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第四場
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●第四場
夜明けの道。暗転幕があればその前。
A、C、F下手から歩いてくる。
A しかし、これと言った情報はなかったな。
C こういうのなんて言うんだっけ? くびれがどうのって。
F くたびれ儲けだろ?
A 何だよくびれって。
C くびれも知らないのかよ。くびれって言うのは。
A 骨折り損のくたびれ儲けか。
C ああ、それそれ。
F で、あの子どうする?
C 人買いに売れば酒代くらいにはなるんじゃないか?
A んー。そうだなぁ。
3人の目の前にフードを深くかぶった老婆が上手より1人やってくる。
C 誰か来る。
F おばあさんかな?
C あんまり、金目のものは持ってなさそうだが、どうする?
F どうする?
A 1、2、3で襲い掛かるぞ。ふんじばってから財布を調べりゃいい。
CF おう。
老婆、立ち止まる。
A 1、2の3!
飛び出す3人。
老婆 4!
A 5。
C 6。
F 7。
老婆 お前たちだね? 町で噂話を聞き集めていたのは……。
A 何のことだか。
F そうだよ。
C おい。
老婆 そうだと思ったよ。
A まぁ、仮にそうだとして、何の用だ?
老婆 お前たちに頼みたいことがあるのさ。
C 頼みたいこと?
A お断りだね。
F 怪しい話には気をつけろって言われてるからな。
老婆 成功したら、金貨10枚やろう。
A やろう。
C 何でも言ってくれ。
F 肩でももんじゃおうかな。
老婆 詳しいことは、この手紙を見るんだね。
老婆、手紙をAに渡す。そのままそそくさと去っていく。
A おい、待てよ。
と言いつつ手紙を開く。C、F寄ってきて覗き込む。
C なんて書いてあるんだ?
F 早く聞かせてくれよ。
A なんてこった。
C もったいぶるなよ。
F 教えてくれよ。
A ……俺は字がよめねえんだ。
暗転。
暗転幕上がり森の中の山小屋に朝が来る。
小屋の中は、きれいに片付けられている。
Aがドタドタと入ってくる。
A 戻ったぞ。
片付けられた室内を見て、驚く。
A 大変だ! 泥棒だ!
奥から飛び出してくる一同。
B 泥棒だ!
C こりゃ一体なんだ。
D どこだ泥棒は!
E 何をとられた?
F うわぁ、きれい。
G 泥棒って?
姫 朝からうるさいわね。
A 何でこいつが自由にしているんだ?
姫 この人たち、私の家来になったのよ。
A 何だと?
B あのね、魚の美味しい食べ方を教えてくれたんだよ。
C 嘘。
D まぁ、家来は少しの間だけな。
E そうそう。
F 楽しそう。
G 名前を貰ったしね。
A 名前?
G 俺はジョージ。
B 僕はヘンリー。
D スチュワート。
E エドガーだ。
F おお、いいなぁ。
姫 あなたたちにも用意してるのよ。
F 俺には?
姫 あなた何番目に入ってきたの?
F 最後。
姫 じゃあ、ロバートね。その前は誰?
C ん? 俺だ。
姫 じゃあ、あなたがハロルドで、(Aに)あなたはリチャード。
D おめでとう。ロバート。
F ありがとう。スチュワート?
G みんなに名前がついた!
B これで喧嘩がひとつ減ったね。
はしゃぎまわる一同。Aが怒鳴る。
A ばかやろう!
静まり返る。
A 大の大人が名前を貰ったくらいで、何を喜んでいるんだ。大体こいつは人質だぞ?
お遊びもいい加減にしろってんだ。
姫 残念だけど、それは昨日までの話よ。
A 何?
姫 こっち側は私を入れて5人。あなたたちは3人しかいないじゃない。
A 何をバカな。おい、そいつをふんじばれ。
C おう。
C、姫を捕らえようとするが、B、D、E、Gに阻まれる。
C 何だよ。
D 悪いな。
E 一晩寝たら、名前があるのも悪くないかなって。
D な。
E おう。
F 何の関係があるの?
