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第3章 虚ろなる人形
第123話 贈り物
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「一条さん、天内さんも、私の作った贈り物、気に入っていただけたかしら?」
一条紗耶香、天内葉月が、校舎の中庭で氷上と相坂の「連結首」を見つけた頃ー
勅使河原マヤは既に校舎を離れていた。
「あれが、私が新たに作り上げた工芸品・・・」
そして、いずれはあの二人も氷上たちと同じ運命をたどるということを暗示した、私からの贈り物ー
生前は、果たすことのできなかった「オリジナリティの追求」が、こうして実現したという達成感は何物にも代えがたいものだった。
このアルカディア島は、確かに「楽園」だ。特に、強者にとっては何をしても許される、最高の園だった。
「知恵の実を食べたアダムとイヴは追放されたけど・・・」
ここでは、敗北かペナルティ以外ではその居場所を奪われることはない。唯一、勝ち続けることだけが求められるのだ。
ーまさに、こういう場所こそを求めていたのよー
今の勅使河原にとって、天内葉月はともかく、一条紗耶香は倒すのは難しいだろう。もちろん、いずれ戦わなければならない時は必ず訪れる。その時までに腕を磨いておかなくてはならない。
できれば、二人同時にその首を奪い、氷上や相坂のように繋げてやりたいー
校舎からはもうだいぶ離れてはいるが、万が一ということもある。勅使河原は、学校から離れるため、この街の繁華街の方へと足を向けた。
「しばらくの間、潜伏できる場所を探さないといけないわね・・・」
まだ今は、戦うべき時ではなかった。そのため、二人から身を隠すための場所は探さなければならない。
繁華街への道の途中、ちらほらと犠牲者の遺体を見かけることがあった。その遺体には、当然ながら首がなかった。
このアルカディア島には、一般人は住んでいない。つまりは、この大会の参加者しか、この場所にはいないということになる。
哀れな参加者の成れの果てを冷然とした表情で眺める勅使河原。自分が勝利し続ける限り、何度でも見ることになる光景だ。もちろん、自分が敗北すれば、首を奪われてこれらの遺体の仲間入りということになる。
自分の命に対して、執着心の薄い勅使河原だったが、一度、氷上と相坂の「連結首」を作ってみてからというもの、それがここにいるための目標のようになってしまった。
美しい少女たちの首を使って、自らの作品を仕上げるーそのためには、勝ち続けるしかないのだ。
「上等じゃない」
勅使河原は、もう流血の収まっている首なし死体に近づいた。
血に汚れてはいるものの、制服は見覚えがあった。生前通っていた学校の近くにある高校のものだった。
「意外と、身近な参加者も多いのね・・・」
もしかしたら、大会運営側がねらい目の少女たちを直接殺害してこの島に運んできているのではないかーそう疑ったこともある。それゆえに、参加者たちの記憶が曖昧化されているのではないかー
もちろん、それを確認する術はない。そして、勅使河原にとっても、真実はもうどうでもいいことだった。
ー芸術を追求するため、自らはただ勝ち続けるのみー
勅使河原は、遺体の首の切断面をしばらくの間眺めた後、再び目的地へ向けて足を動かし始めた。
一条紗耶香、天内葉月が、校舎の中庭で氷上と相坂の「連結首」を見つけた頃ー
勅使河原マヤは既に校舎を離れていた。
「あれが、私が新たに作り上げた工芸品・・・」
そして、いずれはあの二人も氷上たちと同じ運命をたどるということを暗示した、私からの贈り物ー
生前は、果たすことのできなかった「オリジナリティの追求」が、こうして実現したという達成感は何物にも代えがたいものだった。
このアルカディア島は、確かに「楽園」だ。特に、強者にとっては何をしても許される、最高の園だった。
「知恵の実を食べたアダムとイヴは追放されたけど・・・」
ここでは、敗北かペナルティ以外ではその居場所を奪われることはない。唯一、勝ち続けることだけが求められるのだ。
ーまさに、こういう場所こそを求めていたのよー
今の勅使河原にとって、天内葉月はともかく、一条紗耶香は倒すのは難しいだろう。もちろん、いずれ戦わなければならない時は必ず訪れる。その時までに腕を磨いておかなくてはならない。
できれば、二人同時にその首を奪い、氷上や相坂のように繋げてやりたいー
校舎からはもうだいぶ離れてはいるが、万が一ということもある。勅使河原は、学校から離れるため、この街の繁華街の方へと足を向けた。
「しばらくの間、潜伏できる場所を探さないといけないわね・・・」
まだ今は、戦うべき時ではなかった。そのため、二人から身を隠すための場所は探さなければならない。
繁華街への道の途中、ちらほらと犠牲者の遺体を見かけることがあった。その遺体には、当然ながら首がなかった。
このアルカディア島には、一般人は住んでいない。つまりは、この大会の参加者しか、この場所にはいないということになる。
哀れな参加者の成れの果てを冷然とした表情で眺める勅使河原。自分が勝利し続ける限り、何度でも見ることになる光景だ。もちろん、自分が敗北すれば、首を奪われてこれらの遺体の仲間入りということになる。
自分の命に対して、執着心の薄い勅使河原だったが、一度、氷上と相坂の「連結首」を作ってみてからというもの、それがここにいるための目標のようになってしまった。
美しい少女たちの首を使って、自らの作品を仕上げるーそのためには、勝ち続けるしかないのだ。
「上等じゃない」
勅使河原は、もう流血の収まっている首なし死体に近づいた。
血に汚れてはいるものの、制服は見覚えがあった。生前通っていた学校の近くにある高校のものだった。
「意外と、身近な参加者も多いのね・・・」
もしかしたら、大会運営側がねらい目の少女たちを直接殺害してこの島に運んできているのではないかーそう疑ったこともある。それゆえに、参加者たちの記憶が曖昧化されているのではないかー
もちろん、それを確認する術はない。そして、勅使河原にとっても、真実はもうどうでもいいことだった。
ー芸術を追求するため、自らはただ勝ち続けるのみー
勅使河原は、遺体の首の切断面をしばらくの間眺めた後、再び目的地へ向けて足を動かし始めた。
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