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日向荘にて(第19話)

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 日向荘の中庭に置いてあった庭石を無残にも打ち砕いた憤ドラゴラー。

 対する早苗も、その圧倒的なパワーを目の当たりにして、さすがに緊張を隠せない様子だった。

「うーん、あの体当たりをまともに受けちゃうと、私もぺしゃんこだねぇ~」

 口調こそ間延びしているが、彼女なりには真剣であるー周囲にはそうは見えないかもしれないが。

「ふっふっふ、ぺしゃんこどころか、粉々でっせ、扇女!!」

 憤ドラゴラが纏う気が、一段と濃くなっていくー。

「それにしても・・・さっきまでおとなしく捕まっていた君が、どうやってそんな力を手に入れたのかな~?」

 それは杏里も気にはなっていた。訓練中のニャンドラゴラには全く力がないように思われたからだ。

 いや、思われたーというよりも、実際に力はなかったはずなのだ。そうでなければ、おとなしく木に吊るされるなんてこともなかっただろう。

「それを知りたければ、見事あっしを倒してみせることでやんすね、扇女!!」

 早苗の疑問には直接答えず、再び突進してくる憤ドラゴラ。相変わらず、その軌道は見切りやすいが、ただ、確かに力は半端なく、まともに食らえばひとたまりもない。

 さらには、これ以上日向荘にある物を壊されるわけにもいかない。

 早苗は、ふうう、とため息をついてから、

「仕方ないねぇ~ここからは本気で行くよ!!」

 言うが早いか、口元を隠すように構えていた鉄扇を突然跳ね上げるかのように、頭上に振り上げる早苗。それに合わせる形で、憤ドラゴラに対し竜巻が襲い掛かった。

「むむ、これは・・・」

「見ての通り、風属性の魔法だよぉ。君は、この竜巻を乗り越えられるかな?」

 早苗が風属性の魔法で竜巻を作り出し、突進してくる憤ドラゴラに対して一撃を浴びせたのだ。

 ーしかし。

「ふふふ・・・この程度で、あっしの突進を止められるとでも思っていやがるんですかね・・・全く、これだから、小娘は・・・」

 竜巻の影響もあって、多少移動速度は落ちたものの、早苗に近づいてきているのは変わらない。このままだと、竜巻を乗り越えてそのまま早苗に突撃してしまうー。

 その時、早苗がふっと笑みを浮かべた。彼女特有の、余裕を見せる時の笑みであった。

「甘いよ、憤ドラゴラ君・・・単に力だけじゃ、この私を倒すことはできないよぉ~」

「な、何ですと!!生意気な小娘でやんすね!!ならば、自分が追いつめられているということを自覚させてやるでやんす」

 憤ドラゴラの気迫は凄まじい。どうやら、彼は本気で早苗を倒しにかかってきているようだ。

 だが、それでも、早苗は余裕の笑みを絶やすことはなかったー。

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