280 / 464
モリガン一人旅(第23話)
しおりを挟む
「この二人のことは、あとはしばし使い魔に任せておいてもいいじゃろう」
問題は、紫の機体の方だ。おそらく、未だに不時着したこの機体の捜索を行っているはず。一応、紫の機体の方も引き続き別な使い魔に追跡を継続させておくことにした。
「さて、見学もここまでじゃな・・・そろそろ楓の家に行かんと、あやつのことじゃし、うるさいからのう・・・」
うーんと伸びをしてから、再び飛行魔法を使用するモリガン。ここまで来れば、目的の場所まではもうすぐのことだ。通信などではしょっちゅうやり取りをしている間柄であるが、直に顔を合わせるのは久しぶりのことになる。
「大樹からの土産もあるし・・・あとはホルルのやつの愚痴を聞いてやるのも一興じゃな」
楓にこき使われている魔法フクロウのことを思い出し、思わず悪戯っぽい笑みを浮かべてしまうモリガンであった。
「よし、このまま一気に行くか!」
多少休憩を挟んだので、モリガンの体調は万全である。あとは目的地まで一気に飛ばすだけだ。
ーー
風を切り、ツインテールを激しく靡かせながら、魔女モリガンは楓のアトリエがある森を目指した。
「しっかし、天空世界というのは風が強くていかんのう・・・」
髪の毛が途中目に入りそうになり、思わず愚痴をこぼすモリガン。速度もそれなりに出しているが、やはり浮遊大陸に吹く風自体も結構強いのが影響している。
「・・・とはいえ、思いっきり飛ばせるというのは気持ちのいいもんじゃがな」
大樹と違い、飛行するにあたり障害物はないというのは非常にありがたい。目の前のものを気にせず一気に飛ばせるというのは、まさに気分爽快の一言に尽きるものだった。
「あやつの住んでいる森はもうすぐじゃな・・・おっ!」
目指す森の付近に、先ほど使い魔からの映像で見た、不時着した飛空鎧を発見した。
「あれが・・・」
使い魔からの映像で見ているとはいえ、やはり自分の目で直に見るのとでは感覚が違う。
モリガンは、不時着した飛空鎧の傍に降り立ち、腕組みをしながら、その姿をじっくりと観察してみた。
「・・・こんなもんに人が乗って戦うとか・・・わしには信じられん話じゃのう・・・」
ましてや、この中に乗っていたのがモリガンより2、3歳くらい年上の少年だというのだから、なおのこと驚きである。
「まあ、狭苦しい大樹では活躍の場がないじゃろうし、こんなものが扱えるとしたら、やはり空かー」
あるいは、荒廃して一面砂漠だけの地表くらいか。いずれにしろ、大樹に暮らしている限りにおいては、お目にかかる機会はめったにないだろう。
「・・・わしには到底及ばぬ世界じゃな」
あり得ない話だとは思うが、もし万が一にモリガンが飛空鎧と対峙しなければならなくなった場合、生身でも勝つ自信は・・・ある。さすがに、あの紫の機体は難しいかもしれないが、一般的な飛空鎧なら、彼女の魔法で十分撃退できるだろう。
「もっとも、こんなのとやり合うことなどないじゃろうがな」
頭を振り、苦笑しながら、モリガンは飛空鎧から離れる。寄り道もほどほどにして、そろそろ楓のアトリエへと向かうべきだ。
「そろそろ、行くとするかのう」
飛空鎧の付近の森へと足を踏み入れるモリガンであったー。
問題は、紫の機体の方だ。おそらく、未だに不時着したこの機体の捜索を行っているはず。一応、紫の機体の方も引き続き別な使い魔に追跡を継続させておくことにした。
「さて、見学もここまでじゃな・・・そろそろ楓の家に行かんと、あやつのことじゃし、うるさいからのう・・・」
うーんと伸びをしてから、再び飛行魔法を使用するモリガン。ここまで来れば、目的の場所まではもうすぐのことだ。通信などではしょっちゅうやり取りをしている間柄であるが、直に顔を合わせるのは久しぶりのことになる。
「大樹からの土産もあるし・・・あとはホルルのやつの愚痴を聞いてやるのも一興じゃな」
