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続・モリガン一人旅(第22話)

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「ふん、逃げたか・・・」

 仕留めきれなかったことへの悔しさを滲ませつつ、アサギは独り言ち、刀を鞘へと納めた。その後、傍らに立つモリガンの方へと目を向ける。

「・・・貴様にも聞きたいことがある。おとなしくしてもらおうか」

 モリガンを鋭い眼差しで睨むが、少なくとも抜刀はしていないため、ここでモリガンとやり合うつもりはないようだ。

「ほほう、わしに聞きたいこととな?」

「貴様・・・ふざけているのか!!」

 モリガンの物言いが、なんとも白々しく思えたので、思わず激昂するアサギだった。尤も、モリガン自身は全く気にした様子もなく、口角を釣り上げて挑戦的な笑みを浮かべたまま、アサギを見返している。

「あのガレスとかいう男が言っていた位相操作という術は、貴様が施したものなのか?」

「・・・そうじゃと言ったら何とする?お主」

 アサギは、魔術の類にはさほど詳しくはなかった。したがって、記憶の中にあるガレスの言葉から、「位相操作」について推理してみる。

「・・・あの男が「マジックキャンセラー」とか言うものを使ってから、突然お前たちが私の目の前に現れた。位相という言葉からある程度予測はできるが・・・位相操作というのは、空間に作用する魔法なのだろう?」

「ほほう・・・」

 こやつ、魔法に関して特に知識があるというわけでもないようじゃが、状況と相手の言葉から魔法の性質を推測できる辺り、ただの戦闘狂でもなく、なかなかに頭の回るやつじゃのう・・・。

 モリガンが品定めをするようにアサギを見つめてくるので、アサギはさらに苛立ちを覚えた。刀の柄に手をかけ、

「真面目に答えよ、忌まわしき魔女の小娘よ・・・そうでなければ、今すぐ貴様を斬り捨ててもいいのだぞ」

「忌まわしき魔女の小娘か・・・やれやれ、失礼極まりないやつじゃ・・・」

 軽く頭を振りながら、モリガンは仕方なしにアサギの問いかけに答えることにする。

 まあ、この間合いじゃと、魔法よりこやつの刀の方が速く抜かれるじゃろうからのう・・・そうなれば、わしの首は一瞬でこやつの足元に転がることとなる。

 今は、これ以上こやつを怒らせないようにして、どうにかして離脱を図るか・・・。

「お主の言う通り、ゆえあってわしはあの家に位相操作の魔法をかけておった・・・あの家には珍しいものがいろいろとあったからのう・・・しかし」

 モリガンは、アサギに対して避難がましい顔を向ける。

「誰かさんのおかげで、全部吹っ飛んでしまったわけじゃがな」

「・・・う」

 他人の家を吹き飛ばしたことを指摘され、さすがのアサギも一瞬言葉に詰まったー。

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