B 家来を辞めるってことは、名前を取り上げられるってことさ。
A ばかばかしい。そんなに名前が欲しいなら、俺がつけてやる。
他6 おお!
B 僕は?
A 食いしん坊。
C 俺は?
A 卑怯者。
D 俺には?
A こうもり。
E 俺は?
A 優柔不断。
F じゃあじゃあ、俺には?
A すっとこどっこい。
G 俺は何?
A お人よし。
姫 じゃあ、自分はなんて名前なの?
A 俺か? 俺は、決断力があってとても優しい頼りがいのあるボスだ。
B 長い名前。覚えられない。
C センスないね。
D まったくだね。
E 自分勝手だな。
F 俺もそっちに行く。
G おいでおいで。
2対6になる。こっそりと姫たちのほうに行こうとするC。
A 貴様、どこに行く。
C (ぎくり)向こうに忘れ物が……。
A 俺を一人にすると、後でひどい目に合わすからな。
C ず、ずるい。
姫 誰が、決断力があってとても優しい頼りがいのあるボスなのかしら?
B そうだそうだ。
A お前ら、本当にいいのか?
F 何が?
G 別にリチャードがいなくても困らないしなぁ。
A リチャードって呼ぶな!
C じゃあなんて呼べばいいんだよ。
A 決断力があってとても優しい頼りがいのあるボス。
B 無理。長い名前は覚えられない。
D めんどくさいし。
E 今新しい名前が出てきて、ごちゃごちゃになってるしね。
A じゃあ、ボスでどうだ?
一同 え~~!
F ボスってリーダーみたいなことでしょ?
G そうなるな。
F ここは公正に決めるべきだよ。
C 公正にだって? 俺たちには不似合いの言葉だ。
B ご飯の早食いで決めよう。
E いやいや、賭けで決めよう。
F 待って、さっき手紙を貰ったんだけどさ。
A ああ、あれか。
G 手紙? 誰から?
C ばあさんだ。
E ばあさんからラブレターもらったのか?
D で、何だって?。
F それがリチャードもハロルドも読めなくてさ。
E ハロルドって誰だっけ?
C 俺、俺。俺、ハロルド。
A 俺に読めない物が、こいつらに読めるわけないだろうが。
G まあ、そうなるな。
姫 ちょっと貸しなさいよ。
A お前みたいな子どもに分かるわけないだろうが。
C 引っ込んでな。
B ご飯の支度でもしようか。
F この子がお姫様なら、読めると思うんだけど、どうかな?
一同 それはもっともだ。
A よし読んでみろ。
C 大きな声でな。
姫 いいわよ。
姫、Aから手紙をひったくるように奪う。
姫 森に迷い込んだ小娘を見つけたら、ころ……
E ころ?
B 顔色が悪いけど大丈夫?
F 続きはなんて書いてあるの?
姫 ……殺されないように、守ってやること。
A 何?
C お前を守れって?
姫 ……そうみたいね。
E 本当か?
A ちょっと貸してみろ。
姫から手紙を奪い取ると、じっと眺める。しかし字が読めないので、どうにもなら
ない。
A ふむう。
姫 それから、手紙は読んだら燃やすようにって書いてあるわ。
C 森に迷い込んだ娘って、これのことかな?
E どういうこと?
C 娘って言うより、子どもだからな。
姫 何よこの!
姫、Cのすねを蹴り上げる。
C やりやがったな!
C、姫を捕まえる。
姫 お前たち助けなさい!
A以外、Cを取り押さえる。
C 何なんだよ。
D いや、なんとなく。
E そう、なんとなく。
C なんとなくって何だよ。
B なんとなくは、なんとなくだよ。
F それよりお腹空いたよ。
A まて! 誰がリーダーか決めるのが先だ!
姫 確かにお腹が空いたわね。ご飯にしましょう!
他6 ご飯ご飯!
A おい、こら!
B どうしよう、何もないよ!
