迷宮の主

大秦頼太

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冬のあほうつかい

冬のあほうつかい 17

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17

 氷の城の西側の山にある洞窟より列をなして骸骨たちが溢れ出てくる。この穴は迷宮の入り口に繋がっているがずっと長い縦穴であり人間が降りていくことは向かない。その穴を暗闇の中からわらわらと骸骨たちが這い上がってくる。
 骸骨たちは2つの塊に整列してみせると草原に向かって行進を始める。
 草原の中ほどではアステリア軍が進撃を開始していた。足をぬかるみに取られていたが着実に氷の城に近づいていた。
 アステリア軍の左斜後方から骸骨たちが襲いかかった。アステリア軍も接近に気が付かなかったわけではなく弓兵が矢を射かけるなどしていたが骸骨たちを止めることも出来ず、二千の骸骨たちは弓兵に見向きもせずに歩兵隊へ襲いかかったのだった。武器を持たない彼らはアステリア軍の歩兵に対して掴みかかったり噛み付いたりして絡みついて歩兵を地面に押し倒していく。そうなると弓兵たちは骸骨と一体化した味方を撃つことも出来ずに待機せざるを得なかった。
 そのタイミングで歩兵の上に氷の矢と槍が飛んでくる。槍が地面で弾けると霧が発生して周囲の視界を奪った。霧の中から悲鳴が上がる。おそらくは氷の花が咲き、回転して転がった兵たちを切り刻んでいるのだろう。
「引け! 引けぇ!」
 指揮官の声に反応して霧の中から飛び出してきたのは歩兵ではなく骸骨だった。今度は骸骨たちが弓兵や指揮官たちに襲いかかってくる。そうなるとアステリア軍は大混乱で弓兵は弓を捨てて散り散りになって逃げ出すし、指揮官も兵を捨てて逃げた。
 軍隊が霧散してしまうと骸骨たちは死んだアステリア兵を掴むと引きずりながら出てきた穴の方へ戻っていくのだった。中にはまだ息のあるものもいたが骸骨たちは構わずに引きずり連れ去っていった。
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