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黒羽一人旅(第2話)

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 夜の森ー。

 静寂と闇の中に包まれる森の中を、これまた漆黒のローブを羽織った娘が歩いている。

「方角は、こちらで間違ってはいないはずですが・・・」

 間違いなく、この辺りで、高等魔法が使われた形跡がある。さらには、この場所でアサギが何者かと戦った可能性もー。

「おや」

 途中で道が二又に分かれている。そこに、夜の闇の中ではあるが、看板らしきものは窺えた。さすがにこの闇では書かれている文字までは判別できないが、黒羽はこれが目的地のことを指しているのだとすぐに思い至った。

「魔力の波動の痕跡からすると、こちらの道ですね・・・」

 もうすでに戦いは終わった後のようなので、危険はないだろうが、それでも黒羽は慎重に歩を進めていく。

 10分くらい歩いただろうか。開けた場所に出ることができた。

「これは・・・」

 黒羽の目の前には、何らかの家屋の残骸らしきものが転がっていた。

「こんな森の中に家があるなんて・・・」

 家屋自体はあまり大きなものではなかったようだ。

「・・・」

 黒羽は、全壊した家屋の様子を見て回る。壊れた調度品や散乱した食器、さらには無残に破けた書物などが見て取れた。

「少なくとも、最近までこの家にはだれか住んでいたようですね・・・食器なども新しいようですし。それにしても・・・」

 黒羽は、奇跡的にほとんど無傷で残っていた本を一冊手に取る。本の題名は「前文明時代における技術発展史」だった。

「この家の主は、何かの研究者だったのでしょうか・・・?」

 他にも本の残骸は散らばっているが、かろうじて読み取れるものから、そのほとんどが専門書であることが見て取れた。

「こういう本は、カルミナや男性陣に読ませたら、速攻で眠りに落ちることでしょうね・・・」

 苦笑しながら、黒羽はチーム《ラピュタ》の「勉強嫌いな面々」のことを想いだした。ブラーナや武人なら読むかもしれないが、カルミナや卓、翔には無理だろう。

「それにしても・・・あまり大きくはない家とは言え、建物一つがこれほど見事に木っ端みじんになるなんて・・・」

 よほど激しい戦闘が行われたに違いない。そして、この場から、残り香のように、アサギの闘気の痕跡を感じとる黒羽だった。

「・・・やはり、彼女もここにいたのですね。そして、戦闘に巻き込まれた・・・その結果がこれと言うわけですか」

 楓のアトリエの崩壊ぶりを改めて見やりながら、黒羽は自身の掌の上に黒い羽根を1枚取り出す。

「・・・実際に、どのような形で行われたのか、少し確認してみましょうか・・・」

 黒羽の掌の上の黒い羽根が、静かに振動し始めたー。
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