姫 あんたたち本当にどうしようもないのね。
F だって、ねぇ。
E (Bに)こいつが食べすぎなんだよ。
B だって残したらもったいないじゃん。
G お前が狩りに行って来い!
D それが良い!
C 獲れるまで帰ってくるなよ。
B そんな、飢え死にしちゃうよ。
A 早速、リーダーの出番のようだな。
姫 あんたたち! そんなつまらない言い合いしてないで、みんなで何か探しにいくわ
よ!
7人 えー!
姫 大の大人が、こんなに沢山いて喧嘩するしかできないの?
D だって、
E ねぇ?
F なぁ?
G うん。
C おう。
B お腹空いた。
A なんでお前が仕切るんだよ!
姫 もう、本当にうるさいのね。
A お前もな!
姫 じゃあ、二手に分かれて食べ物を探しにいきましょう。
A だから、何でお前が仕切るんだ!
C お前、誰かに狙われてるんじゃないのか?
姫 それを守るのがあなたたちの仕事でしょう。
G まかせときな。
D ジョージがやるってさ。
A 任せた。
C 頼んだよ。
E じゃあ、安心だね。
F よかったよかった。
B お腹空いたよ。
姫 行くわよ。
姫真っ先に外に出て行く。それに続いていく大人たち。最後にA。ため息をつきつ
つ外に出る。
暗転。
暗転幕前。
森の中。上手より。ACDEFがやってくる。
E 何かいるかなぁ
F 肉が食いたいな
A おい。このままじゃやばいぞ
C 何が?
F どうした?
A あの小屋は誰のもんだ?
F 俺たちのもんだろ?
C 俺たちのもんだよ?
A そうだ。だがな、あの小娘のせいで俺たちはないがしろになっている。
F ないがしろ。
C ないがしろ。
A そうだ。
D 何が白?
E 何かいたの?
A うるさい。こっちにこい。
CDEF寄る。
A ここで主導権を取り返すには、強引な手段が必要だ。
F どんな?
A あいつを殺す。
D ひでえ。
F なんてことを!
E ろくでなし。
C いくらなんでもそれは可愛そうだろ。
A そうだ。だが、俺たちも譲れないんだ。
E だからってあんな小さい子を殺すなんてひどすぎる。
C いくら生意気で。
F 口うるさくて、
D 面倒くさくても、
E 殺すなんてひどすぎる。
A 俺もそう思う。だからな、本当に殺すんじゃなくて死んだことにするんだ。
F はい?
D 言ってる意味が分からん。
A あいつが死んだことにすれば、あいつが命を狙われることはなくなるわけだ。そう
すればここにいる理由もない。
E おお、なるほど。
C でも、金貨がもらえなくなるぞ。あの子が死んだら守れなかったってことじゃない
か。
A それはもうこの際、あきらめよう。俺たちの暮らしを取り戻そう。あいつが来てか
ら何もかもがめちゃくちゃだ。
D なるほど。
F でも、追い出すのもかわいそうだな。
A いいか、このままじゃ、好き放題出来なくなるぞ。何もかもあいつに仕切られて
な! お前たちは、それでいいのか?
E 俺は別にかまわないけど。
A 昼まで寝てられなくなるんだぞ!
C それは困るな。
A 盗みだって、(姫のまねをする)それは悪いことよ! なんて言い出しかねない。
それでもいいのか?
F おう。それはつまらない。
A 酒も毎日飲めなくなるかもしれない!
D 冗談じゃない!
A 今こそ、追い出そう!
C よし追い出そう!
D 追い出そう!
E 追い出そう!
F 追い出そう!
A で、相談だ。どうやって追い出そうか?
C どうやる?
D どうする?
E お前考えて。
F 俺わかんね。やっぱりお前考えて。
A もっとしっかり考えろ。どいつもこいつも使えないな。
他4 お前もな。
A とにかく何かいい方法はないものか。
下手から狩人がやってくる。
狩人 おい。お前たち。
5人 ああん?
狩人 (びびる)あ、ちょっとお聞きしてもよろしいですか?
A なんだ?
