80 / 96
迷宮の主
迷宮の主 37
しおりを挟む
37
シビトが通路を歩いて戻ってくる。その後からついてくる者も近寄ってくる者も誰一人いなかった。
「終わりか?」
ネジフが声をかけるとシビトは前の手を左右に握り締めて、叫び声をあげる。あまりに大きな声にネジフが耳を塞ぐ。
「うるせえなぁ」
声と共にシビトの背中から腕が消え、漆黒の面のようなものも剥がれ落ちる。ガシャガシャと音を立てて床の上に転がるそれは徐々に空気の中に溶けて行くのだった。シビトのさらに叫び声は続き、ネジフの前でシビトは素っ裸になってしまう。
「お前バカだろ? 変態か?」
それから両手を合わせて黒い煙を吐く。煙はシビトの身体を覆うと、服に変化した。迷宮とついさっきまでの殺戮に似合わない普段着のような服だった。
「少し、使いすぎた」
「やりすぎだろ」
「ああ」
シビトは後ろを振り返ると潰れた兵士たちの姿を見る。
「何かこう、下から湧き上がる闘争心みたいなものを感じて、興奮しすぎたみたいだ」
「俺も少しわかるな」
「おじさん!」
階段を上ってくるウイカが目の前の参上を見て口を手で押さえてうずくまった。。シビトはウイカの視線を通路からさえぎるように階段へ向かっていく。
「下に行こう」
「なんか落ちてるぞ?」
ネジフが空気に消え残ったシビトの装備の残骸を指差す。それを見てシビトの表情が固まったネジフが戦斧でそれを手繰り寄せる。
「何だこれ? 鍵か?」
ネジフの脇からシビトが黒い鍵を拾い上げる。
「なんだ?」
その動きがとても早かったので、ネジフにはかえって不審がられてしまった。シビトはウイカを支えながら階段を早足で歩いていく。その後からニヤニヤしながらネジフが歩いてくる。
「それ、あれだろ?」
シビトは舌打ちをする。
「だからなんだ」
「お前、バカで変態だな」
とうとうこらえきれなくなったのかネジフは階段の途中で座り込んで大笑いをする。
「お前、面白いな」
ウイカがシビトの体から離れて階段の隅で嘔吐する。
「んだよ、汚ねえな」
ネジフが笑うのをやめて階段を降りていく。シビトがウイカの背中をさすってやると、ウイカは口をぬぐって立ち上がる。
「ごめん。あんなの初めて見たから」
「気にするな」
シビトはウイカに手を貸しながら階段を降りていった。
シビトが通路を歩いて戻ってくる。その後からついてくる者も近寄ってくる者も誰一人いなかった。
「終わりか?」
ネジフが声をかけるとシビトは前の手を左右に握り締めて、叫び声をあげる。あまりに大きな声にネジフが耳を塞ぐ。
「うるせえなぁ」
声と共にシビトの背中から腕が消え、漆黒の面のようなものも剥がれ落ちる。ガシャガシャと音を立てて床の上に転がるそれは徐々に空気の中に溶けて行くのだった。シビトのさらに叫び声は続き、ネジフの前でシビトは素っ裸になってしまう。
「お前バカだろ? 変態か?」
それから両手を合わせて黒い煙を吐く。煙はシビトの身体を覆うと、服に変化した。迷宮とついさっきまでの殺戮に似合わない普段着のような服だった。
「少し、使いすぎた」
「やりすぎだろ」
「ああ」
シビトは後ろを振り返ると潰れた兵士たちの姿を見る。
「何かこう、下から湧き上がる闘争心みたいなものを感じて、興奮しすぎたみたいだ」
「俺も少しわかるな」
「おじさん!」
階段を上ってくるウイカが目の前の参上を見て口を手で押さえてうずくまった。。シビトはウイカの視線を通路からさえぎるように階段へ向かっていく。
「下に行こう」
「なんか落ちてるぞ?」
ネジフが空気に消え残ったシビトの装備の残骸を指差す。それを見てシビトの表情が固まったネジフが戦斧でそれを手繰り寄せる。
「何だこれ? 鍵か?」
ネジフの脇からシビトが黒い鍵を拾い上げる。
「なんだ?」
その動きがとても早かったので、ネジフにはかえって不審がられてしまった。シビトはウイカを支えながら階段を早足で歩いていく。その後からニヤニヤしながらネジフが歩いてくる。
「それ、あれだろ?」
シビトは舌打ちをする。
「だからなんだ」
「お前、バカで変態だな」
とうとうこらえきれなくなったのかネジフは階段の途中で座り込んで大笑いをする。
「お前、面白いな」
ウイカがシビトの体から離れて階段の隅で嘔吐する。
「んだよ、汚ねえな」
ネジフが笑うのをやめて階段を降りていく。シビトがウイカの背中をさすってやると、ウイカは口をぬぐって立ち上がる。
「ごめん。あんなの初めて見たから」
「気にするな」
シビトはウイカに手を貸しながら階段を降りていった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
龍騎士イリス☆ユグドラシルの霊樹の下で
ウッド
ファンタジー
霊樹ユグドラシルの根っこにあるウッドエルフの集落に住む少女イリス。
入ったらダメと言われたら入り、登ったらダメと言われたら登る。
ええい!小娘!ダメだっちゅーとろーが!
だからターザンごっこすんなぁーーー!!
こんな破天荒娘の教育係になった私、緑の大精霊シルフェリア。
寿命を迎える前に何とかせにゃならん!
果たして暴走小娘イリスを教育する事が出来るのか?!
そんな私の奮闘記です。
しかし途中からあんまし出てこなくなっちゃう・・・
おい作者よ裏で話し合おうじゃないか・・・
・・・つーかタイトル何とかならんかったんかい!
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。
名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!
まったりー
ファンタジー
転生した主人公は、平民でありながらダンジョンを作る力を持って生まれ、その力を持った者の定めとなる貴族入りが確定します。
ですが主人公は、普通の暮らしを目指し目立たない様振る舞いますが、ダンジョンを作る事しか出来ない能力な為、奮闘してしまいます。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる