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黒羽一人旅(第8話)
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モリガン達がしばらくこの村に滞在するということで、自分もまた留まることにした黒羽ー。
「さすがに、こちらの正体には気が付いていないようですね」
黒羽は、メリルやアメリアの正体を既に知っている。そして、モリガンは、黒羽とアサギとの戦いを見ている。だが、お互いがそれを知ることは今のところなさそうである。
黒羽としては、モリガンの魔女としての実力を、モリガン達はガレスやアサギから身を隠すためにお互い変装魔法を施しているのである。
「位相操作や転送魔法陣を使いこなせるくらいですから、相当の力があるはず・・・間近で見ていれば、何か興味深いことに出くわすかもしれませんね」
朝食を終えたモリガン達は、そのまま外へと出て行ったようだ。表向きは「綿花畑の調査」らしいが、おそらく実際の目的は異なるはずだ。
黒羽は、慎重に黒い羽根を取り出すと、それを掌の上に乗せて念じ始めた。
「こちらの正体には気が付いていないようですが、慎重に探るに越したことはありません・・・この子たちの力も借りて、様子を見ることにしましょう」
ーー
一方のモリガン達は、使い魔を通してこの辺りで不穏な動きがないか、確認していた。
「・・・おい、モリガン。さっきからじっとそこで突っ立ってるけど、どうかしたのか?」
さっきから身じろぎすらせずに、意識を集中させているモリガンに、楓が声をかける。
「・・・この辺り一帯に何体か使い魔を飛ばして、わしらのことに気が付いたやつらがいるかどうか、確認していたところじゃよ」
ふうっと、軽く一息をついて、モリガンは楓の方を振り返る。
「今のところ、ガレスもアサギも、わしらの動きには気が付いておらんようじゃな・・・じゃからといって、油断はできんが・・・」
「こんな小さくて何もない村にまで、さすがに関心は向けないだろ」
楓が苦笑する。
「そうとも言い切れんぞ・・・わしらの魔力の波動の痕跡を追って、いつまたやつらが襲ってくるかもわからんしのう・・・」
そう言うと、モリガンは人差し指を立てて、
「というわけで、今は同じチームとの連絡もできんようにしてある」
「何だって!?」
楓が素っ頓狂な声を上げた。
「おいおい、《ユグドラシル》の連中とも連絡を取れないってのか」
モリガンは、肩を竦めながら、
「仕方がないじゃろ、こちらは変装魔法だけでも魔力の痕跡を隠すのに精いっぱいなんじゃ・・・使い魔を飛ばすくらいなら何とかごまかせるが、それ以上は、なるべく使用しない方向で行くつもりじゃよ」
そこまで言って、モリガンはため息をつく。
「まあ、連絡せんことで、後で鏡香辺りに説教されそうじゃがのう」
「さすがに、こちらの正体には気が付いていないようですね」
黒羽は、メリルやアメリアの正体を既に知っている。そして、モリガンは、黒羽とアサギとの戦いを見ている。だが、お互いがそれを知ることは今のところなさそうである。
黒羽としては、モリガンの魔女としての実力を、モリガン達はガレスやアサギから身を隠すためにお互い変装魔法を施しているのである。
「位相操作や転送魔法陣を使いこなせるくらいですから、相当の力があるはず・・・間近で見ていれば、何か興味深いことに出くわすかもしれませんね」
朝食を終えたモリガン達は、そのまま外へと出て行ったようだ。表向きは「綿花畑の調査」らしいが、おそらく実際の目的は異なるはずだ。
黒羽は、慎重に黒い羽根を取り出すと、それを掌の上に乗せて念じ始めた。
「こちらの正体には気が付いていないようですが、慎重に探るに越したことはありません・・・この子たちの力も借りて、様子を見ることにしましょう」
ーー
一方のモリガン達は、使い魔を通してこの辺りで不穏な動きがないか、確認していた。
「・・・おい、モリガン。さっきからじっとそこで突っ立ってるけど、どうかしたのか?」
さっきから身じろぎすらせずに、意識を集中させているモリガンに、楓が声をかける。
「・・・この辺り一帯に何体か使い魔を飛ばして、わしらのことに気が付いたやつらがいるかどうか、確認していたところじゃよ」
ふうっと、軽く一息をついて、モリガンは楓の方を振り返る。
「今のところ、ガレスもアサギも、わしらの動きには気が付いておらんようじゃな・・・じゃからといって、油断はできんが・・・」
「こんな小さくて何もない村にまで、さすがに関心は向けないだろ」
楓が苦笑する。
「そうとも言い切れんぞ・・・わしらの魔力の波動の痕跡を追って、いつまたやつらが襲ってくるかもわからんしのう・・・」
そう言うと、モリガンは人差し指を立てて、
「というわけで、今は同じチームとの連絡もできんようにしてある」
「何だって!?」
楓が素っ頓狂な声を上げた。
「おいおい、《ユグドラシル》の連中とも連絡を取れないってのか」
モリガンは、肩を竦めながら、
「仕方がないじゃろ、こちらは変装魔法だけでも魔力の痕跡を隠すのに精いっぱいなんじゃ・・・使い魔を飛ばすくらいなら何とかごまかせるが、それ以上は、なるべく使用しない方向で行くつもりじゃよ」
そこまで言って、モリガンはため息をつく。
「まあ、連絡せんことで、後で鏡香辺りに説教されそうじゃがのう」
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