C 道なら自分で見つけろ。
E この森の肉は俺たちのだからな。ウサギ一匹盗むんじゃねえぞ!
狩人 いえいえ、ここに小さな女の子が来なかったですか?
A 小さな女の子?
C あの子のことか?
E あの子を探してるのか?
F あーーー!
あまりの声の大きさにみんな驚く。
A うるせえな!
F あいつ殺し屋じゃない?
D 何?
狩人 何をコソコソ話しているんですか?
E うるせえ、何でもねぇ!
C 黙ってそっちの隅で待ってろ!
狩人 はい。
狩人、下手寄りにすごすごと歩いていく。
A ひらめいた!
C 何!
D どうした?
E お?
F 何々?
狩人 どうしました?(近づいていく)
5人 お前は引っ込んでろ!
狩人 すみません。(すごすごと戻る)
A あいつを捕まえて身ぐるみをはぐ。
C ほおほお。
E それで?
A あいつが殺し屋なら、雇い主がいるよな?
F いるだろうな。
D そんなの当たり前だろ。
A まぁ、最後まで聞け。そうして、あいつの代わりに報告に行くんだ。そうすると、
報酬がもらえて、しかも……。
C うるさいのも追い出せる。
E さえてる!
F さすがリーダー!
A もっと言ってくれ。
D リーダーかっこいい。
C リーダー頭いい!
E こんなにいいリーダーを持って俺たちは幸せだ。
A いやいや、そんなに褒めるなよ。
C じゃあ、早くしろこのグズ。
D お前が言い出したんだからお前が行けろくでなし。
E ほれほれ捕まえてこい。
F グズグズしやがってまったく使えねえな。
A 褒めるなとは言ったが、けなせとは言ってない。
C で、まずどうするの?
A どうするもこうするもふんじばって、身包み剥いで熊か狼のえさだな。
D 分かりやすい。
E 本当だ。
F じゃ。
C 早速、
A はじめますか。
狩人、寒気を感じる。
5人 おい。
狩人 はい。
A ちょっとこっちに来い。
狩人 はい?
C いいからいいから。
真ん中に狩人。取り囲む大人たち。その顔は不気味なほど微笑んでいる。
5人 せーの!
狩人に飛び掛る大人たち。
暗転。
狩人 やめてぇ~!!!
夜明けの道。暗転幕があればその前。
A、C、F下手から歩いてくる。
A しかし、これと言った情報はなかったな。
C こういうのなんて言うんだっけ? くびれがどうのって。
F くたびれ儲けだろ?
A 何だよくびれって。
C くびれも知らないのかよ。くびれって言うのは。
A 骨折り損のくたびれ儲けか。
C ああ、それそれ。
F で、あの子どうする?
C 人買いに売れば酒代くらいにはなるんじゃないか?
A んー。そうだなぁ。
3人の目の前にフードを深くかぶった老婆が上手より1人やってくる。
C 誰か来る。
F おばあさんかな?
C あんまり、金目のものは持ってなさそうだが、どうする?
F どうする?
A 1、2、3で襲い掛かるぞ。ふんじばってから財布を調べりゃいい。
CF おう。
老婆、立ち止まる。
A 1、2の3!
飛び出す3人。
老婆 4!
A 5。
C 6。
F 7。
老婆 お前たちだね? 町で噂話を聞き集めていたのは……。
A 何のことだか。
F そうだよ。
C おい。
老婆 そうだと思ったよ。
A まぁ、仮にそうだとして、何の用だ?
老婆 お前たちに頼みたいことがあるのさ。
C 頼みたいこと?
A お断りだね。
F 怪しい話には気をつけろって言われてるからな。
老婆 成功したら、金貨10枚やろう。
A やろう。
C 何でも言ってくれ。
F 肩でももんじゃおうかな。
老婆 詳しいことは、この手紙を見るんだね。
老婆、手紙をAに渡す。そのままそそくさと去っていく。
A おい、待てよ。
と言いつつ手紙を開く。C、F寄ってきて覗き込む。
C なんて書いてあるんだ?
F 早く聞かせてくれよ。
A なんてこった。
C もったいぶるなよ。
F 教えてくれよ。
A ……俺は字がよめねえんだ。
暗転。
暗転幕上がり森の中の山小屋に朝が来る。
小屋の中は、きれいに片付けられている。
Aがドタドタと入ってくる。
A 戻ったぞ。
片付けられた室内を見て、驚く。
A 大変だ! 泥棒だ!
奥から飛び出してくる一同。
B 泥棒だ!
C こりゃ一体なんだ。
D どこだ泥棒は!
E 何をとられた?
F うわぁ、きれい。
G 泥棒って?
姫 朝からうるさいわね。
A 何でこいつが自由にしているんだ?
姫 この人たち、私の家来になったのよ。
A 何だと?
B あのね、魚の美味しい食べ方を教えてくれたんだよ。
C 嘘。
D まぁ、家来は少しの間だけな。
E そうそう。
F 楽しそう。
G 名前を貰ったしね。
A 名前?
G 俺はジョージ。
B 僕はヘンリー。
D スチュワート。
E エドガーだ。
F おお、いいなぁ。
姫 あなたたちにも用意してるのよ。
F 俺には?
姫 あなた何番目に入ってきたの?
F 最後。
姫 じゃあ、ロバートね。その前は誰?
C ん? 俺だ。
姫 じゃあ、あなたがハロルドで、(Aに)あなたはリチャード。
D おめでとう。ロバート。
F ありがとう。スチュワート?
G みんなに名前がついた!
B これで喧嘩がひとつ減ったね。
はしゃぎまわる一同。Aが怒鳴る。
A ばかやろう!
静まり返る。
A 大の大人が名前を貰ったくらいで、何を喜んでいるんだ。大体こいつは人質だぞ?
お遊びもいい加減にしろってんだ。
姫 残念だけど、それは昨日までの話よ。
A 何?
姫 こっち側は私を入れて5人。あなたたちは3人しかいないじゃない。
A 何をバカな。おい、そいつをふんじばれ。
C おう。
C、姫を捕らえようとするが、B、D、E、Gに阻まれる。
C 何だよ。
D 悪いな。
E 一晩寝たら、名前があるのも悪くないかなって。
D な。
E おう。
F 何の関係があるの?
B 家来を辞めるってことは、名前を取り上げられるってことさ。
A ばかばかしい。そんなに名前が欲しいなら、俺がつけてやる。
他6 おお!
B 僕は?
A 食いしん坊。
C 俺は?
A 卑怯者。
D 俺には?
A こうもり。
E 俺は?
A 優柔不断。
F じゃあじゃあ、俺には?
A すっとこどっこい。
G 俺は何?
A お人よし。
姫 じゃあ、自分はなんて名前なの?
A 俺か? 俺は、決断力があってとても優しい頼りがいのあるボスだ。
B 長い名前。覚えられない。
C センスないね。
D まったくだね。
E 自分勝手だな。
F 俺もそっちに行く。
G おいでおいで。
2対6になる。こっそりと姫たちのほうに行こうとするC。
A 貴様、どこに行く。
C (ぎくり)向こうに忘れ物が……。
A 俺を一人にすると、後でひどい目に合わすからな。
C ず、ずるい。
姫 誰が、決断力があってとても優しい頼りがいのあるボスなのかしら?
B そうだそうだ。
A お前ら、本当にいいのか?
F 何が?
G 別にリチャードがいなくても困らないしなぁ。
A リチャードって呼ぶな!
C じゃあなんて呼べばいいんだよ。
A 決断力があってとても優しい頼りがいのあるボス。
B 無理。長い名前は覚えられない。
D めんどくさいし。
E 今新しい名前が出てきて、ごちゃごちゃになってるしね。
A じゃあ、ボスでどうだ?
一同 え~~!
F ボスってリーダーみたいなことでしょ?
G そうなるな。
F ここは公正に決めるべきだよ。
C 公正にだって? 俺たちには不似合いの言葉だ。
B ご飯の早食いで決めよう。
E いやいや、賭けで決めよう。
F 待って、さっき手紙を貰ったんだけどさ。
A ああ、あれか。
G 手紙? 誰から?
