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続・モリガン一人旅(第23話)
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モリガンに指摘され、バツが悪そうな顔つきで頭を掻くアサギー。
どうやら、彼女にも多少なりとも罪悪感はあるようだった。
「どのみち、この家はあのガレスとかいうやつの手で破壊されておったわ・・・」
「しかし、実際にぶっ壊したのはお前さんじゃがな」
「・・・」
言葉もなく頭を掻き続けるアサギを見て、こやつも憎めないところがあるんじゃのう、と、モリガンは苦笑いした。
「ええい、今更どうにもならんだろう!!」
「・・・まあ、あの家の主は楓じゃからな・・・謝るならあやつにすることじゃ」
モリガンが顎で示した先には、木陰からこちらをじっと見つめている楓とホルルの姿があった。当たり前のことだが、自分のアトリエを破壊されて楓は怒り心頭である。鋭い眼差しでアサギを睨みつけた。
さすがのアサギも、家主を目の前にしては、自身の非を認めざるを得なかった。
「申し訳ない、家主殿」
アサギは、楓に対して素直に頭を下げ、
「とっさのこととは言え、あなたの家を壊してしまったことは申し開きようもない!今はここで頭を下げることくらいしかできぬが、何とか賠償に努めるつもりだ」
好戦的なやつかと思えば、変に生真面目で律儀なところのある娘ーそれが、このアサギという東方の女剣士の姿だったー。
ーー
「まあ、あやつにどこまで賠償できるかは不明じゃが、最悪わしの復元魔法があるから、ここは抑えよ、楓」
モリガンは、楓の傍により、耳打ちして楓に自制を促した。
「あまりあやつとは関わりたくない・・・それはお主もじゃろうが」
「・・・納得はしてないけどな・・・ただ、確かにお前の言うとおりだ、モリガン。あんなのとお近づきになったら、命がいくつあっても足りないしな」
極端な話、賠償はもう期待していないので、さっさと他の場所に行ってくれと言うのが、楓の正直な気持ちだった。
「ところで、モリガン。これからどうするんだ?あの女剣士もそうだが、あのガレスとかいうやつにも私らの姿は見られちまってるし、このままおとなしく引き下がってくれるようなやつには見えなかったぞ」
そうじゃな・・・と顎に手を当てて少し思案顔になるモリガン。アサギのこともそうだが、それよりも危険なのは、あのガレスという男ーテロリスト集団である悠久王国の一員で、既に仲間にここの場所とモリガンのことを伝えていた節がある。やつが、来栖とかいうやつに報告するとか、確かそんなことを言っていた気がする。
「とにかく、まずはここを離れるかのう・・・あと、姿を隠すには人ごみの中ともいうし、わしの魔法で少し変装でもして、町中に隠れるというのはどうじゃ?」
「人ごみの中・・・ね。私は、どちらかというとあまり人の多い場所には行きたくないんだけどな・・・」
楓が、いかにも大儀そうにつぶやいた。
そう言えば、楓は人嫌いだったと、今更ながらに思い出したモリガンであったが、
「ここは我慢せい、楓。次は、わしだけでお主を守り切れるとは限らんしのう」
それに・・・とモリガンは、少し離れた場所でアトリエの残骸を丹念に調べているアサギを見て、
「あやつからも逃れる必要があるしのう」
この女剣士は、カイトを狙っている。先ほどはやむなく共闘したが、モリガンがカイトを転送魔法陣で逃したことに気が付けば、いずれはやりあうことになるかもしれない。それは、可能なら避けたい事態だったー。
どうやら、彼女にも多少なりとも罪悪感はあるようだった。
「どのみち、この家はあのガレスとかいうやつの手で破壊されておったわ・・・」
「しかし、実際にぶっ壊したのはお前さんじゃがな」
「・・・」
言葉もなく頭を掻き続けるアサギを見て、こやつも憎めないところがあるんじゃのう、と、モリガンは苦笑いした。
「ええい、今更どうにもならんだろう!!」
「・・・まあ、あの家の主は楓じゃからな・・・謝るならあやつにすることじゃ」
モリガンが顎で示した先には、木陰からこちらをじっと見つめている楓とホルルの姿があった。当たり前のことだが、自分のアトリエを破壊されて楓は怒り心頭である。鋭い眼差しでアサギを睨みつけた。
さすがのアサギも、家主を目の前にしては、自身の非を認めざるを得なかった。
「申し訳ない、家主殿」
アサギは、楓に対して素直に頭を下げ、
「とっさのこととは言え、あなたの家を壊してしまったことは申し開きようもない!今はここで頭を下げることくらいしかできぬが、何とか賠償に努めるつもりだ」
好戦的なやつかと思えば、変に生真面目で律儀なところのある娘ーそれが、このアサギという東方の女剣士の姿だったー。
ーー
「まあ、あやつにどこまで賠償できるかは不明じゃが、最悪わしの復元魔法があるから、ここは抑えよ、楓」
モリガンは、楓の傍により、耳打ちして楓に自制を促した。
「あまりあやつとは関わりたくない・・・それはお主もじゃろうが」
「・・・納得はしてないけどな・・・ただ、確かにお前の言うとおりだ、モリガン。あんなのとお近づきになったら、命がいくつあっても足りないしな」
極端な話、賠償はもう期待していないので、さっさと他の場所に行ってくれと言うのが、楓の正直な気持ちだった。
「ところで、モリガン。これからどうするんだ?あの女剣士もそうだが、あのガレスとかいうやつにも私らの姿は見られちまってるし、このままおとなしく引き下がってくれるようなやつには見えなかったぞ」
そうじゃな・・・と顎に手を当てて少し思案顔になるモリガン。アサギのこともそうだが、それよりも危険なのは、あのガレスという男ーテロリスト集団である悠久王国の一員で、既に仲間にここの場所とモリガンのことを伝えていた節がある。やつが、来栖とかいうやつに報告するとか、確かそんなことを言っていた気がする。
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「ここは我慢せい、楓。次は、わしだけでお主を守り切れるとは限らんしのう」
それに・・・とモリガンは、少し離れた場所でアトリエの残骸を丹念に調べているアサギを見て、
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この女剣士は、カイトを狙っている。先ほどはやむなく共闘したが、モリガンがカイトを転送魔法陣で逃したことに気が付けば、いずれはやりあうことになるかもしれない。それは、可能なら避けたい事態だったー。
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