックスの相性」

 ぶっ、と飲みかけたコーヒーを吹きそうになり、なんとか踏みとどまる。

「あ、あ、あぁ、せ、セックスね」

「まあ、聞かなくても分かりますけど、一応」

「な、なんでわかるの?」

「そりゃそうでしょ。あんなにイキまくって、よがってるの見たら……」

「ちょっと!! もう、何言ってんの!!」

 顔から火がでそうになるくらいの、とんでもない言葉にうろたえる。

 でも、それは嘘なんかじゃない。本当のことだ。

「で、どうしますか。サブスク契約」

 私は食事の手を止めて、永井くんをすっと見た。

「復讐、ほんとに一緒にしてくれる?」

「いいですよ。できることであれば協力します」

「……じゃあ、よ、よろしくお願いします」

「サブスク契約付き?」

「付き……で」

 計画話し合いましょうと、トーストを頬張る永井くん。

 なんだか少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 復讐なんて、本当にできるのか心配だったけれど、敏腕な相棒を迎えて、なんとかできそうな気がしてくる。

 復讐を成し遂げられるという予感とは何か違う。ほのかに紅い、ふわふわとした気持ちが胸の奥にある。

 これは、なんだろう。

 淫らで、甘くて、執拗に攻められた感覚が、お腹の奥で疼いていた。

「藤原さん」
「ん?」

 キウイをごくんと飲み込んで、彼の顔を覗き込む。

「今晩もいいですか? サブスク」

「はぇ!? き、きょうも!?」

「予定ありました?」

 予定はない。今晩も抱かれて、体がもつのだろうか。
 それでもきゅるんと目を潤ませて見つめられると、ダメとは言えない。
 
 なんだこの圧倒的ワンコ感は。あの強気で冷たい彼はどこへ行きました?

「わ、わかった……」

「よろしくお願いします」

 ニコニコと微笑んで、トーストを、口に運ぶ。えっと……これは、誰?

 冷たい印象だった永井くん、子どものようにかわいらしい笑顔に小さく息をついた。

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