C ばあさんだ。
E ばあさんからラブレターもらったのか?
D で、何だって?。
F それがリチャードもハロルドも読めなくてさ。
E ハロルドって誰だっけ?
C 俺、俺。俺、ハロルド。
A 俺に読めない物が、こいつらに読めるわけないだろうが。
G まあ、そうなるな。
姫 ちょっと貸しなさいよ。
A お前みたいな子どもに分かるわけないだろうが。
C 引っ込んでな。
B ご飯の支度でもしようか。
F この子がお姫様なら、読めると思うんだけど、どうかな?
一同 それはもっともだ。
A よし読んでみろ。
C 大きな声でな。
姫 いいわよ。
姫、Aから手紙をひったくるように奪う。
姫 森に迷い込んだ小娘を見つけたら、ころ……
E ころ?
B 顔色が悪いけど大丈夫?
F 続きはなんて書いてあるの?
姫 ……殺されないように、守ってやること。
A 何?
C お前を守れって?
姫 ……そうみたいね。
E 本当か?
A ちょっと貸してみろ。
姫から手紙を奪い取ると、じっと眺める。しかし字が読めないので、どうにもなら
ない。
A ふむう。
姫 それから、手紙は読んだら燃やすようにって書いてあるわ。
C 森に迷い込んだ娘って、これのことかな?
E どういうこと?
C 娘って言うより、子どもだからな。
姫 何よこの!
姫、Cのすねを蹴り上げる。
C やりやがったな!
C、姫を捕まえる。
姫 お前たち助けなさい!
A以外、Cを取り押さえる。
C 何なんだよ。
D いや、なんとなく。
E そう、なんとなく。
C なんとなくって何だよ。
B なんとなくは、なんとなくだよ。
F それよりお腹空いたよ。
A まて! 誰がリーダーか決めるのが先だ!
姫 確かにお腹が空いたわね。ご飯にしましょう!
他6 ご飯ご飯!
A おい、こら!
B どうしよう、何もないよ!
姫 あんたたち本当にどうしようもないのね。
F だって、ねぇ。
E (Bに)こいつが食べすぎなんだよ。
B だって残したらもったいないじゃん。
G お前が狩りに行って来い!
D それが良い!
C 獲れるまで帰ってくるなよ。
B そんな、飢え死にしちゃうよ。
A 早速、リーダーの出番のようだな。
姫 あんたたち! そんなつまらない言い合いしてないで、みんなで何か探しにいくわ
よ!
7人 えー!
姫 大の大人が、こんなに沢山いて喧嘩するしかできないの?
D だって、
E ねぇ?
F なぁ?
G うん。
C おう。
B お腹空いた。
A なんでお前が仕切るんだよ!
姫 もう、本当にうるさいのね。
A お前もな!
姫 じゃあ、二手に分かれて食べ物を探しにいきましょう。
A だから、何でお前が仕切るんだ!
C お前、誰かに狙われてるんじゃないのか?
姫 それを守るのがあなたたちの仕事でしょう。
G まかせときな。
D ジョージがやるってさ。
A 任せた。
C 頼んだよ。
E じゃあ、安心だね。
F よかったよかった。
B お腹空いたよ。
姫 行くわよ。
姫真っ先に外に出て行く。それに続いていく大人たち。最後にA。ため息をつきつ
つ外に出る。
暗転。
暗転幕前。
森の中。上手より。ACDEFがやってくる。
E 何かいるかなぁ
F 肉が食いたいな
A おい。このままじゃやばいぞ
C 何が?
F どうした?
A あの小屋は誰のもんだ?
F 俺たちのもんだろ?
C 俺たちのもんだよ?
A そうだ。だがな、あの小娘のせいで俺たちはないがしろになっている。
F ないがしろ。
C ないがしろ。
A そうだ。
D 何が白?
E 何かいたの?
A うるさい。こっちにこい。
CDEF寄る。
A ここで主導権を取り返すには、強引な手段が必要だ。
F どんな?
