迷宮の主

大秦頼太

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冬のあほうつかい

冬のあほうつかい 10

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 草原の半分ほどが水浸しだった。これでは避難させた動物たちも戻ってこないかもしれない。
「シミュラ様、人が戻ってこない内に町にあふれている遺体をすべて迷宮に運びましょう。魔物たちを出してください。回収作業くらいだったら魔素は十分に保つはずです」
「あなたはこれを、最初からこれを?」
「悩んでいる暇はありません。死んでしまったものを味方につけるんです」
「気分がすぐれない」
「では、魔物の指揮権を僕にください。僕がやっておきますから」
 シミュラはサースの手を払う。
「それはわたくしの仕事です。彼らを殺したのもわたくしです。自分でやります」
 シミュラは山の西側にある洞窟から魔物を呼び出し、それを使役して町から死体を回収して洞窟の中に運び込んでいく。その数の多さと無惨な姿にシミュラの顔は青ざめ途中で何度か吐いたりもした。サースはそれを冷ややかに見ていた。
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