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モリガン一人旅(第2話)

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 突然、休暇を願い出るモリガンー。

 ・・・だったが。

「いや、別に休みたいなら休んでいいぞ。オレは全く構わんし」

 ずいぶんとあっさりと休暇の許可が出てしまったモリガンであった。

「んがっ!!」

 あまりにもあっさりとしすぎて拍子抜けのモリガン。何か、納得できないことがあるらしく、晶に喰ってかかる。

「わ、わしがいないとお主らも戦力ダウンじゃろうが!!少しは狼狽えてみせんかっ!!」

「いや、今のところ特に大きな案件もないしな・・・そもそもうちのリーダーは奏多さんと鏡香さんだし」

「・・・」

 ガックシとうなだれるモリガンであった。

「くうぅぅ~わしの力がこうも過小評価されておるとは」

「そもそも、お前さん、休暇って言ったって何するんだよ?いつも好き勝手やってるだろうが」

 晶の言うとおりである。日向荘や、彼女のアトリエといった場所を問わず、自分のやりたいことをやりたい時にやりたいようにやっている自由人の代表が、まさしくこのお騒がせ魔女殿である・・・。

「そして、いつもやりすぎて、そのたびに、鏡香さんにお尻ペンペ・・・」

「うわぁぁ!みなまで言うなっ!!晶」

 顔を真っ赤にして両手を激しく振りながら、晶の言を阻もうとするモリガン。その横で、おっとりとした笑みを浮かべて楽しそうに聞いている早苗と、我関せずといった感じで酒をあおっているミケさんの姿があった。

「モリガンちゃん・・・そのうちお尻がお猿さんみたいに真っ赤になっちゃいそうだねぇ」

「早苗まで!!」

「・・・日頃ニョおこニャいですニャー」

 ミケさんが、酒を飲みながらやれやれと頭を振る・・・が。

「安心しろ、モリガン。お前さんはどこぞの酒飲み糸目ブサニャンコよりははるかに役に立っているから」

 ・・・今度は、ミケさんがガックシと膝をつく番であった・・・。

「ええい、どいつもこいつも、わしのありがたみを忘れおってからに!」

 地団駄を踏むモリガンであるが、元々のロリ系美少女という見た目も相まって、却って微笑ましく見える光景であった。

「とにかく、わしは少しの間、大樹を離れるぞ!浮遊大陸にいる仲間に呼ばれておるでの」

「へえ、お前さん、浮遊大陸に知り合いがいたのか。初耳だな」

 晶は、てっきり、モリガンは自分の縄張りである「秋の領域」の森の中からほとんど出たことがないのかと思っていただけに、まさか空の上に彼女の顔見知りがいるとは思いもよらなかった。

「当り前じゃ!晶よ、わしが「秋の領域」から出たことがないと思っておったじゃろ!?」

 図星であった。

「まあ、というわけで、しばらくの間はわしは留守にするからな・・・一応何かあった時のために、連絡手段としてこやつは残していくぞ」

 モリガンは、右掌を空に向けた。すると、彼女の掌に、一際大きな使い魔が現れた。執事のような燕尾服を纏った小悪魔といったところか。

「その名も、執事君グレート!」

 得意げに言い放つモリガンに対し、

「センスないな・・・お前さん」

「もう少し可愛い名前を付けてあげようよ、モリガンちゃん」

「ふぅやれやれですニャー」

「なあぁぁっ!?」

 自分の命名センスのなさを指摘され、絶句するモリガンであったー。
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