A あいつを殺す。
D ひでえ。
F なんてことを!
E ろくでなし。
C いくらなんでもそれは可愛そうだろ。
A そうだ。だが、俺たちも譲れないんだ。
E だからってあんな小さい子を殺すなんてひどすぎる。
C いくら生意気で。
F 口うるさくて、
D 面倒くさくても、
E 殺すなんてひどすぎる。
A 俺もそう思う。だからな、本当に殺すんじゃなくて死んだことにするんだ。
F はい?
D 言ってる意味が分からん。
A あいつが死んだことにすれば、あいつが命を狙われることはなくなるわけだ。そう
すればここにいる理由もない。
E おお、なるほど。
C でも、金貨がもらえなくなるぞ。あの子が死んだら守れなかったってことじゃない
か。
A それはもうこの際、あきらめよう。俺たちの暮らしを取り戻そう。あいつが来てか
ら何もかもがめちゃくちゃだ。
D なるほど。
F でも、追い出すのもかわいそうだな。
A いいか、このままじゃ、好き放題出来なくなるぞ。何もかもあいつに仕切られて
な! お前たちは、それでいいのか?
E 俺は別にかまわないけど。
A 昼まで寝てられなくなるんだぞ!
C それは困るな。
A 盗みだって、(姫のまねをする)それは悪いことよ! なんて言い出しかねない。
それでもいいのか?
F おう。それはつまらない。
A 酒も毎日飲めなくなるかもしれない!
D 冗談じゃない!
A 今こそ、追い出そう!
C よし追い出そう!
D 追い出そう!
E 追い出そう!
F 追い出そう!
A で、相談だ。どうやって追い出そうか?
C どうやる?
D どうする?
E お前考えて。
F 俺わかんね。やっぱりお前考えて。
A もっとしっかり考えろ。どいつもこいつも使えないな。
他4 お前もな。
A とにかく何かいい方法はないものか。
下手から狩人がやってくる。
狩人 おい。お前たち。
5人 ああん?
狩人 (びびる)あ、ちょっとお聞きしてもよろしいですか?
A なんだ?
C 道なら自分で見つけろ。
E この森の肉は俺たちのだからな。ウサギ一匹盗むんじゃねえぞ!
狩人 いえいえ、ここに小さな女の子が来なかったですか?
A 小さな女の子?
C あの子のことか?
E あの子を探してるのか?
F あーーー!
あまりの声の大きさにみんな驚く。
A うるせえな!
F あいつ殺し屋じゃない?
D 何?
狩人 何をコソコソ話しているんですか?
E うるせえ、何でもねぇ!
C 黙ってそっちの隅で待ってろ!
狩人 はい。
狩人、下手寄りにすごすごと歩いていく。
A ひらめいた!
C 何!
D どうした?
E お?
F 何々?
狩人 どうしました?(近づいていく)
5人 お前は引っ込んでろ!
狩人 すみません。(すごすごと戻る)
A あいつを捕まえて身ぐるみをはぐ。
C ほおほお。
E それで?
A あいつが殺し屋なら、雇い主がいるよな?
F いるだろうな。
D そんなの当たり前だろ。
A まぁ、最後まで聞け。そうして、あいつの代わりに報告に行くんだ。そうすると、
報酬がもらえて、しかも……。
C うるさいのも追い出せる。
E さえてる!
F さすがリーダー!
A もっと言ってくれ。
D リーダーかっこいい。
C リーダー頭いい!
E こんなにいいリーダーを持って俺たちは幸せだ。
A いやいや、そんなに褒めるなよ。
C じゃあ、早くしろこのグズ。
D お前が言い出したんだからお前が行けろくでなし。
E ほれほれ捕まえてこい。
F グズグズしやがってまったく使えねえな。
A 褒めるなとは言ったが、けなせとは言ってない。
C で、まずどうするの?
