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日向荘にて(第13話)

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 この訓練は、ニャンドラゴラにとっては天国と地獄が変わりばんこで訪れるものとなったー。

「ああ~気持ちいいです、ヒーラーの姐さん」

 満身創痍の状態で木に吊るされていたニャンドラゴラだったが、杏里の治癒術を受けるたびに、その傷が少しずつ癒えていく。尤も、杏里がまだ遠距離へ術の影響を及ぼす力が弱いので、その効果は劇的に現れるものではなかったものの、それでも傷の回復具合やニャンドラゴラの反応から鑑みると、杏里の腕は徐々にだが上がっているように思われた。

「おお、杏里ちゃん・・・だいぶ慣れて来たみたいだね~」

「そうですね・・・早苗さんと・・・あとはニャンドラゴラさんのおかげです」

 杏里自身も実感できているようだった。

 だが・・・。

「・・・でも、連続でやると、さすがに疲れてきますね」

 朝から治癒術を使い続けてきた杏里ーさすがに疲労も目立ち始めてきた。

「そうだねぇ、杏里ちゃん。よかったら一旦休憩にしようか?」

 杏里の様子を見て、そろそろ休憩させるべきだと早苗は判断した。治癒能力は、魔力だけではなく、術者の神経も著しくすり減らすと聞いている。せっかくここまで来たのに、杏里に倒れられるわけにもいくまい。

「・・・そうですね、私も一旦お休みしたいと思っていました」

「よし、それじゃあちょっと休憩にしよう!!」

「・・・あの、姐さん、あっしはどうなるんでしょうか?」

 杏里の休憩はいいが、木に吊るされた状態のニャンドラゴラはどうなるのか。恐る恐る自らの処遇について早苗に尋ねるニャンドラゴラであったが・・・。

「うーん、君は、そのままの恰好で休憩しててね」

 てへっと笑みを浮かべてニャンドラゴラに告げる早苗。ニャンドラゴラは「そんな~」と情けない声を上げるが、早苗に抵抗する気はないようだった。

「あの・・・早苗さん。いいんでしょうか、あのままにしておいて」

 心優しい杏里が、少し困ったような笑みを浮かべながら早苗に尋ねる。

「大丈夫だよ、杏里ちゃん。それに逃亡防止も必要だからね~」

「はぁ・・・」

 先ほどと全く同じ表情であっさりと告げる早苗に空恐ろしいものを感じながら、杏里は木に吊るされたままのニャンドラゴラを哀れそうな目で見つめる他なかったー。
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