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黒羽一人旅(第11話)
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「どうやら、行ったようですね・・・」
メリルとアメリアー本当はモリガンと桐ケ谷楓ーが水車小屋の方に向かったのを確認し、白木真央こと黒羽は軽く息をついた。
「私の変装魔法もそうそう簡単には見破れないということが、今回わかりました」
あのモリガンですら、自分の変装魔法を見破れなかったのだ。少しだけだが、自分の魔法力に自信が出てきた黒羽であった。
「しかし・・・改めて間近で見てみると、二人の変装もなかなかのものでしたが・・・」
特に、モリガンの方は「聖女のような魔女」と名高いエレオノーラの若いころ(今でも十分若いのだが)にそっくりだった。一度、彼女の写真を見たことがあるだけに、まるで生き写しかと思ったくらいだった。
「まあ、あのモリガンという少女も、あと10年くらいたてば、あのくらいにはなるかもしれませんが」
・・・いささか、スタイル的な面で彼女の願望が現れているかのような感じを受けたが・・・その点に関してはこれ以上考えるのは控えようかと思う。
「さて」
モリガン達が去ったのを確認し、黒羽は、モリガンが飛ばしている複数の使い魔のうち、先ほど自身の魔力を送り込んだ個体を呼び寄せた。
「当然ながら、彼女はまだ、この子がこちらの制御下にあることにも気が付いていないようです」
モリガンは、自身の掌の上に使い魔を乗せると、
「モリガン達は、逃れるためにこの村に来たようですが、ただ黙って隠れているというわけでもなさそうです・・・この子を二重スパイとして、彼女たちの様子を少し探らせてみましょうか」
使い魔に、自身の魔力が宿っているのを再確認し、空へと飛ばす。すぐに、他の使い魔たちと行動を共にし、はた目にはどれが二重スパイなのか、黒羽以外にはわからなくなってしまった。
「これで、よし・・・と」
モリガン達の様子は逐一報告するように指示は出してある。何か変わった動きがあれば、すぐに黒羽の下に報告が届くはずだ。
「・・・それにしても、白木真央・・・ですか」
自分でつけた偽名だが、無意識的とはいえ、名字に「白」という色を入れる辺り、普段の自分とは違う存在であるということを強調したいという願望の現われかと思ってしまった。
「私も・・・そのうち「コスプレ」とやらに手を出してしまうかもしれませんね」
この場にカルミナ達がいたら、間違いなくからかわれるであろう呟きに、ほかならぬ黒羽自身が皮肉気に苦笑した。カルミナ達とはしばらくの間別行動となっているが、許可はもらっている。まあ当分、この「なりきりプレイヤー」を楽しむとしよう。
そんなことに思いを巡らせていると、綿花畑を渡る天空世界の強い風が、黒羽の黒い髪を激しく揺さぶったー。
メリルとアメリアー本当はモリガンと桐ケ谷楓ーが水車小屋の方に向かったのを確認し、白木真央こと黒羽は軽く息をついた。
「私の変装魔法もそうそう簡単には見破れないということが、今回わかりました」
あのモリガンですら、自分の変装魔法を見破れなかったのだ。少しだけだが、自分の魔法力に自信が出てきた黒羽であった。
「しかし・・・改めて間近で見てみると、二人の変装もなかなかのものでしたが・・・」
特に、モリガンの方は「聖女のような魔女」と名高いエレオノーラの若いころ(今でも十分若いのだが)にそっくりだった。一度、彼女の写真を見たことがあるだけに、まるで生き写しかと思ったくらいだった。
「まあ、あのモリガンという少女も、あと10年くらいたてば、あのくらいにはなるかもしれませんが」
・・・いささか、スタイル的な面で彼女の願望が現れているかのような感じを受けたが・・・その点に関してはこれ以上考えるのは控えようかと思う。
「さて」
モリガン達が去ったのを確認し、黒羽は、モリガンが飛ばしている複数の使い魔のうち、先ほど自身の魔力を送り込んだ個体を呼び寄せた。
「当然ながら、彼女はまだ、この子がこちらの制御下にあることにも気が付いていないようです」
モリガンは、自身の掌の上に使い魔を乗せると、
「モリガン達は、逃れるためにこの村に来たようですが、ただ黙って隠れているというわけでもなさそうです・・・この子を二重スパイとして、彼女たちの様子を少し探らせてみましょうか」
使い魔に、自身の魔力が宿っているのを再確認し、空へと飛ばす。すぐに、他の使い魔たちと行動を共にし、はた目にはどれが二重スパイなのか、黒羽以外にはわからなくなってしまった。
「これで、よし・・・と」
モリガン達の様子は逐一報告するように指示は出してある。何か変わった動きがあれば、すぐに黒羽の下に報告が届くはずだ。
「・・・それにしても、白木真央・・・ですか」
自分でつけた偽名だが、無意識的とはいえ、名字に「白」という色を入れる辺り、普段の自分とは違う存在であるということを強調したいという願望の現われかと思ってしまった。
「私も・・・そのうち「コスプレ」とやらに手を出してしまうかもしれませんね」
この場にカルミナ達がいたら、間違いなくからかわれるであろう呟きに、ほかならぬ黒羽自身が皮肉気に苦笑した。カルミナ達とはしばらくの間別行動となっているが、許可はもらっている。まあ当分、この「なりきりプレイヤー」を楽しむとしよう。
そんなことに思いを巡らせていると、綿花畑を渡る天空世界の強い風が、黒羽の黒い髪を激しく揺さぶったー。
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