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夜のサブスク契約

5夜のサブスク契約

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「はぁ……」
 だとしてもすごい。
 
 一番手前のタワーマンションに彼は向かった。
 
 煌びやかなエントランス、開放的なロビー。24時間常駐であろうコンシェルジュの横を通り過ぎる。
 
 重厚な色のエレベーターにルームキーをかざした永井くんに連れられて乗り込む。
 
 永井くんは無言だった。
 
 私が顔を覗きこんでも、チラッと目を合わせるとすぐ前を向く。
 
 勢いでここまできてしまったけれど、本当にいいのだろうか。
 
 繋いだままの手を、永井くんが握り直してくる。ポケットの中で恋人繋ぎになった手が、焼けるように熱い。
 
 そっと顔を上げても、彼は前を向いたまま。
 
 エレベーターを11階で降りた。静かな内廊下に、ふたりの足音だけが響く。
 
 永井くんは部屋の前まで来て足を止めた。

 ルームキーをセンサーにかざそうとして、すっとその手を下ろす。
 
 どうしたんだろう。
 
 彼を見上げると、なんだか苦しそうな顔。

「どうしたの?」

「……本当にいいんですか?」

 ここまできて、帰るなんて選択肢はない。腹はとっくにくくってきた。

 覚悟はもうできている。

 彼の困ったような濡羽色の瞳を見つめて、小さく頷く。永井くんはすっと解錠するとドアを開けた。

 それと同時にいきなり室内に引っ張られて、玄関横の壁に縫い付けられる。

 ぐっと唇が重なって、目の前に美しい彼の顔が見えた。
 
 ちゅっとわざとらしいリップ音を残して永井くんが離れる。角度を変えて、もう一度。
 
 いやらしく舌を絡めとられて、脳がとろけてくる。

「んんっ!!! ま、待って」

「逃げないで」

 顎をぐいっとつかまれて、半ば強制的に唇を奪われる。
 
 苦しいくらいのキスなのに、ちっとも嫌じゃない。むしろもっとしてほしくて、舌が貪欲になっていく。

「はぁはぁ……な、永井くん……」

 薄目を開けると、暗闇の中に彼の顔が見える。ほんの少し上気したように見えるその顔は至極妖艶だ。

「あ、あの……」

 そうつぶやくと、手を掴まれて部屋の奥へと連れこまれる。

 リビングを通りすぎ、その向こうにある部屋のドアを彼は勢いよく開けた。
 
 月明かりが寝室のベッドを照らしている。荒々しくコートを剥がされ、どさっと押し倒された。

 それと同時に彼が覆いかぶさってきて、キスを落とす。
 
 舌で弄ばれると、頭がぼーっとしてくる。永井くんは私のシャツのボタンをプチプチと外していった。

「しゃ、シャワー浴びたい」

「だめです。相性いいか確かめるんでしょ」

 ジタバタと脚を動かしたところで全くの無駄。
あっという間に、シャツを剥がされてブラジャーをつけただけの上半身を彼の前に晒す。

「かわいい……」

「えっ?」

「いつもこんなかわいいの付けてるんですか?」

 オフホワイトの下着は、お気に入りのブランドのもの。褒められれば素直に嬉しくて、頬が熱くなる。
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