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日向荘にて(第32話)

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 早苗による憤ドラゴラへの尋問が再開される運びとなったー。

「つまり、憤ドラゴラ君とは全く面識がない相手なんだね?」

 話を聞く限り、憤ドラゴラに力を与えた人物とは全く面識がなく、木に吊るされていた憤ドラゴラを「哀れに思ったから」力を授けたらしい・・・が。

「そうでやんすね・・・何やら黒いコートみたいなのを羽織ったまだ若い男でやんした・・・かなりのイケメンでやんしたよ」

 黒いコートを羽織った若いイケメンが該当人物らしいが、その程度の特徴だけなら該当しそうな人物などいくらでも存在しそうである・・・。

「もうちょっと、詳しい特徴とかないのかなぁ~、憤ドラゴラ君。それだけじゃ漠然としすぎていて相手を探せないよ」

 早苗が文句を言うのも無理からぬことであった。

「うーん、特徴と言われましても、それ以外には何にもない御方なんですよ・・・ただ、そう言えば手にはステッキみたいなものを持っていたような・・・」

「ほほう・・・ステッキだね?なんだか、魔術を使う者らしさが出てきたね」

 実際に、非力なニャンドラゴラをほんの少し目を離した隙にここまで強化した人物である。高い魔力の素質はあるとみていいだろう。魔術の使い手には両手杖やステッキを持ち歩く者も多いと聞く。

「それで、あっしに力が欲しくないかって尋ねてきたので、欲しいと答えて気が付いたらあっしは信じられない力を手に入れていたというわけでやんす」

「なるほどね~、庭石を破壊するくらいだから、確かに信じられない力だよね~君にしてみたら」

 何やら含みのある口調で、早苗が独り言ちたー。
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