楓にこき使われている魔法フクロウのことを思い出し、思わず悪戯っぽい笑みを浮かべてしまうモリガンであった。
「よし、このまま一気に行くか!」
多少休憩を挟んだので、モリガンの体調は万全である。あとは目的地まで一気に飛ばすだけだ。
ーー
風を切り、ツインテールを激しく靡かせながら、魔女モリガンは楓のアトリエがある森を目指した。
「しっかし、天空世界というのは風が強くていかんのう・・・」
髪の毛が途中目に入りそうになり、思わず愚痴をこぼすモリガン。速度もそれなりに出しているが、やはり浮遊大陸に吹く風自体も結構強いのが影響している。
「・・・とはいえ、思いっきり飛ばせるというのは気持ちのいいもんじゃがな」
大樹と違い、飛行するにあたり障害物はないというのは非常にありがたい。目の前のものを気にせず一気に飛ばせるというのは、まさに気分爽快の一言に尽きるものだった。
「あやつの住んでいる森はもうすぐじゃな・・・おっ!」
目指す森の付近に、先ほど使い魔からの映像で見た、不時着した飛空鎧を発見した。
「あれが・・・」
使い魔からの映像で見ているとはいえ、やはり自分の目で直に見るのとでは感覚が違う。
モリガンは、不時着した飛空鎧の傍に降り立ち、腕組みをしながら、その姿をじっくりと観察してみた。
「・・・こんなもんに人が乗って戦うとか・・・わしには信じられん話じゃのう・・・」
ましてや、この中に乗っていたのがモリガンより2、3歳くらい年上の少年だというのだから、なおのこと驚きである。
「まあ、狭苦しい大樹では活躍の場がないじゃろうし、こんなものが扱えるとしたら、やはり空かー」
あるいは、荒廃して一面砂漠だけの地表くらいか。いずれにしろ、大樹に暮らしている限りにおいては、お目にかかる機会はめったにないだろう。
「・・・わしには到底及ばぬ世界じゃな」
あり得ない話だとは思うが、もし万が一にモリガンが飛空鎧と対峙しなければならなくなった場合、生身でも勝つ自信は・・・ある。さすがに、あの紫の機体は難しいかもしれないが、一般的な飛空鎧なら、彼女の魔法で十分撃退できるだろう。
「もっとも、こんなのとやり合うことなどないじゃろうがな」
頭を振り、苦笑しながら、モリガンは飛空鎧から離れる。寄り道もほどほどにして、そろそろ楓のアトリエへと向かうべきだ。
「そろそろ、行くとするかのう」
飛空鎧の付近の森へと足を踏み入れるモリガンであったー。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【短編】婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ふふん♪ これでやっとイチゴのタルトと、新作の二種類の葡萄のトライフル、濃厚プリンが食べられるわ♪)
「もうお前の顔を見るのもウンザリだ、今日限りで貴様とは婚約破棄する!」
(え?)
とあるパーティー会場での起こった婚約破棄。政略結婚だったのでアニータはサクッと婚約破棄を受け入れようとするが──。
「不吉な黒い髪に、眼鏡と田舎くさい貴様は、視界に入るだけで不快だったのだ。貴様が『王国に繁栄を齎すから』と父上からの命令がなければ、婚約者になどするものか。俺は学院でサンドラ・ロヴェット嬢と出会って本物の恋が何か知った! 」
(この艶やかかつサラサラな黒髪、そしてこの眼鏡のフレームや形、軽さなど改良に改良を重ねた私の大事な眼鏡になんて不遜な態度! 私自身はどこにでもいるような平凡な顔だけれど、この髪と眼鏡を馬鹿にする奴は許さん!)
婚約破棄後に爆弾投下。
「我が辺境伯──いえトリス商会から提供しているのは、ランドルフ様の大好物である、卵かけご飯の材料となっているコカトリスの鶏生卵と米、醤油ですわ」
「は?」
これは鶏のいない異世界転生した少女が、あの手この手を使って再現した「卵かけご飯」のお話?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる