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第4章 更なる戦い

第370話 ゲーム会場へようこそ10

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 おさげの少女の生首を抱えたメイドさんが向かった部屋の先には、今まで彼女が毒牙にかけた少女たちの首が置かれていたーいずれも、このおさげの少女と同様に、ゲーム開始時に見せしめのために殺害した娘たちであった。
 その表情は、今のおさげの少女のものとほぼ同じー戦慄、悲痛、なぜ自分がこんな目に、という理不尽さに対する疑問ー
「大体、みんな似たような顔になってしまうのね・・・」
 メイドさんは、先に棚の上に並べていた5つの生首を順番に見やりながら、右端の首の隣に、先ほどの少女の首を置いた。等間隔で置かれた首たちは、みな自らの理不尽さを呪うかの如く、そして自らの慟哭を叫ぶかの如くー目と口を開いたまま、もはや生命の輝きの宿っていない瞳で正面を見据えていた。
 運営側に施された特殊防腐剤(ナノマシン主体のもの)のおかげで、少女たちの首は、死亡した直後、つまりは首が胴体から切り離された直後の状態のまま、その形を保ち続けている。さすがに、血の気は完全に失せているが、それを除けばまるで作り物のように美しい面差しをしたものばかりであった。
 いや、既に魂が宿っていないという意味では、作り物とたいして変わらないのかもしれないのだがー
「また、一つコレクションが増えたわね」
 今しがた、棚の上に置いたおさげの少女の首ーその髪を愛おし気に撫でながら、薄く笑うメイドさん。
 彼女は、実際の戦いにおいてはキルスコアが2ケタ台に達している、いわばベテラン組だ。この部屋に置いていない首は、街の至る所に晒してある。運営側の課したルールにより、そうせざるを得なかったのだ。
 しかし、彼女はキルスコア2桁達成ということで、運営側からかなりの裁量権を与えられた。このアトリエこそ、彼女が望んだもの。そして、このゲーム会場こそが、彼女が思いのままに生きることができる「楽園」なのだ。
 彼女にとって、自らが獲得した首の洗濯は日常の出来事でもあった。いくら防腐処置が施されているとはいえ、洗わなければやはり汚れてしまう。できることなら、この娘たちは綺麗なまま、自分の傍に置いておきたい。
 ゲーム開始時に、わざと人数調整をするのも、こういったコレクションを増やすためでもある。
「さて・・・そろそろゲームに参加する方々の説明に向かわないとね」
 ゲーム自体はオーソドックスなものだ。2つのチームに分けて競わせる。ただし、擬体は纏わせないので、その時のゲーム内容次第によっては、苦痛を伴うバトルロイヤルとなる。
「そうね・・・今回のゲームは」
 メイドさんは口元に浮かんだ笑みを隠すかの如く、右手で覆った。自分でもにやけているのがよくわかった。
「アレで行こうかしら」
 メイドさんは楽し気に独り言ちていた。
 これから、いったいどんなゲームが始まろうというのかー
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