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第4章 更なる戦い

第345話 小川明子25

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 小川明子の名前は普通に出てくるというのに、他の人たちの名前が出てこない。顔ははっきりとわかるのに、いったいどういうことなんだろう?
 明晰夢だからだろうか・・・?
 そこまで考えているうちに、不意に目が覚めた。まだ、視界はぼんやりとしているが、自分が照明の消えた部屋の中でベッドに仰向けに横たわり、天井を見上げていることだけはわかっている。
「・・・?」
 夢から覚めたというのに、やはり小川明子以外の人物の名前が出てこない。思い出せなくなっているのだ。
「なにこれ・・・?」
 ひょっとしたら、アエローたち看守トリオにも同じことが起きているのだろうか?
 明日の朝、それとなく3人に確認してみようかなー
 おかしな夢のせいですっかりと目が覚めてしまった穂乃果は、一旦バス、トイレ共同の洗面室へと向かった。中途半端な時間に目が覚めたこともあり、体調はあまり芳しくない。かといって、当分の間は寝付けそうになかった。
 備え付けのコップに水をくみ、一気に飲み干す。知らぬうちに口やのどが渇いていたようだった。
 それにしても、明子以外の他の人物の名前が思い出せないのはてっきり夢の中だけのことだとばかり思っていたのに、まさか目が覚めた後でも同じ状態に陥るとは思わなかった。
「まさか・・・戦いの影響もあるのかしら・・・?」
 穂乃果にとって、最初の戦いーあの戦いの最中、彼女は途中で意識を失い、気が付けば相手の首を刎ねていたのだ。自分が人を殺したという事実は、とてもではないがにわかには受け入れがたいものだった。
 今でも、その時のことを思い出そうとするととてつもない嘔吐感に襲われる。いくら、意識がない間での行為とはいえ、相手の首を掻っ切ったのだ。罪悪感に押しつぶされそうになるのは当然だった。
 今にして思えば、アエローたち3人がいてくれたからこそ、何とか精神的に落ち着いていられたのかもしれない。穂乃果1人だけだったら、今頃どうなっていたことか・・・?
「あんな戦いは、もう二度とごめんだわ・・・また同じことになったら本当に私、おかしくなってしまいそう」
 実際、心が壊れてしまいそうな気がする。あの惨劇を繰り返すくらいなら、いっそ誰かの手にかかって死んだ方がましではないかとさえ思えてきた。
「・・・首を斬られるのって、苦痛はやっぱり一瞬なのかしら・・・?」
 この大会に出ている者なら、誰もが一度は考えることだろう。戦いに負けた者は斬首及び晒し首になるからだ。死ぬのは当然怖いが、それ以上にもたらされる苦痛の度合いも気になった。
 こればかりは、実際にその時が訪れるまで分かるはずもない。ただ、確実に言えることは、その先に待つのは避けられない終焉であることー永遠の眠りの世界なのである。
「・・・」
 思わず、自らの首元に右手を添える穂乃果。その白くて細い首筋を刃が横断する様を想像し、背筋が凍り付く思いに憑りつかれる穂乃果だった。
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