上 下
147 / 452
第4章 更なる戦い

第146話 身を清めて

しおりを挟む
「やったー、朝からお風呂だ!!」
「もうお昼ですよ、ヒナちゃん」
「まったく・・・」
 ここは旅館の大浴場ー貸し切りと言ってもいい状態の風呂場に歓声とともに突入するヒナ。子猫を思わせるような小柄な体躯ながら、胸や尻は女性そのもので、彼女が走るたびに、女性の象徴たるそれらが揺れていたりする。その後に苦笑した顔の優香や静が続く。
 静が指摘した通り、今はもう昼と言ってもいい時間帯である。
「静お姉さん、わかってないなあ・・・起きてすぐのお風呂は、朝風呂と同じなんだよ」
「まあ、気持ちの上では確かにそうなんだろうけどな」
 優華も静も、この旅館をアジトにするまでは、「住人のいない住居」の風呂を借りて入っていたものだった。このアルカディア島には、参加者と運営サイドの人間にしか生活していない。さらに言えば、運営サイドは決して参加者の前には姿を現さないので、結局この島にある建物は、ほぼ暗黙の了解として参加者の自由に使っていいことになっていたりする。運営側も、そこら辺のところは黙認しているようだった。
「私、ここに来るまでは学校とかプールのシャワーだけで我慢してたから、こういうきちんとしたお風呂に入れるのはうれしいな」
 声を弾ませつつ、さらには胸も同様に弾ませながら、ヒナは浴槽に入るまでに体を洗い始める。静と優香もヒナに続いて体を洗い始めようとするがー
「すごいわね、ヒナちゃんの体・・・うらやましいわ、私達よりも年下なのに、こんなに立派に育ってて」
「ああふぅ・・・お、お姉さん!?」
 頭をシャンプーで洗っているところ、背後から静に胸を揉み下され、思わず上ずった声を上げてしまうヒナ。昨晩の記憶がまざまざと蘇ってくる。
「おいおい、お静・・・子猫ちゃんが困ってるだろ、エッチもいいけど・・・って、本当はあんまりよくはないけど、とりあえず今は自嘲しろ」
「はーい。うーん、残念だわ・・・こんなに揉み答えがあるおっぱいなのに」
 静が名残惜しそうに、ヒナの乳房から手を離した。
 ーこの女は、少しでも目を離すとこれだからなー
 まあ、いつものことだからと言い聞かせて、優香も体を洗い始める。
 ただ、風呂というのは、やはりいろいろな意味で普段とは違う気持ちを掘り起こさせるものだった。性的な行為ではなくとも、裸の付き合いという点では、優香もそそられるものを感じざるを得なかった。
 ーおっと、ここで私が理性を手放すわけにはいかないなー
 まさか、昨日の続きを風呂場でやるわけにもいくまい。昨日の続きは、せめて夜まで待ってからだろう。
 ー私も、やること前提で考えてしまってるなー
 女性同士での性行為を強制されるこのアルカディア島で暮らしているからだろうかーというよりも、元から美少女レズばかり集めてデスゲームをやらせているのだろうがー優香もだんだん、静みたく無類のエッチ好きになってしまうのではないかと不安になることがしばしばあった。
 杞憂に終わってくれればいいがー
「私ももっと早くに、お姉さんたちに会っていればなあ・・・そうすれば、こんないい旅館やお風呂にも入れたのに」
「出会う時期にもよるだろ、子猫ちゃん・・・もしもっと早く出会っていれば、君と私らは最初から敵同士だったかもしれない」
 ー正確に言えば、今も敵と言えば敵同士なんだけどなー
 やがては勝負しなければならないという残酷な未来のことを振り払うかのように、静は軽く頭を振ってヒナに向き直った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯の贈り物~聖女候補なのに魔法学科を落第して婚約破棄された伯爵令嬢ですが恋した乙女は最強の大聖女になったので愛をつらぬき幸せになります

古東薄葉
恋愛
「そもそも私は、お嬢様への贈り物ですので」 そう言って微笑む美形の青年シオンは婚約破棄を宣言された直後の伯爵令嬢アンジェの前に突然、執事の姿でしかもドラゴンに乗って現れた。  シオンは、アンジェの死んだ祖父の親友で王家と並ぶ財と軍を持つと言われる辺境伯に派遣され、アンジェを聖女にすることが宿題だと告げる。  一年前、王立学園高等部の入学前検査で巨大な魔力が見つかり、アンジェは本人の望まぬ魔法学科に聖女候補として入学させられるが、魔法は使えず落ちこぼれ、優等生にはいじめられ、進級にも失敗、さらに家業の商会は倒産寸前で融資目当てで婚約させられたりと絶望の日々が続いていた。  シオンは文武両道で超有能。その手腕で商会を立て直し、禁術の暗黒魔法を使って封印されていたアンジェの魔力を解放し、ザマアされた元婚約者の送った暴漢を瞬殺する。そんなシオンにアンジェの想いはつのっていった。  アンジェの魔法は光、風、炎、それぞれの魔法の頂点に立ち聖女の称号を持つ三人、通称王立聖女隊の注目を受けるほどになり、ついに聖女に任命され、シオンも従騎士としてアンジェに仕え続けることになった。  聖女になったアンジェは懸命にいろいろな業務をこなしていき、シオンとの絆も強くなっていき、告白することはできないが信頼で結ばれた主従の穏やかな関係を心地よく感じていく。  アンジェは魔獣との戦いにより、大聖女としての力を覚醒させるが強大な力を持ったことで思いもよらぬ戦いへと巻き込まれていく。  シオンの正体を知り、互いの愛を確認して幸せな未来を確信するアンジェだったが、シオンに「その時」が近づきつつあり、二人の運命は変転する。  アンジェはシオンの背負う二千年におよぶ一族の宿命を知り、宿命を断ち切るため大聖女の力を使ってシオンと共に巨大な悪の敵に戦いを挑んでいく。  内気な少女の純愛と成長を描く全三章のヒロイン・ファンタジーです。

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。

Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。 休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。 てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。 互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。 仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。 しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった─── ※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』 の、主人公達の前世の物語となります。 こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。 ❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。

【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥ 財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。 ”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。 財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。 財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!! 青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!! 関連物語 『お嬢様は“いけないコト”がしたい』 『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中 『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位 『好き好き大好きの嘘』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位 『約束したでしょ?忘れちゃった?』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位 ※表紙イラスト Bu-cha作

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

浮浪者たちの聖女

翠乃古鹿
大衆娯楽
不良学生たちの玩具となり、背徳的な世界に溺れた女教師の末路

人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。 ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。 秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。 戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。 ●八架 深都(はちか みと) 20歳、大学2年生 好奇心旺盛な性格 ●秋木 晴士(あきぎ せいじ) 26歳、小説家 重度の不眠症らしいが……? ※性的描写が含まれます 完結いたしました!

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

処理中です...