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第3章 虚ろなる人形
第121話 新たなる個性を求めて
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「あなたたちに相応しい扱いを思いついたわ」
氷上、相坂の首を前に、口の端を釣り上げる勅使河原。興奮のせいもあるのか、勅使河原の頬は紅潮していた。
「あなたたちは・・・これから先、未来永劫、繋がり続けることができるわ・・・私に感謝なさい」
勅使河原は、特に氷上の方に言い聞かせるように独り言ちた。もちろん、もはや氷上は何の反応も示すことはない。
「ただ、つながりはあったとしても、その先に交わるということは二度とないわ・・・でも、その姿こそが、あなたたちに最も相応しいはず。そして・・・」
ー私自身も、あなたたちを使って新しいものを表現することができるー
「さあ、見せてあげるわ・・・私だけの個性を」
勅使河原は、まずは氷上の首に手を伸ばした。
勅使河原は、氷上と相坂の首の切断面を縫合し始めたのだ。
「実際のところ、体の縫合なんて初めてやるわ・・・でも、私なら大丈夫なはず」
氷上と相坂の首の切断面は重なり合わされ、そこをつなぎ目として手術用の糸の代わりに、自らの鋼線の中でも最も細いものを使って縫い留めていく。
大会ルールでは、敗北者の表情に影響を及ぼしかねない改変はご法度扱いとなっている。もし、意図的にそのような行為に及んだ場合には、何らかのペナルティが課せられるのは確実だった。
「顔は一切手を付けないわ・・・」
ー私はただ、あなたたちをつなげてあげたいだけー
ーそして、それが私のオリジナリティを証明することにつながるはずー
しばらくして、2つの首の縫合自体は無事完了した。
勅使河原の目の前にあるのは、なんとも形容しがたい物体。元は全く別の存在でありながら、今や連結され、二度と離れることのないものー
氷上と相坂の連結首ー二人は繋がってはいるものの、その視線が交わることはもう二度とない。なんとも異様な・・・そして美しくも面妖なものがここに作られたのだった。
「後は、この縫い目の部分を隠す必要があるわね」
さすがに縫い目の部分は悪目立ちする。この傷跡の部分をうまく隠す必要はあった。
「縫い目部分を包帯で覆えば、少しは見栄えがいいかしら」
勅使河原は、二人の首の連結部に慎重に包帯を巻いていく。あとは、包帯だけでなく二人の髪の毛も利用して、縫い目部分を完全に外から見られないようにした。
「・・・完成よ。氷上さん、相坂さん」
もはや、何の反応も示すことがない二人に言葉をかける勅使河原ーいや、二人にというより、自分自身に言い聞かせるがごとくといったところか。
二人の顔が元からの造形が優れているがゆえに、逆に言い知れぬ不気味さを見る者に与えるものに仕上がっていた。二つの首の重ね合わせ状態。繋がってはいるが、決してその視線が交わることはないー
「この島に来ることができて、本当によかった」
生前には決して叶わなかった、私だけの芸術の追求の結果ー
「あなたたちの今の姿を・・・一条さんや天内さんにも見せてあげたいわね」
あの二人はまだあの校舎にいるはずー。
「待っててね、二人とも」
勅使河原の瞳が胡乱気に輝いた。
氷上、相坂の首を前に、口の端を釣り上げる勅使河原。興奮のせいもあるのか、勅使河原の頬は紅潮していた。
「あなたたちは・・・これから先、未来永劫、繋がり続けることができるわ・・・私に感謝なさい」
勅使河原は、特に氷上の方に言い聞かせるように独り言ちた。もちろん、もはや氷上は何の反応も示すことはない。
「ただ、つながりはあったとしても、その先に交わるということは二度とないわ・・・でも、その姿こそが、あなたたちに最も相応しいはず。そして・・・」
ー私自身も、あなたたちを使って新しいものを表現することができるー
「さあ、見せてあげるわ・・・私だけの個性を」
勅使河原は、まずは氷上の首に手を伸ばした。
勅使河原は、氷上と相坂の首の切断面を縫合し始めたのだ。
「実際のところ、体の縫合なんて初めてやるわ・・・でも、私なら大丈夫なはず」
氷上と相坂の首の切断面は重なり合わされ、そこをつなぎ目として手術用の糸の代わりに、自らの鋼線の中でも最も細いものを使って縫い留めていく。
大会ルールでは、敗北者の表情に影響を及ぼしかねない改変はご法度扱いとなっている。もし、意図的にそのような行為に及んだ場合には、何らかのペナルティが課せられるのは確実だった。
「顔は一切手を付けないわ・・・」
ー私はただ、あなたたちをつなげてあげたいだけー
ーそして、それが私のオリジナリティを証明することにつながるはずー
しばらくして、2つの首の縫合自体は無事完了した。
勅使河原の目の前にあるのは、なんとも形容しがたい物体。元は全く別の存在でありながら、今や連結され、二度と離れることのないものー
氷上と相坂の連結首ー二人は繋がってはいるものの、その視線が交わることはもう二度とない。なんとも異様な・・・そして美しくも面妖なものがここに作られたのだった。
「後は、この縫い目の部分を隠す必要があるわね」
さすがに縫い目の部分は悪目立ちする。この傷跡の部分をうまく隠す必要はあった。
「縫い目部分を包帯で覆えば、少しは見栄えがいいかしら」
勅使河原は、二人の首の連結部に慎重に包帯を巻いていく。あとは、包帯だけでなく二人の髪の毛も利用して、縫い目部分を完全に外から見られないようにした。
「・・・完成よ。氷上さん、相坂さん」
もはや、何の反応も示すことがない二人に言葉をかける勅使河原ーいや、二人にというより、自分自身に言い聞かせるがごとくといったところか。
二人の顔が元からの造形が優れているがゆえに、逆に言い知れぬ不気味さを見る者に与えるものに仕上がっていた。二つの首の重ね合わせ状態。繋がってはいるが、決してその視線が交わることはないー
「この島に来ることができて、本当によかった」
生前には決して叶わなかった、私だけの芸術の追求の結果ー
「あなたたちの今の姿を・・・一条さんや天内さんにも見せてあげたいわね」
あの二人はまだあの校舎にいるはずー。
「待っててね、二人とも」
勅使河原の瞳が胡乱気に輝いた。
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