上 下
420 / 464

咲那と鏡香(第8話)

しおりを挟む
「とにかく、アンタの手を借りるつもりはねえ」

 エクセリオンを突きつけながら、咲那は戦女神に啖呵を切った。

「それに・・・モリガンは、あれはあれでしっかりした奴だ。そう簡単にはやられねえよ」

「そうですね・・・ああ見えて、モリガンちゃんはしっかりしていますから・・・私も彼女のことを信じます」

 ここまで拒絶されたのでは、さすがのヴァルキリーも引き下がらざるを得なかった。

「交渉決裂・・・ですか。そちらにとって悪い話ではないと思ったのですが」

「あくまでも、今の時点では、だろ?」

 咲那が皮肉気に笑みを浮かべながら、

「あとでどういうふうに借りを返せと言われるか、わかったもんじゃねえしな」

「まあ、貸し借りはともかく、これは私たち自身の問題ですので、どうか、ここはおとなしくお引き取り願えないでしょうか」

 仕方がない・・・といった雰囲気で肩を竦めながら、ヴァルキリーは自身の翼を広げた。

「そうですね・・・今日のところは引き下がりましょうか」

 銀色に近い白色の翼をはためかせ、空に飛び立ったヴァルキリーは、今一度咲那と鏡香を見下ろしながら、

「ですが、あなた方は、いずれ我々の力にすがることになるでしょう・・・その時を楽しみに待っておりますよ」

 そう言い残すと、一筋の光とともに、はるかな天の高見へと飛び去って行ったー。

ーー

「二度と来るな!!」

 咲那の叫びが、果たしてヴァルキリーに届いたのかどうかー。

「あんな奴の手なんか借りなくても、あたしらだけで何とかなるさ」

「はい」

 惑星Σ-11にある浮遊大陸までの定期便が出るまでは、まだ時間がある。無事目的地にたどり着くまでにはさらに時間を要するが・・・。

「モリガンなら大丈夫だ・・・あたしは信じてるぜ」

 モリガンからの連絡が途絶えてから、既に2日目となるが、咲那も鏡香もモリガンのことはよくわかっている。そう簡単には誰かの手に落ちるようなやつではない。

「あいつは・・・絶対に大丈夫だ、何があろうとも、な・・・」

 自身に再確認するかのように咲那が独り言ちる。

「ええ、そうですね。私もモリガンちゃんなら無事乗り越えてくれていると信じていますから」

 鏡香も自分に言い聞かせるかのように呟いた。

 遥か彼方の空の上ー果たして、モリガンは今どこで何をしているのかー。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない

紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
 15歳ですべての者に授けられる【スキル】、それはこの世界で生活する為に必要なものであった。  世界は魔物が多く闊歩しており、それによって多くの命が奪われていたのだ。  ある者は強力な剣技を。またある者は有用な生産スキルを得て、生活のためにそれらを使いこなしていたのだった。  エメル村で生まれた少年『セン』もまた、15歳になり、スキルを授かった。  冒険者を夢見つつも、まだ村を出るには早いかと、センは村の周囲で採取依頼をこなしていた。

処理中です...