上 下
368 / 464

我ら悠久王国なり(第9話)

しおりを挟む
 大広間を出て、長い廊下を歩いているユリウスとイザベラー。

「久しぶりに外で暴れられるってのはいいねえ・・・なんかこう、何十年ぶりって感覚だよ・・・」

「言っておきますけど、今回の任務の目的は、魔女及び蟲生みの捜索と惑星Σ-11に入り込んだ各勢力の把握ですよ・・・戦いは、やむを得ない場合のみの話です」

「・・・ったく、まじめだなあ、イザベラは」

「あなたがいつまでたっても子供なだけですよ、ユリウス」

 他の面々は各自に割り当てられた部屋へと赴き、もう出立の準備をしている。当然、戦いも起こることを見越しての準備だった。

「まあでも、この調子では戦いは避けられそうにないのは確かですね」

 イザベラのルビーのような瞳が妖し気に輝く。ユリウスを窘めつつも、やはり自分も戦いが待ち遠しくて仕方がないのだろう。久々の「お祭り」に、胸を躍らせている様子が窺がえた。

「その魔女ってやつ、かなり強いんだろ?来栖さんが言ってたし・・・できれば、とっ捕まえる前にちょっとだけ味見をしてみたいなあ」

「魔女ばかりではないようですけどね・・・何せ、東方の者達も入り込んでいるようですし」

「生身でも飛空鎧戦でも、どちらでも僕はOKだよ・・・今から楽しみで仕方がないんだ」

 ユリウスもイザベラも、自前の飛空鎧は悠久王国レギューム・エタールヌムから提供されている。もちろん、オーダーメイドのものだ。二人の特性を生かした専用機となっている。

「外の世界での最強クラスの飛空鎧って、確か東方の紫の牙ズーツァオリャだっけ?あいつとは一度サシでやり合ってみたいなあ」

「それは・・・私も同感ですね。どのみち、あの大陸に潜んでいるというのなら、いずれは遭遇することになりそうですが」

 二人とも、悠久王国の中でもトップクラスの飛空鎧乗りである。自分たちの腕を試すことができそうな相手の話題になると話が弾むのも当然だ。

「よし、決めた!」

 ユリウスがイザベラの前に躍り出てVサインをする。この仕草だけ見れば、12歳相当の少年らしく見える。

「まず魔女をボコる」

「いや、だからそれは・・・」

「そのついでに紫のやつも探し出して、戦いを挑む!」

「・・・本当、あなたの頭の中はケンカのことばかりですね、ユリウス」

 イザベラが、呆れ顔で皮肉を言うのに対して、ユリウスは悠然として、

「戦いがなければ面白くないよ・・・久しぶりに外に出るんだしさ、出るからにはうんと楽しまないと」

 そして、同意を求めるかの如く(実際求めているのだが)、イザベラの顔を覗き込んだ。

「そうでしょ、イザベラ」

 それに対し、静かな微笑みを返すイザベラーそして、彼女もまた、ユリウスと同じ側の人間だったー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【短編】婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ふふん♪ これでやっとイチゴのタルトと、新作の二種類の葡萄のトライフル、濃厚プリンが食べられるわ♪) 「もうお前の顔を見るのもウンザリだ、今日限りで貴様とは婚約破棄する!」 (え?) とあるパーティー会場での起こった婚約破棄。政略結婚だったのでアニータはサクッと婚約破棄を受け入れようとするが──。 「不吉な黒い髪に、眼鏡と田舎くさい貴様は、視界に入るだけで不快だったのだ。貴様が『王国に繁栄を齎すから』と父上からの命令がなければ、婚約者になどするものか。俺は学院でサンドラ・ロヴェット嬢と出会って本物の恋が何か知った! 」 (この艶やかかつサラサラな黒髪、そしてこの眼鏡のフレームや形、軽さなど改良に改良を重ねた私の大事な眼鏡になんて不遜な態度! 私自身はどこにでもいるような平凡な顔だけれど、この髪と眼鏡を馬鹿にする奴は許さん!)  婚約破棄後に爆弾投下。 「我が辺境伯──いえトリス商会から提供しているのは、ランドルフ様の大好物である、卵かけご飯の材料となっているコカトリスの鶏生卵と米、醤油ですわ」 「は?」 これは鶏のいない異世界転生した少女が、あの手この手を使って再現した「卵かけご飯」のお話?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...