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モリガン一人旅(第14話)

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「勝負!」

 使い魔から送られてきた立体映像の中で、二人の少女が同時に叫ぶー。

「いよいよ・・・決着か」

 その光景を、固唾を吞んで見守るモリガン。命がけの彼女たちには悪いが、これほど緊迫感のあるシーンもないだけに、一瞬たりとも見逃すまいと食い入るように見つめるモリガンであった。

 東方の女剣士の闘気の弓と、邪術師の漆黒の魔力が、次の瞬間ー。

 激しくぶつかり合った・・・!

「ほほう」

 お互いの力が拮抗している様を見て、モリガンの唇が愉し気に歪む。自身は戦うことは好きではないが、誰かの戦いの「高みの見物」というのは好きだという彼女の性格がよく表れた笑みであった。

「我が母に気づかれたら、きっと怒られるじゃろうが・・・こればかりはやめられんのう」

 尤も、人間というのは昔からそういうところはある生き物だ。古くはコロシアムでの剣闘士同士の戦い、その他、前文明時代のとある島国でも、戦国時代において命がけで兵が戦っている最中、それを遠くから見物する付近の住人達もいたり、また彼らを目当てに商いをする者達もいたくらいである。

 まあ、自分は安全圏で見物していたいというのはいつの時代でも同じということなのだろうが・・・。

「それにしても、こやつら本当に互角じゃのう。これでは、決着はつかんのではないか」

 無理もない。この二人、確かに扱う属性や技の性質は異なるものの、その純粋な力量においては全くと言っていいほど拮抗している。これではもはや好敵手といった方が正しいだろう。

 実際、最後の技を繰り出す前、彼女らは「勝負!」と叫んでいる。お互いを認めたからこそ、最初の「殺し合い」から「勝負」へと切り替えたのではないか。

 何よりも、必死ながらも愉悦に満ちた彼女たちの表情がそのことを裏付けているのではないだろうかー。

「好敵手・・・わしにはそんなもの、到底現れることもないじゃろうな。まあ、好き好んでそんなもの作りたいとも思わんが」

 彼女の戦法は、ただ最大戦力で思い切り「ぶっ飛ばす」の一言に尽きる。もっとも、今のところ、最大戦力を繰り出した相手は、チーム《ユグドラシル》の双子の主の片割れである和泉鏡香くらいだ・・・残念ながら、全く歯が立たなかったのだが。

「・・・うほ!!」

 使い魔から送られてくる映像が激しい光の点滅に満ち、モリガンは一瞬目が眩んでしまった。東方の少女の光の闘気と、邪術師の少女の闇の魔力の衝突が、周囲の大地を吹き飛ばしたのだ。

 おそらく、彼女らが戦っていた丘は、かなり削られたことだろう。それだけでも、この戦いの凄まじさがよく伝わってくる。

「・・・危うく目が潰れるかと思ったわい、全く」

 一瞬ではあるが、腰を抜かしかけたモリガンであったー。
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