迷宮の主

大秦頼太

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迷宮の主

迷宮の主 49

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49

 ナサインは目を開いた。世界が回っているのを感じた。
「どうした?」
 声はかすれていた。
「なんだ?」
 シビトの声が聞こえた。身体は思うように動かなかった。起き上がろうと力をこめても鉛よりも思い空気がそこかしこにまとわり付いているようだった。
「まだ寝てたほうがいいわ」
「どうしたんだ?」
 かすれる声にイライラした。ウイカの声が聞こえた。
「倒れたのよ」
 誰が? と、一瞬思ったが、それがナサイン自身のことであることを理解するのはそれほど難しくはなかった。
「そうか」
 ナサインは体の力を抜いた。そうすると気持ちまで楽になるようだった。
「ここは?」
「階段ホールだ。地下七階があるのかは確認していないが、次が最深部だと助かるんだがな」
「本当だな」
 シビトが笑い声を上げるとナサインもそれに合わせた。空気を多く吸い込みすぎて咳き込むと誰かが身体を横向きに変えてくれた。
「魔素を取り込みすぎた」
「平気なの?」
 背中をさすってくれたのはウイカだった。
「不純物が溜まってるだけさ」
「じゃあ、出せばいいじゃない」
「簡単に言うな。物凄い毒みたいなもんなんだぞ。渦にぶち込むのが一番なんだ」
「そっか。じゃあ、早く行くしかないね」
「そう言う事」
 ナサインは両手を数回握り締めてみる。身体に力が戻ってくるのを感じた。
「魔素を補給していくか」
「いや、俺が何とかする」
 身体を起こすとシビトが拳を見せて笑っていた。
「お前に心配されるようじゃ、いよいよ終わりかもな」
「フフフ。人の優しさを素直に受け取れないとはな。小さい人間だ」
「次で最後さ」
 ナサインは膝に手を付いて立ち上がる。シビトの手から黒い炎の点いた骨を奪い取った。
「時間と資材を見ると七階はないよ」
「何故、言い切れる?」
「さっきの通路は材料が足りなかったから、道が無かっただけだ」
「ほお」
「ほんとなの?」
「推測」
 ナサインはニヤリと笑った。ウイカがナサインの背中を叩いた。
「バカ」
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