上 下
284 / 464

モリガン一人旅(第27話)

しおりを挟む
「ここに、そろそろ紫の機体がやってくる可能性があるぞな」

 そう言えば、使い魔からの連絡で、紫の機体が方向転換してこの付近の捜索をし始めたらしいことが判明したのだった。

「その・・・ここら辺に不時着した飛空鎧は、杏里の町で修理することになりそうなんだろ?」

 先ほど、モリガンが説明した内容では、杏里と乗り手の少年は、一旦杏里の暮らしている町へと移動し、その後、町で飛空鎧を何とか修理してくれる場所がないか、探ってみるという手はずになっていた。

「おそらく、町まで牽引することになるじゃろうな・・・あんなでかいもの、運ぶだけでも一苦労じゃろう」

「だが、その前に紫のやつに見つかるとまずいな・・・乗り手の少年ー確か、カイトとか言っていたな・・・そいつの身もかなり危ないだろうし」

 紫の機体の乗り手は、まず間違いなく自分が撃ち漏らした飛空鎧の乗り手を狙っている。もし二人が顔を合わせた場合、どういうことになるかは皆目見当がつかないが、いい方向に転ぶということはないだろうと思われた。

「紫のやつがあの飛空鎧を見つけた場合、多分この森は・・・」

「まあ、付近はくまなく捜索しようとするじゃろうな・・・すぐにここも見つかるじゃろう。一旦、わしの魔法で二人を隠すこともできようが・・・」

 いざとなったら、モリガンの転送魔法陣で他の場所へ飛ばすことも可能だ。少なくとも、ほとぼりが冷めるまでは二人を他の場所へ逃がしたほうが賢明かもしれない。

「最悪、大樹まで二人をご招待ーなんてことになりそうじゃのう」

「あたしはここを動かんよ、モリガン」

 髪をぼりぼりとかきながら、楓は言い放つ。楓は、基本的にこのアトリエから出たがらない人物だ。外の世界とはなるべく関わらず、自分だけの世界にこもりがちで、心を開いている相手はこのモリガンと杏里、あとはホルルなど本当に一部の者達だけである。

「お前さんなら心配いらんじゃろ・・・相手の狙いは、あくまでもカイトとかいうパイロットの方じゃ・・・お前さんにとっては何の関係もない相手じゃしな」

 あの東方の女剣士も、邪術師ならともかく、さすがに無関係の相手を巻き込もうとはしないはずだ。

「ゆえに、あやつがこのアトリエを見つけて訪ねてきても、知らぬ存ぜぬで白を切り通せばよい」

「・・・大丈夫かね、本当に」

「・・・邪術師相手なら容赦せんようじゃがな、それ以外では特に危険というわけでもなさそうじゃ」

 あくまでも、使い魔からの立体映像を見る限りにおいては、という条件は付いているが。

「まあ、あの飛空鎧が、東方の女剣士に見つかる前に町工場に運ばれていれば問題はないかもしれん・・・とはいえ、やはりしばらくはカイトと杏里を他の場所に匿うべきじゃろうな」

 モリガンは、そういうと居間を出て行こうとする。

「お、おい!どこに行くつもりだ?」

 その姿を見とがめて声をかける楓だったが、それに対して、モリガンはにぃっと笑みを浮かべて、

「なあに、ちょっくら大樹とここを一時的に接続しに行くだけじゃよ」

 まるでこれから盛大な悪戯でも始めるかのごとく、愉し気に宣言したのだったー。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない

紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
 15歳ですべての者に授けられる【スキル】、それはこの世界で生活する為に必要なものであった。  世界は魔物が多く闊歩しており、それによって多くの命が奪われていたのだ。  ある者は強力な剣技を。またある者は有用な生産スキルを得て、生活のためにそれらを使いこなしていたのだった。  エメル村で生まれた少年『セン』もまた、15歳になり、スキルを授かった。  冒険者を夢見つつも、まだ村を出るには早いかと、センは村の周囲で採取依頼をこなしていた。

処理中です...