298 / 464
カイトと杏里、大樹へ(第7話)
しおりを挟む
浮遊大陸に興味を持ち始めたミケさんー。
「我輩、実は百数十ニェン生きておりますニャー。しかし、未だにこニョ大樹から出たことがニャいんですニャー」
「まあ」
さも意外だと言わんばかりに、杏里が驚く。どちらかと言えば、大樹から出たことがないということよりもミケさんが自分たちよりもはるかに長く生きているということの方が驚きだった。
「へえ、人間よりも長く生きるんだね、君たちは」
カイトも、驚きを隠せない様子でミケさんに問いかけた。
「我輩、益蟲ですからニャー。寿命が人間とはことニャりますニャー」
具体的な寿命そのものについては、実はミケさん自体も把握していなかったりする。
「我輩ニョ苦労多き人生について、いつかおはニャししたいですニャー」
ミケさんの糸目がキラっと光った・・・ような気がした。6本のお髭が得意げに上を向いている。
しかし、そこへ・・・。
「誰が苦労多き人生だって・・・?」
「あ、この人たちが、モリガンちゃんが言ってたお客さんだね、晶君」
ミケさんが部屋に来たときに、そのまま戸を閉めるのを忘れていたため、今までの話の内容は廊下まで筒抜けであり、そのため、この日向荘の他の住人達も聞かれていたのだった。
「やあ、君たちがカイト君と杏里さんだね」
和服姿の少年少女が、部屋の前に立っていた。少年の方は、中性的な面立ちをしており、少女と言われても通用しそうな美少年、少女の方は肩まで切りそろえられた黒髪と大きめの瞳が印象的で、何となくだが、和人形を思わせる雰囲気がある。あと数年もすれば、人目を惹くような容姿になるのは間違いないだろう。
「初めまして、オレはこの日向荘で暮らしている吾妻晶です。こっちは清野早苗です」
「やっほー、初めまして。カイト君、杏里さん」
少女ー清野早苗が手を振り、笑顔を向けてきた。それに対し、カイトや杏里も笑顔を返す。
「初めまして・・・水無杏里です」
「カイトと言います」
カイトと杏里が立ち上がり、二人を部屋の中に招き入れた。
「本当に、いきなり皆さんのところに押しかけてしまって申し訳ないです」
「いえいえ、オレたちも日向荘にお客さんが来てくれてうれしいですよ」
「そう言えば、最近はちっともお客さん来ないもんね、晶君」
「まあ、元は旅館とは言え、もう営業していないしな・・・」
晶と早苗はさっそく久しぶりの客との邂逅を楽しんだ。
ーー
「それにしても、ミケさんよ」
「ニャ?」
「さっき言ってた苦労多き人生について・・・ぜひともオレも窺いたいんだがな」
いささか半眼になりながら、ミケさんに尋ねる晶。そして、それに対し汗だくになって押し黙るミケさん。
「オ・レ・は・・・お前さんが朝っぱらから酒ばかり飲んで、昼寝して夜もまた酒飲んでまた寝るといったローテーションの生活しか見たことがないんだがな」
ずんっと、顔を迫らせる晶に対して、さらに全身から汗を流して後ずさるミケさんであったー。
「我輩、実は百数十ニェン生きておりますニャー。しかし、未だにこニョ大樹から出たことがニャいんですニャー」
「まあ」
さも意外だと言わんばかりに、杏里が驚く。どちらかと言えば、大樹から出たことがないということよりもミケさんが自分たちよりもはるかに長く生きているということの方が驚きだった。
「へえ、人間よりも長く生きるんだね、君たちは」
カイトも、驚きを隠せない様子でミケさんに問いかけた。
「我輩、益蟲ですからニャー。寿命が人間とはことニャりますニャー」
具体的な寿命そのものについては、実はミケさん自体も把握していなかったりする。
「我輩ニョ苦労多き人生について、いつかおはニャししたいですニャー」
ミケさんの糸目がキラっと光った・・・ような気がした。6本のお髭が得意げに上を向いている。
しかし、そこへ・・・。
「誰が苦労多き人生だって・・・?」
「あ、この人たちが、モリガンちゃんが言ってたお客さんだね、晶君」
ミケさんが部屋に来たときに、そのまま戸を閉めるのを忘れていたため、今までの話の内容は廊下まで筒抜けであり、そのため、この日向荘の他の住人達も聞かれていたのだった。
「やあ、君たちがカイト君と杏里さんだね」
和服姿の少年少女が、部屋の前に立っていた。少年の方は、中性的な面立ちをしており、少女と言われても通用しそうな美少年、少女の方は肩まで切りそろえられた黒髪と大きめの瞳が印象的で、何となくだが、和人形を思わせる雰囲気がある。あと数年もすれば、人目を惹くような容姿になるのは間違いないだろう。
「初めまして、オレはこの日向荘で暮らしている吾妻晶です。こっちは清野早苗です」
「やっほー、初めまして。カイト君、杏里さん」
少女ー清野早苗が手を振り、笑顔を向けてきた。それに対し、カイトや杏里も笑顔を返す。
「初めまして・・・水無杏里です」
「カイトと言います」
カイトと杏里が立ち上がり、二人を部屋の中に招き入れた。
「本当に、いきなり皆さんのところに押しかけてしまって申し訳ないです」
「いえいえ、オレたちも日向荘にお客さんが来てくれてうれしいですよ」
「そう言えば、最近はちっともお客さん来ないもんね、晶君」
「まあ、元は旅館とは言え、もう営業していないしな・・・」
晶と早苗はさっそく久しぶりの客との邂逅を楽しんだ。
ーー
「それにしても、ミケさんよ」
「ニャ?」
「さっき言ってた苦労多き人生について・・・ぜひともオレも窺いたいんだがな」
いささか半眼になりながら、ミケさんに尋ねる晶。そして、それに対し汗だくになって押し黙るミケさん。
「オ・レ・は・・・お前さんが朝っぱらから酒ばかり飲んで、昼寝して夜もまた酒飲んでまた寝るといったローテーションの生活しか見たことがないんだがな」
ずんっと、顔を迫らせる晶に対して、さらに全身から汗を流して後ずさるミケさんであったー。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる