Vicky!

大秦頼太

文字の大きさ
上 下
39 / 42
ショートバージョン

第十五場

しおりを挟む
●第十五場● 谷2 夜
   黒豹を先頭にビッキーとマーゴが手を取りながら下手奥から歩いてくる。

ビッキー 真っ暗でここがどこなのかも分からないわ。
マーゴ  本当にあってるの? 怖い。
黒豹   黙ってついておいで。

   悪魔大が行く手をふさぐ。

悪魔大  誰だ!
黒豹   お前こそ誰だ!
悪魔大  お前が答えたら答えてやる。
黒豹   よし、じゃあ答えない。行こうぜ。

   通り抜けようとする。

悪魔大  ちょっと待て。
黒豹   待たない。急いでるの。じゃあね。
悪魔大  なぜ急いでいる? お腹が空いているのか?
黒豹   違うよ。早く子羊を見つけて妖精を探さないといけないの!
悪魔大  なにぃ? お前、妖精を探しているのか?
黒豹   そうだよ。じゃあね。
悪魔大  あれ? 後ろのお前。どこかで会ったな。あ、お前も。
マーゴ  知らない。
ビッキー 見たことない。
悪魔大  いや、会ったよ。俺、俺、俺様、悪魔。
黒豹   悪魔だって! とんでもない奴がいたもんだ!
マーゴ  うーん覚えてないわ。こんな変な人なら一度見たら忘れないと思うんだけど。
ビッキー 私が見た悪魔は半分白くてもっと子どもだったし、あなたじゃないわ。
悪魔大  着替えたんだ。白いペンキのせいで調子が悪かったからな。なんだ? お前達
    も妖精を探しているのか? あいつは困った奴だからな。見つけたら俺様にも教
    えてくれ。何でかわからないが俺様にはあいつの気配がわからなくなったんだ。
    フヒヒヒヒ、じゃあな。
黒豹   (独り言のように)妖精の匂いは消えちゃったし、こいつを捕まえたら湖畔の
     淑女様も妖精を捕まえるより喜んでくれるかもしれないな。
マーゴ  待って、子羊を見なかった? 私たち子羊を探しているの。
悪魔大  何? 子羊? 知らないなぁ。なんだ? 困ってるのか? フヒヒヒヒ。
マーゴ  当たり前でしょ! こんなの放っておいて、もう行きましょ!
ビッキー あれ? ミミズクさんはいないの?
悪魔大  ミミズクならそこにいるぞ。おい、ミミズク!

   ミミズク、子羊をつれて出てくる。

ミミズク なあに?
黒豹   あ! ミミズク! お前、またこんなところで!
ミミズク あ! 厄介な奴に見つかったなぁ。
黒豹   湖畔の淑女様に言いつけてやるぞ!
ミミズク へへへへー、じゃあ、オイラはこれで。
悪魔大  あ、おい。

   ミミズク、飛んで逃げる。子羊、マーゴたちの元に走っていく。

子羊   メェー。
マーゴ  良かった。無事だったのね。嘘をつくなんて、ひどいわ!
悪魔大  嘘はついてない。本当のことを言わなかっただけだ!
子羊   おなかがすいたメェー。
ビッキー 良かったわね。じゃあ、帰りましょ。黒豹さんありがとう。今度は帰り道をお
    願いできる?
黒豹   ちょっと待っててくれるかな。用事が出来た。
マビ子  え? (マーゴ、ビッキー、子羊)
悪魔大  じゃあ、これで。(忍び足で逃げようとする)
黒豹   待て。
悪魔大  待てと言って待つ奴がいるか!
黒豹   いいから待て! 妖精の前にお前を捕まえてやる!

   悪魔大、走り去る。黒豹もそれを追いかけていく。

マーゴ  あ、待って!
ビッキー 私たちを置いて行かないで!
子羊   おなかがすいたメェー。

   マーゴ、ビッキー、子羊が黒豹たちを追い掛けて走り去る。
   暗転。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

訳あり新聞部の部長が"陽"気すぎる

純鈍
児童書・童話
中学1年生の小森詩歩は夜の小学校(プール)で失踪した弟を探していた。弟の友人は彼が怪異に連れ去られたと言っているのだが、両親は信じてくれない。そのため自分で探すことにするのだが、頼れるのは変わった新聞部の部長、甲斐枝 宗だけだった。彼はいつも大きな顔の何かを憑れていて……。訳あり新聞部の残念なイケメン部長が笑えるくらい陽気すぎて怪異が散る。

人魚奇譚CLARISSA

大秦頼太
児童書・童話
人魚奇譚三部作CLARISSA・ISABELLA・SIRENAをまとめました。 皆さんが知っている人魚とは少しだけルールやなんかが違うと思います。 本来は脚本として使いながら仕上げるのですが、現在はそういった団体に属していないので細かい指示や諸注意などは書き込めておりません。 声劇などで使いたい場合は声をかけていただければ基本的にOKします。 ●扉絵は舞台化する場合人魚の両足が使えるように片足がヒレで、もう一方が水や泡を表すというようなイメージ画です。 ※海部守は脚本用PNです。 時期がズレて書いていたので、ちょっと繋がりがおかしいところもあるかもしれません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ナイショの妖精さん

くまの広珠
児童書・童話
★あの頃のトキメキ、ここにあります★ 【アホっ子JS×ヘタレイケメン 小学生の日常とファンタジーが交錯する「胸キュン」ピュアラブストーリー】 「きみの背中には羽がある」 小六の和泉綾(いずみあや)は、幼いころに、見知らぬだれかから言われた言葉を信じている。 「あたしは妖精の子。いつか、こんな生きづらい世界から抜け出して、妖精の世界に帰るんだっ!」 ある日綾は、大っ嫌いなクラスのボス、中条葉児(なかじょうようじ)といっしょに、近所の里山で本物の妖精を目撃して――。 「きのう見たものはわすれろ。オレもわすれる。オレらはきっと、同じ夢でも見たんだ」 「いいよっ! 協力してくれないなら校内放送で『中条葉児は、ベイランドのオバケ屋敷でも怖がるビビリだ!』ってさけんでやる~っ!! 」 「う、うわぁああっ!!  待て、待て、待てぇ~っ !!」 ★ ★ ★ ★ ★ *エブリスタにも投稿しています。 *小学生にも理解できる表現を目指しています。 *砕けた文体を使用しています。肩の力を抜いてご覧ください。暇つぶしにでもなれば。 *この物語はフィクションです。実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...