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カイトと杏里、大樹へ(第3話)
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「こんにちは」
話し込んでいたカイトたちの背後から声をかけてきたのは、薄紫色の髪をした着物姿の女性だった。美しい女性だ。カイトたちより4~5歳くらい年上で、どことなく落ち着いたお姉さんという印象を受けた。
「もしかして、あなた方が、うちのモリガンちゃんから連絡があった方たちかしら・・・?」
静かに、優し気な微笑みを浮かべながら、その女性は二人に問うてきた。
「あ・・・はい。そうです。モリガンさんのご紹介で、こちらへ」
カイトが、少し慌てながら返事をする。杏里もそれに続いた。
「申し遅れました。私は水無杏里と言います。こちらはカイトです。モリガンさんに助けていただき、こちらに来るようにと言われてここまで来ました」
どうやら、この女性が、モリガンの言っていた和泉鏡香なのだろう。そして、その予想通り、
「初めまして・・・私は和泉鏡香です。モリガンちゃんから話を伺っております。どうぞ、中へお入りください」
にっこりと、人を安心させるような穏やかな笑みを浮かべて、和泉鏡香は二人を日向荘へと招き入れた。
ーー
「ここは、元々は旅館だったのですが、今は私たちの共同住宅として使っています」
鏡香は、二人を応接間まで案内した。
元は旅館だったというだけに、当たり前だが広い建物だ。とても数人の住人だけですべての部屋を使い切っているよう感じではない。
杏里もカイトも、前文明時代の和風建築物の名残を残すこの「日向荘」を物珍し気に見まわしながら、鏡香の後に続き、応接間に入る。
「長旅でお疲れだったでしょう。今、飲み物をお持ちしますからね」
二人を座らせ、そのまま部屋を出て行こうとする鏡香だったが、そこへモリガンの使い魔である執事君グレートが現れた。
「あら、執事さん」
「和泉鏡香様、私がお二人にお飲み物をお持ちします」
「それでは・・・お願いできるかしら」
「お任せを」
恭しく頭を下げ、モリガンの使い魔である執事君グレートが部屋を出て行く。初めて見る使い魔に驚かされる杏里とカイトだったが、しかし冷静に考えてみれば、杏里の友人である楓も魔法フクロウを執事として(半ば強引にだが)扱っていた。そう考えれば、魔女であるモリガンが己の使い魔を執事にしていたとしても何ら不思議もないだろう。
「お二人とも、改めて・・・長旅お疲れ様です。何もないところですが、どうかごゆっくり」
「いえ、そんな・・・何ら関係のない僕たちにここまでよくしてくれるなんて・・・こちらの方が申し訳ないくらいですよ」
カイトがお礼を述べる。確かに、チーム《ユグドラシル》は、今回の一件とは何ら関係がないというのに、モリガンからの連絡だけでこうして滞在を許されるというだけでありがたい話だった。
「ふふ、遠慮はなさらなくてもいいのですよ」
鏡香の屈託のない笑顔に、思わず頬を紅潮させるカイト。今まで、ほぼ男所帯の空のチームで長年生活していただけに、杏里に続き、鏡香という美人に対面して、実は内心かなり落ち着かない状況に陥っていたー。
話し込んでいたカイトたちの背後から声をかけてきたのは、薄紫色の髪をした着物姿の女性だった。美しい女性だ。カイトたちより4~5歳くらい年上で、どことなく落ち着いたお姉さんという印象を受けた。
「もしかして、あなた方が、うちのモリガンちゃんから連絡があった方たちかしら・・・?」
静かに、優し気な微笑みを浮かべながら、その女性は二人に問うてきた。
「あ・・・はい。そうです。モリガンさんのご紹介で、こちらへ」
カイトが、少し慌てながら返事をする。杏里もそれに続いた。
「申し遅れました。私は水無杏里と言います。こちらはカイトです。モリガンさんに助けていただき、こちらに来るようにと言われてここまで来ました」
どうやら、この女性が、モリガンの言っていた和泉鏡香なのだろう。そして、その予想通り、
「初めまして・・・私は和泉鏡香です。モリガンちゃんから話を伺っております。どうぞ、中へお入りください」
にっこりと、人を安心させるような穏やかな笑みを浮かべて、和泉鏡香は二人を日向荘へと招き入れた。
ーー
「ここは、元々は旅館だったのですが、今は私たちの共同住宅として使っています」
鏡香は、二人を応接間まで案内した。
元は旅館だったというだけに、当たり前だが広い建物だ。とても数人の住人だけですべての部屋を使い切っているよう感じではない。
杏里もカイトも、前文明時代の和風建築物の名残を残すこの「日向荘」を物珍し気に見まわしながら、鏡香の後に続き、応接間に入る。
「長旅でお疲れだったでしょう。今、飲み物をお持ちしますからね」
二人を座らせ、そのまま部屋を出て行こうとする鏡香だったが、そこへモリガンの使い魔である執事君グレートが現れた。
「あら、執事さん」
「和泉鏡香様、私がお二人にお飲み物をお持ちします」
「それでは・・・お願いできるかしら」
「お任せを」
恭しく頭を下げ、モリガンの使い魔である執事君グレートが部屋を出て行く。初めて見る使い魔に驚かされる杏里とカイトだったが、しかし冷静に考えてみれば、杏里の友人である楓も魔法フクロウを執事として(半ば強引にだが)扱っていた。そう考えれば、魔女であるモリガンが己の使い魔を執事にしていたとしても何ら不思議もないだろう。
「お二人とも、改めて・・・長旅お疲れ様です。何もないところですが、どうかごゆっくり」
「いえ、そんな・・・何ら関係のない僕たちにここまでよくしてくれるなんて・・・こちらの方が申し訳ないくらいですよ」
カイトがお礼を述べる。確かに、チーム《ユグドラシル》は、今回の一件とは何ら関係がないというのに、モリガンからの連絡だけでこうして滞在を許されるというだけでありがたい話だった。
「ふふ、遠慮はなさらなくてもいいのですよ」
鏡香の屈託のない笑顔に、思わず頬を紅潮させるカイト。今まで、ほぼ男所帯の空のチームで長年生活していただけに、杏里に続き、鏡香という美人に対面して、実は内心かなり落ち着かない状況に陥っていたー。
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