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咲那・全裸の逃避行(第8話)

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 鏡香との会話も終え、そろそろ仮眠を取ろうとする咲那ー。

「さすがに、火を絶やすわけにはいかねえからな・・・すぐに起きられるようにしておかねえと」

 咲那は、修行時代も割と野宿する機会が多かったので、少し仮眠をとったとしても、何かあればすぐに目が覚めるように鍛えられている。

 よもや、ここまで人が入り込んでくるということも無いだろうが、先ほどのヴァルキリーのこともあるし、さらにはほぼ全裸の状況の中、火を絶やしてしまうのは危険だ。

「まったく、さんざんな一日だったぜ・・・まあ、あとは明日凌げば何とかなるが・・・」

 鏡香から言われた通り、特に食べるものには注意を払わないといけない。

「・・・明日一日は、原始生活満喫ってところだな・・・」

 川魚であれば毒はないだろうから、焼いて食べれば何とかなるだろう。火は焚火と同じくエクセリオンの力で起こせばよい。

 問題は水だが・・・何か入れられそうなものを探すことになりそうだ・・・。

「・・・とはいえ、ここらで水を入れるものなんてそう簡単には手に入らないだろうしな・・・」

 最悪、明日一日は喉が渇くのを我慢することになるかもしれない。

「あるいは、何か果物みたいなのでもあればな・・・少しは水分を補給できそうだが・・・」

 ここら辺の森林地帯で、果たしてそういう果実が手に入るかどうか・・・これも、明日一日の探索で確かめる必要がありそうだ。

「日がある日中のうちに、集められるものは集めておかねえとな・・・」

 大体明日やるべきことが決まったので、そのまま仮眠をとることにしたー。

ーー

 朝ー。

 1~2時間おきに火の様子を確認しながら仮眠していたので、とてもではないが、疲れはほとんどとれていない状態である。

 夜が明けて、まだそんなに時間はたっておらず、当然ながら、火も消し裸の状態では、まだまだ肌寒い時間帯だった。

「さらには、虫のおまけつきときたもんんだ」

 夜は夜で、これまた大変であった。火の灯りに誘われる形で、小さな虫がたくさん飛んできたのだ。何か所か体を刺されたのか、はっきり言って身体の至る所がかゆくてたまらない・・・。

「そりゃ、こんな森の中じゃあ当たり前に虫が寄ってくるよな・・・」

 山や森の中に入る時に、虫よけスプレーが必須なのが、身に染みてよくわかる結果となった。

「・・・害蟲よりも、虫の方が手ごわいじゃねえか・・・」

 自分はサバイバル能力がある方だと自負していた咲那だったが、さすがにほぼ全裸の状況では、打つ手は限られており、改めて自分の不甲斐なさを痛感することとなったー。

 
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