A どうするもこうするもふんじばって、身包み剥いで熊か狼のえさだな。
D 分かりやすい。
E 本当だ。
F じゃ。
C 早速、
A はじめますか。
狩人、寒気を感じる。
5人 おい。
狩人 はい。
A ちょっとこっちに来い。
狩人 はい?
C いいからいいから。
真ん中に狩人。取り囲む大人たち。その顔は不気味なほど微笑んでいる。
5人 せーの!
狩人に飛び掛る大人たち。
暗転。
狩人 やめてぇ~!!!
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人魚奇譚CLARISSA
大秦頼太
児童書・童話
人魚奇譚三部作CLARISSA・ISABELLA・SIRENAをまとめました。
皆さんが知っている人魚とは少しだけルールやなんかが違うと思います。
本来は脚本として使いながら仕上げるのですが、現在はそういった団体に属していないので細かい指示や諸注意などは書き込めておりません。
声劇などで使いたい場合は声をかけていただければ基本的にOKします。
●扉絵は舞台化する場合人魚の両足が使えるように片足がヒレで、もう一方が水や泡を表すというようなイメージ画です。
※海部守は脚本用PNです。
時期がズレて書いていたので、ちょっと繋がりがおかしいところもあるかもしれません。
子猫マムと雲の都
杉 孝子
児童書・童話
マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。
マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。
フラワーキャッチャー
東山未怜
児童書・童話
春、中学1年生の恵梨は登校中、車に轢かれそうになったところを転校生・咲也(さくや)に突き飛ばされて助けられる。
実は咲也は花が絶滅した魔法界に花を甦らせるため、人の心に咲く花を集めに人間界にやってきた、「フラワーキャッチャー」だった。
けれど助けられたときに、咲也の力は恵梨に移ってしまった。
これからは恵梨が咲也の代わりに、人の心の花を集めることが使命だと告げられる。
恵梨は魔法のペンダントを預けられ、戸惑いながらもフラワーキャッチャーとしてがんばりはじめる。
お目付け役のハチドリ・ブルーベルと、ケンカしつつも共に行動しながら。
クラスメートの女子・真希は、恵梨の親友だったものの、なぜか小学4年生のあるときから恵梨に冷たくなった。さらには、咲也と親しげな恵梨をライバル視する。
合唱祭のピアノ伴奏に決まった恵梨の友人・奏子(そうこ)は、飼い猫が死んだ悲しみからピアノが弾けなくなってしまって……。
児童向けのドキワクな現代ファンタジーを、お楽しみいただけたら♪
小さな歌姫と大きな騎士さまのねがいごと
石河 翠
児童書・童話
むかしむかしとある国で、戦いに疲れた騎士がいました。政争に敗れた彼は王都を離れ、辺境のとりでを守っています。そこで彼は、心優しい小さな歌姫に出会いました。
歌姫は彼の心を癒し、生きる意味を教えてくれました。彼らはお互いをかけがえのないものとしてみなすようになります。ところがある日、隣の国が攻めこんできたという知らせが届くのです。
大切な歌姫が傷つくことを恐れ、歌姫に急ぎ逃げるように告げる騎士。実は高貴な身分である彼は、ともに逃げることも叶わず、そのまま戦場へ向かいます。一方で、彼のことを諦められない歌姫は騎士の後を追いかけます。しかし、すでに騎士は敵に囲まれ、絶対絶命の危機に陥っていました。
愛するひとを傷つけさせたりはしない。騎士を救うべく、歌姫は命を賭けてある決断を下すのです。戦場に美しい花があふれたそのとき、騎士が目にしたものとは……。
恋した騎士にすべてを捧げた小さな歌姫と、彼女のことを最後まで待ちつづけた不器用な騎士の物語。
扉絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
ミズルチと〈竜骨の化石〉
珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。
一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。
ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。
カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。
にじいろの ねこ
倉澤 環(タマッキン)
児童書・童話
それぞれに悩みを抱えたたまごたちが猫と出会い、素敵な色と心をプレゼントされます。
でも、自分の力を全てあげてしまったねこは、パッタリと倒れてしまいます。
たまごたちと猫のあたたかいお話です。
短い短いお話です。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
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